3,500年の祈りと向き合う 青森県八戸市 是川縄文館 #青森の縄文遺跡群×フェリシモ vol.3
手を合わせるという行為は、いつの時代も変わらない。そう気づかせてくれる土偶が、青森にあります。縄文時代と現代をつなぐものは何か——是川の縄文が、その問いに向き合わせてくれます。
みなさまこんにちは、ミュージアム部です。
フェリシモ「ミュージアム部」の内村が、「青森部」の小倉とともに、実際に青森の縄文遺跡群を巡り、その魅力をお届けする連載の第三回。今回は、国宝 合掌土偶が展示されている青森県八戸市の「是川縄文館」をご紹介します。

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国宝 合掌土偶のふるさと、是川縄文館へ
モダンでかっこいい建物の外観から、これまで訪れた縄文遺跡とは何か違う雰囲気を感じる是川縄文館。

史跡「是川石器時代遺跡」とは
八戸市是川にある、縄文時代晩期(約3,000年前〜2,300年前)の中居、一王寺、堀田の3つの遺跡から構成される。なかでも中居遺跡からは精巧な土器や土偶、漆が塗られた弓や櫛、腕輪などの漆製品が多数出土し、高い精神性と優れた工芸技術を知ることができる。
今回案内してくださったのは、八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館の小久保さんと船場さん。是川縄文館は1階が無料エリアで遺跡の概要が展示されており、2階に常設展示室と企画展示室、そして国宝展示室があります。

常設展示は約550点。そのうち8割以上が重要文化財というのだから驚きです。展示品の9割以上が流出することなく地元に残っていることが、是川の誇りのひとつでもあります。
「是川遺跡の出土品は、非常に早い段階からその美しさが評価されていたんです。あまりに美しすぎて、縄文時代のものではなく、もっと新しい時代のものだと思われたこともあったほどなんですよ」と船場さん。赤い漆器、黒く磨き上げられた土器……「赤と黒」がこの館のイメージカラーであることが、館内を進むにつれてじわじわと伝わってきます。

漆が彩る超絶技巧の出土品たち
展示室の中でひときわ目を引くのが、漆製品のコーナーです。薄暗い展示室の中で、赤い漆の色が闇の中に浮かび上がるように見えるその演出は、顔料が劣化しないよう光量を抑えているという実用上の理由とあわせて、出土品本来の美しさをいっそう際立たせています。

「一般的な縄文時代のイメージは茶色い土器だと思うんですけど、是川はとにかく赤と黒なんです」と船場さん。木の器に漆を塗ったもの、竹の籠に漆を塗ったもの、漆塗りの土器など、素材は違っても、同じデザイン感覚が貫かれている点が是川の出土品の大きな特徴です。
中でも圧倒されるのが、笹類の籠に漆を塗った「籃胎漆器」の技法。1mmほどの細さに裂いた素材を4つにさらに裂き、そこから精緻な編み目を作る——石器しかなかった時代に、現代の職人ですら「一生かかってもここまでできない」と言うほどの技術が、すでに存在していたといいます。また、是川の出土品は水漬けで酸素が遮断された地層の中でパックされるように残っていたことから、木製品の保存状態が際立って良く、漆の色もきれいに残っているそうです。

「その日暮らしではなく、漆液をとる時期や、植物の素材を収穫する季節を知っていて、計画的に資源を管理しながら作っていたんです」と船場さん。縄文時代への先入観が、静かに更新されていきます。
国宝 合掌土偶との、静かな対面
漆製品のコーナーを抜けると、個性的な土偶が並んでいるコーナーへ。是川で出土した土偶が古いものから順に並んでいます。そのなかには、今回「社交的な遮光器土偶の手つなぎマスコット」のモチーフにした2体の遮光器土偶もありました。

並べてみると、向かって左側の小さな土偶は、マスコットとほぼ同じサイズ。はるか昔、このサイズ感の土偶を作り持ち歩いていたのだと思うと、縄文人も、かわいいものが好きだったのかなという風にも思えてきます。

さらに展示室を進んだ先に、今回の訪問の目的が待っていました。一点だけスポットライトを浴びている展示ケースの中で、静かに手を合わせて座る土偶——国宝 合掌土偶です。

合掌土偶は、縄文時代後期に作られた土偶で、座ったまま両手を合わせるような姿勢をしています。完全な形で残っているものとしては現在これ一体しか確認されていません。高さ約19.8cm、ほっそりとした体型に、少し上を見上げるような顔——近くで見るほど、その造形の不思議な存在感に引き込まれます。

