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断片だった私が、ひとつにつながるとき

思い出せない記憶にも、意味はあるのだろうか。

私の記憶は、節目ごとに消えていった。
小学校を卒業すると、小学校の記憶がまるっと遠くにいき、
中学が終われば中学の記憶が薄れていき、
高校を出れば、その3年間のことも、まるで前世のように感じられるようになった。

大学を出て社会人になってからも、あまりの記憶の少なさに、ずっと不思議だった。
なぜ、周りの人はあんなに子どもの頃のことを覚えているんだろう。
私は記憶力が悪いのかな、それとも何かおかしいのかなと思いながらも、うすうす気づいていた。
あれは、思い出せないんじゃなくて、思い出さないようにしてきたんだと。
トラウマのような子供時代だったから、心を守るためだったんだと思う。

29歳のとき、大手企業をやめ紆余曲折あって、インドネシアでヨガの先生になった私は、ほぼ同時に神経言語プログラミング(NLP)と出会った。
私は集中講座に参加して、3週間弱でプラクティショナーコースを修了した。

その直後に、過去の自分とつながったという感覚が生まれた。
それまでの私は、ある意味で人生を切り分けていた。
小学校の自分、中学の自分、高校の自分、それぞれをもう終わったものとして封印して、もう私は違う、あれは私じゃないと感じていた。
まるで前世。あるいは別人。知ってる誰かの人生のように。

でも、NLPを学んだことで、自分のタイムラインが一本につながった感覚があった。
断絶されていた過去が、今の自分と地続きになった。

自分の中の軸が、1本つながったような感覚だった。
それは理屈ではなく、明らかに身体の中で感覚として起きた変化だった。
(マニアックな表現で言えば、ディソシエイトして見ていた過去にアソシエイトできるようになった感じ。)


ここで言う「記憶が戻る」というのは、出来事を一連で思い出すということではなく、もっと感覚的で、瞬間的で、臨場感のあるもの。
私の場合は、ある場面の1カットが突然、写真のように脳内に現れる。
それは、まるで今その場にいるかのような感覚で、私の視点そのままの場面として戻ってくる。
(めっちゃアソシエイト)

周囲に誰がいたか、目の前にあったもの、光の具合、音、空気の動き、
そういった細部まで見える。
ただ思い出すのではなく、その場に“いる”ような感じだ。
そして不思議なことに、その場面の中にいる人たちの感情のようなものが、同時に自分の内側に流れ込んでくるような感覚もある。
私は私であり、同時にその人たちの一部でもあったのだと思う。
記憶の中で再会するのは、過去の私だけではない。
そこにいたすべての存在とのつながりもまた、私の内側に宿っていたのだ。


それまで何となく嫌なものだと思っていた出来事の中に、実は多くの愛が含まれていた。
そして、それが今の私にとっての意味や、関係性を含んだ豊かな記憶としてよみがえってきた。


そもそも、一つの命がこの世界に在るということ。
そのこと自体が、数えきれないものとの関係の中で成立している。
私という存在が、かつてそこにいたというただその事実が、まわりに目に見えない波紋を与えていた。

私がいたということ。
そのことが、誰かの意識を変え、場をつくり、関係を結び、それらすべてが今の私のなかにも織り込まれている。
私は、そういう風に存在していたのだと、ようやく受けとれるようになってきた。

記憶にアクセスできるようになったのは、NLPを学びはじめた頃だったけれど、その後さらに催眠を専門的に学ぶことで、過去とのつながりは少しずつ太くなっていった。
元々ヨガや瞑想では“今ここ”への意識の向け方を学んでいたので、それらはNLPによる記憶との再接続を受け入れる下地として、確実に機能していたと思う。
その上で、NLPと催眠では無意識下の情報の浮上の仕方を知った。
自分の内側にある構造を整えなおすことで、分断されていた記憶や感覚、過去や今、内と外との境界までも薄くなり、繋がっていく。


私の中で、何かが統合されていった。
記憶というよりも、つながりそのものが変わっていった。
私と他者。私とあの場所。私と過去。
これまで切り離されていたそれぞれが、ひとつの流れの中で再び出会っていくような感覚。


私という存在は、つながりの中に在る。

そのことを、ようやく受け取る準備ができたのだと思う。


そして、記憶とつながるようになってから、私は次第に、思い出すたびにその[意味]も変わっていくことに気づきはじめた。

以前はただ苦しかった場面が、少し違った手触りで立ち上がってくることがある。

「——あれも、愛だったのかもしれない。」

そんな風に感じるようになったのは、もっとずっと後のことだった。



著者プロフィール:
Effica株式会社 代表取締役
全米NLP協会認定トレーナー
柳下早紀


▼後編へ続く


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