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組織における「問題社員」の本質と解決へのアプローチ

「問題社員」という言葉が出てきた時点で、
その組織はすでに問題の半分を見誤っています。

チームの中に、どうしても上手く関われないメンバーがいる。良かれと思って伝えても、反発されるか、暖簾に腕押し状態……。そんな悩みを抱えるリーダーや経営者の方へ向けて、私が現場で見ている『問題行動』の裏側と、解決への本質的なステップを整理しました。

まずはよく聞く問題にはいくつかパターンがあります。

問題社員あるある

1. お局化問題(居場所の防衛)

オフィス系の会社によく見られます。異動がなく、同じ業務をずっと続けてきた女性社員がお局化するケース。

仕事を抱え込む。改善しない。教えない。だから業務が引き継げない。変化を拒むから、組織が動こうとするとき、いちばんの障壁になります。

2. 「見て盗んで覚えろ」問題(教育の連鎖の歪み)

飲食やサービス業によくあります。仕事はできる。でも人とうまくやれない、教えられない。前時代的なやり方を後輩に強要する。

これ、いじめに耐えてきた野球部員が先輩になって後輩をいじめるのと、構造がとてもよく似ています。目的を考えたらわかります。自分の傷を癒すために相手がいるわけじゃない。それに、教えて成長してもらったほうが、本人も楽になるはずです。

3. ハラスメントを逆手に取る問題(自己防衛の手段)

何か言うとすぐ「メンタルやられました」「ハラスメントです」という社員も出てきています。
もちろん、実際に問題が起きているなら深刻に扱うべきです。
ただ、自分の居心地のために使う人もいる。よくよく見ると、客観的には本人に問題があることも少なくありません。

4. 世代ギャップ問題(育成環境の不在)

長らく新卒を採用せず、中堅・ベテランだけになった組織に、久しぶりに若い人が入ってくる。教育体制がない。歳の近い先輩もいない。若い側は学生気分が抜けにくく、ベテラン側はどう教えていいかわからない。お互い理解し合えないまま、こじれていきます。

5. 「優秀すぎる」問題(ストイックさの裏返し)

役員に引き上げたいくらい仕事ができる。でも周りの「できない人」にきつく当たってしまい、なかなか上げられない。

こういう方の話をよく聞くと、自分に厳しく生きてきた人が多いです。自己承認ができないまま、成果を出し続けることで自分を認めようとしてきた。だから周りにも同じストイックさが向いてしまう。「なんでできないの」となってしまう。

※最後のタイプに関しては前回の記事で詳しく解説していますのでご参考ください。


その背景にあるもの

ここまで並べてきて、気づくことがあります。

状況も課題もバラバラに見えて、共通しているのはひとつ。

本人が、自分で自分を認められていないということ。

本当の意味での自己承認ができていないから、人はあらゆる手段で自分の重要感を満たそうとします。その結果が、周りから見ると「問題行動」として現れている。

無意識のレベルでは、その行動によって満たされている何かがある。だから変わらない。


では、どうするか。

私がこういった相談を受けたとき、まず共通お伝えすることがあります。

その人の「存在」を承認すること。

あなたはそこにいる価値がある。このメッセージを持ちながら関わらないと、何も始まりません。関わる皆さんが「問題社員」と認識している時点で、相手のことを認めようとは思えないのは承知しています。
ですが、どうしたって、ここからなんです。

自分で自分を認められない人は、思っている以上に多いです。

幼少期からの対人関係のつまずき。いろんな仕事でうまくいかなかった経験。そういうものが積み重なった結果、「どうせ自分なんて」というマインドが深く根付いてしまっている。そのマインドのまま生きているから、同じようなトラブルを繰り返していく。

傷つきすぎて、殻を硬く閉ざした状態です。

そういう人に、いきなりフィードバックをしても、言葉は入っていきません。どれだけ正しいことを言っても、どれだけ丁寧に伝えても、殻の外で弾かれてしまう。

だから最初に必要なのは、あなたはそこにいる価値がある、というメッセージを伝えることです。このメッセージなしに、人の変化は起きません。

例えば、私は外部から第三者の立場に入っていきますが、このメッセージがないと「社長の手先」って言われて終わりですね。
「自分を傷つける人」「脅やかす人」という位置付けにされた時点で、その方に変化を生み出せませんから、完全にフラットな目線で、相手の自己重要感を満たしながら関わる。これが大事です。


その上で、確認すべきことが3つあります。

① 会社がフィードバックできているか

上司が、その人にきちんとフィードバックを伝えられているか。評価のタイミングだけでなく、日常の中で。客観的に。

そもそも、本人は自分が「課題あり」と思われていることを認識できているでしょうか。ここが意外と抜けています。

フィードバックを避けることで、摩擦は生まれないかもしれない。でもそれは、その人の成長を阻害しているだけです。組織として手を抜いているだけとも言えます。

会社は学校ではない。みんなが居心地よくいられる環境をつくることが目的ではなく、成果を生むために集まっている集団です。だからこそ、そこにいる人たちに客観的な成長の指標をきちんと渡していく責任がある。

そして、前提として確認したいことがあります。

フィードバックができる関係性が、そもそも築けているかどうか。関係性ができていないまま伝えようとしても、言葉は届きません。人は、信頼していない相手の言葉では変わらないからです。

② 本人がどうなりたいかを引き出せているか

「問題社員」と見られている本人は、今どう感じているでしょうか。

本当に居心地がいいと思っているのか。

大抵の場合、本人も苦しんでいます。周りがどう思っているか、うすうす気づいていることも多い。そもそも自己承認ができていないから、周りが思っている以上に自己否定が強い場合すらある。

