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第28話|魚を捌く|違った伝わり方

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第1話|抱っこと決意|シングルファザーとなった最初の日https://note.com/fast_deer7937/n/n74aef03be245 

お隣さんから、
でっかいチヌをもらった。

正直、出刃も持っていない
我が家ではでどうにかなるサイズじゃない。


と思わせる、
まな板いっぱいの魚。

玄関で受け取って、
そのままキッチンへ持っていき、
まな板にドンと置いた。

子供たちが、
すぐ寄ってきた。

パピコは、
目をキラキラさせている。
完全に、
「捌くところを見たい顔」だった。

ピノも、
最初は興味深そうに魚を覗き込んでいた。

結局、ネットで調べて捌くことにした。
包丁を手に取った瞬間、
ピノがスッとリビングに戻った。
見るのは好きだが、
捌くところは見たくない。
そういうことらしい。

一方、パピコは動かない。
完全に、
「ここから見る」
という立ち位置を決めた顔だった。

鱗はスプーンで落とす。
包丁は、いつものやつ。
力があったのか、
思ったよりもスイスイいった。
後ろでは、
パピコがずっと声を出している。

「おお」
「すごい」
「次は?」

頼むけぇ、
肘の後ろには立たんでくれ。
そう思いながら、
腹を開ける工程に入った。

ここで、
気持ち悪いとか言われて、
魚嫌いになられたら嫌じゃな。

そんな心配が頭をよぎる。
腹を開いて、
内臓を出す。
大人には平気でも、
この瞬間は、
少しだけ魚の匂いが立つ。
その時、後ろから音がした。

ジュルルルル。

ん?

振り向くと、
パピコが口元を拭いている。
目は、相変わらずキラキラ。

「……おまえ、今よだれ垂らした?」

「だって、美味しそうなんじゃもん」

こっちの心配は、
完全に的外れだった。
食に関しては、
なかなかワイルドな性格していたらしい。

その後は、
刺身用に柵にして、
皮を引いたり、
焼き魚用に切り身にして、
頭は半分にして、
他のアラと一緒に出汁を取る用に。

これらの作業を
パピコは、
最後までずっと見ていた。

夕飯は、刺身とあら汁。
ピノは、捌く工程には一切関わらず、
食べる段階だけ参加。
「いただきます」のあと、
ピノが自分のコップを差し出してきた。

「おこーしゃん。おちゅかれ」

思わず笑ってしまった。
どこで覚えたんじゃろう。

それも、
らしいなと思った。

いい食育だったかどうかは、
正直、
分からん。
ただ、
同じ魚でも、
彼女たちの受け取ったものは
各々違っていた。

それが、少し面白かった。

-------とっちゃRECO-------
この年頃の子供は、
「食べ物」を
まだ概念として理解している段階にある。

生き物と料理が、
頭の中で、きれいには繋がっていない。
だから反応は分かれる。
見たがる子と、結果だけ受け取る子。

発達心理の視点では、
興味の向く場所が違うだけで、
獲得している情報量に
大きな差はないとされている。

パピコは、
過程を面白がり、
ピノは、
完成したものを受け取る。

当時は、
それを深く考えたわけじゃない。

ただ、
同じ場にいても、
見ているものは全然違う。
そのことを、実感した日だった。

-------とっちゃRECO-------

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