第11話|食卓の空気が悪くなった日 | ピノのひと言で戻った時間
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第1話|抱っこと決意|シングルファザーとなった最初の日
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食卓は、だいたいパピコと自分が先に食べ終わる。
そのあとの談笑が好きじゃったけど、
ピノがあんまりゆっくりしとる日は、
先に片づけを始めてしまうことが多かった。
「パピコ、ちょっとピノの食べるの
手伝うてやってな」
そんな声をかけるのが、いつもの流れ。
おいしい日のピノは早い。
少し手を抜いた日は、まぁ進まん。
それも日常のひとつじゃった。
ところがある日。
早く食べるよう促すも、
なかなか終わらない。
食器を全部洗い終わっても、
まだピノは箸を持っとった。
わしの虫の居所が悪かったのかもしれん。
作ったものを拒まれたような、
小さなトゲが刺さった気もして、
イライラし始めてしまった。
ピノもパピコも、
その空気を察したのか、
少しソワソワと急ぎ始める。
洗濯物を片づけて戻ってきたとき、
まだ食べとるのが目に入って、
「まだ食べよるん!?
早よ食べなさい!!」
思わず、怒鳴り声が出た。
『しまった』
胸の奥でそう思ったものの、
苛立ちはすぐには消えんかった。
すると、ピノがパピコのほうを向いて、
必死な顔で、ひとこと。
「ほら、はやく たべさせなしゃい」
パピコと一緒に大笑いした。
それを見て、ピノも大喜び。
ピノとパピコの焦った顔。
わしの心のざわつき。
そのどれもが、吹っ飛んだ。
「ピノが言うんかい」
そう言ったら、力が抜けた。
悪いほうへ傾きかけとった空気が、
たった一言で戻っていく不思議。
怒りに引っぱられとったはずの場が、
気づけば、笑いのほうへ転がっとった。
「ごめん。もうゆっくり食べてええよ。
いらんかったら残してもええ。
パピコ、代わってくれてありがとう」
そして、ピノ、ありがとう。
言うて、早めに食べてくれた方が助かるけどな。
-------とっちゃRECO-------
食べる速さには、
“その子のペース”というものが確かにあるらしい。
噛む速さや飲み込むタイミングは、
筋肉の発達や感覚の敏感さに左右されて、
大人が「急いで」と言うても、
身体がすぐ切り替わるもんじゃない。
研究でも、
食卓の雰囲気が落ち着いとるほど、
子どもの咀嚼リズムは安定する
という報告がある。
ゆっくり食べる子は、
だらだらしとるわけじゃなく、
落ち着いた場のほうが“いつものペース”に戻るだけ。
そういう性質が、人にはあるらしい。
当時のとっちゃは、
早く片づけたくて、つい焦っとった。
その焦りが、
かえってピノのペースを乱しとった可能性がある。
今ふり返ると、
先に洗い物を片づけるより、
食卓そのものを穏やかに保つほうが、
結果として早く食べ終わる道だったのかもしれん。
空気が変わると、
子どもはそれに合わせて自然と変わる。
あの頃は、まだ知識と余裕が足りんかったんよなー。
-------とっちゃRECO-------
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