だから、周りが「変えたい、こうしてほしい」と操作しようとしても、本人が変わろうと思っていなければ変わりません。余計なお世話になるだけで、こじれるばかりです。

外部からコーチングをする意味は、ここにあります。

完全にフラットな第三者として入ることで、心を閉ざさずに話せる。警戒心のない状態で、「あなたは本当はどうなりたいの」という問いが届く。

きっと最初は何も答えないと思います。「そんなこと考えたことない」「やるべきことをやるだけです」、そう言うでしょう。

でも、あるんです。

みんな、心に蓋をして自分でも気づけなくなっているだけで、奥底にはちゃんとある。どうなりたいか、どうありたいか。その声に気づいてもらうこと。それを引き出すことが、変化の本当の入口になります。


③ 会社として「どうあるべきか」が定義されているか

上司や社長が「こうなってほしい」と言っても、それが個人の好みの話で終わっていたら伝わりません。「あなたの都合でしょ」で終わる。
言われた側も「自分はこうあるべきだと思う」と別の指標に向かってしまう。
お互いが違う方向を向いたまま、「考え方が合わない」という結論で終わってしまいます。

だから必要なのは、共通の指針を外在化することです。
・会社としてどうありたいか。
・どんな人材を望むか。

これはパーパスや存在意義といった最上位の概念に紐づいて定義されるべきものです。

バリューでも、行動指針でも、望ましい人材像でも、呼び方は何でもいい。社員と経営陣が同じ指標を見て話せる状態をつくること。
それがないと、指導はすべて「価値観の押しつけ」になってしまいます。
社長と上司が同一人物のような小さな組織なら、なくても回るかもしれません。
でも、先輩が後輩に指導する場面があるなら、規模に関わらず指針を言語化しておくべきだと思っています。社員数が10人、20人を超えてくるなら、なおさらです。
「うちの会社はこうあるべきだ」という定義がなければ、指導はできません。
共通の地図がないまま、それぞれが自分の地図で歩いているだけになってしまうから。


この3つを確認しながら、できれば三者面談を設けるのが一番積極的に介入するパターンです。

社長・上司側と問題社員、それぞれと話すだけでなく、私がフラットなファシリテーターとして間に入り、対話を促す。
望ましい状態とのギャップをきちんと伝え、それを受け取った本人が今どう感じているか、どうしたいと思っているかを、本音で出せる場をつくる。

2人だけでやろうとすると、大抵こじれます。
既にこじれているのだから当然で、そこに感情がある。
だから第三者が要ります。


その後の方向性

そうして本音が出てきたとき、その後の方向性は大きく2つに分かれます。

A「変わりたい」が出てきた場合。

難しいとわかっていても、変わりたいと思えているなら、やり方はいくらでもあります。

私がよく使うのはiWAM(職場における動機と行動スタイルを測るアセスメント)。自分がどういう思考パターンで動いているか、何がモチベーションになっているか、何がブレーキになっているかが言語化できます。「なぜ同じことを繰り返してしまうのか」が、本人にも初めて見えてくる。

変わろうという意思があっても、何を変えればいいかわからなければ動けません。iWAMはそこに地図を渡すようなイメージです。自分の傾向が見えた上で、具体的に何から変えていくかを一緒に考える。そこから伴走していく。

変化は急には起きません。でも、本音に気づいて、自分のパターンが見えて、小さく動き出すと、周りの反応が変わってくる。その反応がまた本人を変えていく。そういうサイクルが回り始めると、半年後・1年後にはまったく違う姿になっていることがあります。実際にそういう方を、何人も見てきました。

B「変わりたくない」本音が出てきた場合。

これはこれで、大事なアウトカムです。

会社が求める姿と、自分が向かいたい方向が違う。それが明確になったなら、次のキャリアを考える対話へと移っていく。それは上司との面談の場でやること。私の仕事はそこまでのお膳立てです。

ここから先は、経営者や上司の方へ伝えたいことです。

「問題社員」に、必要以上のエネルギーをかけないでください。

2・6・2の法則を知っている方も多いと思います。組織には必ず上位2割・中間6割・下位2割がいる。下位2割を入れ替えても、残った中からまた下位2割が生まれる。これは組織の構造として、ある意味自然なことです。

問題社員をゼロにしようとするのは、最初から無理な話でもある。彼らの多くは、悪意があるのではなく、ただ深い穴の中にいるだけです。
だから、すべきことはシンプルです。

穴に落ちている人に、はしごをかけること。

本人が穴に落ちていると気づけているか確認する。客観的な指標で、現状とのギャップを伝える。改善のやり方を示し、機会を与える。
それだけでいい。
手を伸ばして引っ張り上げようとしない。それは介入のしすぎで、そこにかける時間もエネルギーも人件費も、もったいないのです。

チャンスはいつでもある環境だけ整えておいて、あとは上位2割に時間とエネルギーを使う。伸びようとしている人に投資する。その割り切りが、組織を動かしていきます。

もう一度言います。
はしごはかける。登るかどうかは、本人次第。

「問題社員をどうにかしてほしい」という依頼で入ることが多いのですが、相手を変化させようとした時点で、それはうまくいかないのです。

本音が出た瞬間から、人は動き始めます。
そして、外圧による変化は継続しないのです。


おわりに

「問題社員」というレッテルを貼ってしまうと、そこで対話は終わってしまいます。大切なのは、彼らを「変えよう」とするのではなく、彼らが抱える「不安」や「防衛本能」を理解しようと試みることです。


組織の悩みは、紐解けばすべて『人』の心の仕組みに行き着きます。もし、あなたお一人の力で限界を感じているなら、第三者の視点を入れてみるのも一つの手です。



著者プロフィール:
Effica株式会社 代表取締役
全米NLP協会認定トレーナー
柳下早紀

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