第36話|誤差じゃなかった|母からの電話
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第35話|余裕のない日々|誤差にした違和感
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生活費は、
月の頭にまとめて下ろす。
数万円単位で下ろして、
そのまま財布に入れる。
そこから一ヶ月、
食費もガソリンも雑費も
全部払う。
家計簿はつけていない。
レシートは溜まり、
きっちり数えたことも、
正直ほとんど無い。
だから減り方は、
いつもなんとなくじゃった。
「だいたいこんなもん」
そんな感覚で回しとった。
忙しい時期は特に、
金の流れは曖昧になる。
残業が増え、帰宅は遅い。
買い物も急ぎ足。
財布の中身を一枚一枚数える
余裕なんかない。
だから、
残金の違和感があっても、
「まあ使ったんじゃろう」
で終わらせとった。
正直、まるっと一万円抜かれても
気付かない日があったかも知れない。
でも、
生活費のかたまりの中では、
それも“誤差”に見える。
自分の管理がずさんなだけ。
そう思えば、話はそこで終わる。
子どもを疑わんで済む。
あの箱を見たときも、
頭では分かっとった。
それでも、
決定的な場面は見ていない。
だから確信にはしなかった。
いや、出来んかった。
そんな中、
仕事の忙しさも、
ピークになってきたので、
3日ほど母に来てもらうことにした。
土日も仕事になる為、
子供だけで留守番させたくない
と言う思いからではあるが、
なにより家事が減る。
洗濯も台所も任せられる。
正直、楽になる。
仕事は忙しいままじゃが、
1日のトータルとしては、
普段より余裕ができる。
とりあえず、
仕事が片付くまでは
Switch問題を一旦棚に上げて、
本業に集中しようとした、
木曜日の午前中。
現場で作業の段取り中に、
母から電話が入った。
声が普通じゃない。
「ちょっと、、パピコが大変なんよ」
財布から、
札を抜き取るパピコを見た、と。
あー、、、やっぱりか。
疑いは、その瞬間に終わった。
母はその場で問い詰めたらしい。
すると、
声をあらげたことも、
反抗したこともないパピコが、
「嫌なことばっかりある!!」
「お父さんも厳しいし!!」
「これは仕返しなんよ!!!」
と怒鳴り上げたらしい。
仕返し。
その言葉だけが、
はっきり残った。
怒りより先に、
自分の責任だと、
そう思う気持ちが強かった。
電話を切ったあと、
すぐには動けんかった。
周りでは作業が続いとる。
誰かが何かを聞いてきたが、
「あとで」とだけ返した気がする。
生活費のかたまり。
誤差。
忙しさ。
全部、言い訳じゃった。
盗みを働かせてしまった。
それを実感した。
もう、疑いではなかった。
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第1話|抱っこと決意|シングルファザーとなった最初の日https://note.com/fast_deer7937/n/n74aef03be245
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