200年間読み継がれている小説の書き方(0)
本稿は小説『フランケンシュタイン』とその原作者であるメアリー・シェリーに関する史実を追った(少々退屈な?だった?)エッセイです。そもそも「最初のSF作家は実は18歳の少女だった‼️」という史実に驚かされたじぃじが、その真相を知りたくて、しゃにむに追いかけた(自分で言うのも気恥ずかしいですが)力作です。が、ひととおり纏まったところでツレに読んでもらったら…途中で迷子なっちゃった😛 だいたいじぃじの書く歴史モノって無駄に細かいので、こういうことは良くあるのですがね…一晩思案して、最後に書いた「まとめ部分」をコピーして、ダイジェストとして冒頭にも掲載する事にしました。最初に全体を俯瞰しておいてもらえば迷子にならないからね😁 まぁ、それくらい長い4話構成のエッセイです。だから次の「本稿のダイジェスト」だけ読んで「全部読んだ!」って言われてもしょうがないと思ってます。でも、もし、お暇なら本文の方も読んで欲しいって思っています。
本稿のダイジェスト
小説『フランケンシュタイン』、正確には『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』は、およそ200年前の19世紀初頭に英国で書かれたゴシック小説で「最初のSF小説」として知られている作品です。当時の最先端科学の知見を踏まえて空想された人造人間クリーチャーと主人公の戦いを描いた悲劇ですが、作者メアリー・シェリーのさまざまな実経験を投影した多面的で緻密なキャラクター造形が施されたため、類例のない悪役が登場するユニークなゴシック小説として知られています。
作者メアリー・シェリーは、18歳の時にこの作品を執筆しました。著名な急進派思想家の夫婦を両親に持つ彼女は実母が出産直後に亡くなったこともあって、異父姉と異母妹の3人姉妹の次女として育ちました。幼い頃から文才に優れていましたが、16歳の時に妻子あるロマン主義詩人パーシー・シェリーと駆け落ちをしました。その逃避行の最中、当時の最先端の科学的知見であるガルヴァニズム実験の詳細が語られる場に遭遇したことで『フランケンシュタイン』の着想を得たと本人が後に語っています。この経験が幼い頃から慣れ親しんだ文学の素養や複雑な家族関係で体験した経験と結びついて、今日SFと呼ばれている全く新しい文学ジャンルを切り開く事になりました。その後、バーシーの手助けを借りて執筆を進め、1818年に『フランケンシュタイン』を初めて出版しました。
初版の出版後、メアリーはパーシーとイタリアで落ち着いて結婚しました。しかし数年後、海難事故で彼を亡くした際、幼い息子を抱えていたメアリーは執筆業で身を立てることを決意します。英国に帰国し、出版業を営んでいた実父の力を借りて『フランケンシュタイン』第2版を出版します。その際、幸運にも舞台化の企画が立ち上がり、第2版を出版してから数ヶ月後、『フランケンシュタイン』の舞台が初演を迎えます。人造人間クリーチャーという特異なキャラクターに工夫を施した舞台演劇はたちまち話題になり、メアリーは一躍、原作者として時の人になりました。
第2版が舞台化され(当時は公に名乗ることが珍しかった)女流作家として知名度をあげたメアリーですが、著作権の概念が定着しておらず、それに伴うロイヤリティもなかった当時ですので、経済状態は相変わらずのまま8年が経過します。第3版の出版は、コルバーン&ベントリー社の「スタンダードノベルズ」という全集への『フランケンシュタイン』の採録の申し出がきっかけでした。「過去の著名な小説を1冊にまとめて廉価で販売する」というこの企画にメアリーが喜んだのは、出版に際して改訂した作品の版権を出版社が一括で買い取ったからでしょう。そこで(おそらく)メアリーは「良い機会だ」と考えたのか、初版の文字数を減らすため小説の内容を一部書き換えて、コルバーン&ベントリー社版『フランケンシュタイン』をまとめました。それが第3版で今日の『フランケンシュタイン』の原作になっています。初版を出した時は無名の19歳だったメアリーも、今では32歳の有名女流小説家。それから世間一般の目から見れば何かと騒ぎが絶えなかった彼女の家族周辺もそれなりに落ち着きを見せていました。そういった環境の変化も取り込んで、第3版はより洗練された(でもちょっと難解な)少し短くなった『フランケンシュタイン』にまとまっています。
以上が本稿のダイジェストです。ひととおり書き上げた今思うことは、メアリーって(もちろん才能に溢れているけど)普通の文学少女だったんだなぁ…ってことです。ただ、彼女のまわりにいる人達は普通じゃなかった。ハッキリ言って彼女は家族に振り回され続ける生涯を送ってます。でも身に降りかかってくる現実にしっかり向き合うって、自分の作品でしっかり昇華させているあたりが天性の作家だったんでしょうかね?