「このポーズが、何を表しているのか分かっていることはありません。ただ、座ったままお産をするスタイルだったのではないかという説もあります。しゃがむ動作をよくしていた縄文人の骨格から、縄文人がとっていた姿勢のひとつが形になっているとも想像できますが、それ以上は想像の域を出ないんです」と小久保さんは語ります。
また、合掌土偶は仮面を被っている姿なのだそう。他の遺跡から、実際に縄文人が身に着けるサイズの仮面も出土していることから、そういった縄文の習俗的な情報が秘められていることも国宝として評価されているそうです。

合掌土偶が発掘されたのは平成元年の夏。「右足が約2m離れた同じ竪穴住居内から出てきました」と小久保さんが解説します。その割れ口にはアスファルトが付着しており、縄文時代に一度割れて修理されたことが分かっているそう。離れてしまった右足が、3,500年の時を経てあるべき場所に落ち着いたのです。

「国宝に指定されている土偶は、ほとんどが完全な形で見つかっています。発掘によってしっかりと学術的な記録が残っていること、そして全体が揃っていること、何より、合掌していること——それがこの合掌土偶が国宝である理由です」と小久保さん。発掘から40年近く経っても、唯一無二であり続ける合掌土偶。そこに、大きな価値があると語ります。

遮光器土偶&合掌土偶グッズを企画しました!
今回フェリシモでは、是川石器時代遺跡で発掘された「遮光器土偶」「合掌土偶」をモチーフに「社交的な遮光器土偶の手つなぎマスコット」「手のひらで発掘!土偶ハンカチ」そして「国宝『合掌土偶』なりきりパーカージャケット」を企画しました。商品開発にあたり監修をいただいた小久保さん、船場さんに実際に手に取って見ていただきながら、お話をお伺いしました。

「うちの土偶が2体も採用されて、ありがたいです。マスコットやキャラクターになるときに省略されがちな細かい模様が、ていねいに再現されている」と船場さん。
今回の「マスコット」では、遮光器土偶の模様を途切れることなく全身にわたって表現しています。これが実現可能になったのは、細かい資料を是川縄文館さまが提供してくださったからです。

ハンカチについて小久保さんは「最終的には全身をきれいに掘り出したけれど、実際発掘途中はこういう瞬間もあったと思う。そういう意味で再現度がかなり高い」とお話してくださいました。

また、細かな模様やボタンの数などにこだわった合掌土偶になれるパーカーも、実際に着ていただいてその質感を確かめていただきました。

「全国各地にさまざまな縄文時代の遺跡があって、それぞれ全然違う。青森の中でも三内丸山と是川では時期を含め、全く違います。そういう違いを楽しんでほしいですね」と縄文の魅力について語る小久保さん。
是川縄文館は今年、開館15周年と世界遺産登録5周年が重なる節目の年を迎えます。「現在史跡整備に取り組み、2027年度には是川石器時代遺跡の一部が公開できる予定です。屋内と屋外、両方で縄文に触れ、楽しめるよう盛り上げていきたい」と展望を語ってくださいました。
縄文の祈りに思いを巡らせて
薄暗い展示室の中で、合掌土偶はただ静かに手を合わせていました。何を祈っているのか、誰に向けて手を合わせているのか。3,500年経っても、その答えは誰にも分かりません。
でも、縄文時代に一度割れて修理され、それでも大切に飾られ続け、地中に眠り、そして発掘されて今ここにある。その長い旅のすべてが、この土偶に詰まっています。ぜひ「是川縄文館」へ。

八戸市埋蔵文化財センター 是川縄文館へのアクセス方法
青森県八戸市大字是川字横山1
〈車で〉
八戸自動車道・八戸I.Cから10分。八戸久慈自動車道・八戸是川I.Cから5分
〈バスで〉
・JR八戸駅東口バスターミナル4(土・日・祝日)是川縄文館 行→是川縄文館下車。
・JR本八戸駅〜中心街バスターミナル3(中央通) 是川団地 行→是川縄文館下車。
〈タクシーで〉
JR八戸駅東口より約15分。
旅の終わりに
青森の3つの遺跡を巡り、それぞれの土偶と向き合ってみると、縄文時代が教科書の話ではなく、連綿と続く人の営みのひとかけらとして感じられてくるから不思議です。
「ミュージアム部」内村&「青森部」小倉でお届けしてきた「フェリシモ×青森の縄文遺跡群」シリーズはいかがでしたでしょうか? 縄文の世界への扉を開くきっかけになればうれしいです。ぜひ一度、青森の縄文遺跡群へ!

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