どうです?彼女の生涯がちょっと気になりませんか?であれば、是非、次のリンクをクリックしてください。
「『フランケンシュタイン』 怪奇小説の定番キャラクターの背景にある原作のプロット」▶️
じぃじの無駄に細かい文章に付き合ってくれた皆さま、お疲れさまでした。ふたたび冒頭のダイジェストを読み直して、メアリーが最初のSF小説を何故書けたのか納得してもらえると嬉しいです。もし「あれ?」って思うことがあるのなら、次のリンクをクリックしてください。
以降は本稿全体のまとめになります。
200年間読み継がれる小説の書き方
第3版の出版経緯まで書き終えて思ったことなんですが…
小説『フランケンシュタイン』の鋼のような生命力、何度でも蘇ってくるある種のしぶとさは、結局のところ18歳の少女が書き上げた初版で既に宿っていたのでは無いか?とじぃじには思えてなりません。この物語が200年間読書の関心を惹き続ける理由はメアリー自身が語っているように19世紀初頭の最先端科学のリアルから得た恐怖の知見にあったことは明らかです。が、それを「私は何故生まれてきたのか?」という誰もがふとした瞬間に抱く普遍的なテーマと結びつけて語った事に起因するとじぃじは推測しています。
複雑な家庭事情の中で育ったメアリーには、幼い頃から感じていた実感の伴った生々しい記憶として残っており、さらに義姉のファニーの存在や、それを失ったことへの自責の念も相まって、彼女の中で痛みの記憶が層を成して積み重なっていったように思います。小説を一読するとそれがクリーチャーのセリフを借りて吹き出して来る様には、どんな読者も刮目せざる得なくなります。おそらくこの痛みは幼い頃からメアリーの日常に転がっていたものでしょう。それをそのまま誰かに語らせるのではなく、登場人物に投影させたことでさらに多くの人々の共感を引き出し、作品は何かの力強さを帯びたようにじぃじは思います。
もっとも、この作品が多くの人々の知るところとなったことには、その他に理由が必要だったのでしょう。(第1回で紹介したように)『フランケンシュタイン』を原作とする舞台劇が多数公演されるようになり、19世紀の英国では舞台演劇の定番ネタとなりました。その足がかりを作ったのは実父のダドウィンだとじぃじは考えていますが、おそらく彼は作品の力強さの正体には気付いてなかった。もちろん作品の持つ生命力やしぶとさには圧倒されたとは思いますが…ヒット作が成立する条件は難しいのでしょうねぇ。
この作品の魅力、その人気の秘密はやはり、クリーチャーという架空の怪物キャラクターに負うところが大きかったのだと思います。19世紀の舞台劇でのクリーチャーはセリフのない役である事が多く、その視覚的インパクトやパントマイムはクリーチャー役の俳優が担当する創作作業だったのですが、この役には悲劇的で共感性のある存在感があり、暴力と純真が共存する二面性を持ち、創造主との対立関係がドラマを進行させる事など、原作の多面的で緻密なキャラクター造形に下支えされてました。ですから舞台劇の脚本家など二次創作の担い手は、もし行き詰まった場合には原作に立ち戻れば良い。そこには状況を打開するヒントやインスパイアを促す何かが眠っている訳です。だからこそ100を超える二次創作が生まれることになったのでしょう。じぃじが感じるこの作品の生命力やしぶとさをわかってもらえるでしょうか?
『フランケンシュタイン』は21世紀の現在でも多くの人にとって「原作はよく知らないけど、キャラクターはよく知っている」作品として認知されています。200年間読み継がれる小説とはそういうものなのでしょうねぇ。
さて…
ここまで読んでいただいた読者の皆さん、長い長い文章にお付き合いいただきありがとうございました。ここでひとつお詫びがあります。
本文中で何度か仄めかした本稿の最終話「現代のプロメテウスとしてのAI」についてです。巷では本格的な普及期に突入した感のある生成AIですが、実は最先端の研究開発の現場では今、200年前にメアリーが想像したであろう「もし、そんな技術が現実のものになったとしたら、何が起こるのだろうか?」という疑問が現実の問題になり始めています。つまり「もし、生成AIがクリーチャーのように自我に目覚めてしまったとしたら?」という疑問です。実は本稿の構想段階ではここまで書くつもりで、予稿も書き溜めていたのですが先々週あたりに「どう足掻いても創作大賞2025の締切に間に合わない」ことを悟りまして、この部分だけ先送りして応募作品から除外することを決めました。(なのでタイトルを変更したのです)すいません。
しかし…
重要なパートの先送りまで決めたのに、締切日のこの時間にまだ書いてるという…この記事を投稿して、既存の投稿記事の整備をしたら、直ちに「現代のプロメテウスとしてのAI」に取り掛かりますので、今しばらくお待ちください。これが今のじぃじの精一杯です。ごめんなさい。
「現代のプロメテウスとしてのAI」▶️
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