第29話|長期休暇|休んだはずの一週間
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この年の春休み。
子供たちを実家に預けるタイミングで、
休日消化も兼ねて、
仕事を1週間休んだ。
本当は、
やりたいことは色々あったはずだ。
でも結局、
明確に「やりたかった」と言えるのは、
欲しかった本をまとめて買って、
読書をしたことくらいだった。
それ以外は、
不思議と今までやったことのないことばかりだった。
まずは、一人打ちっぱなし。
ゴルフが好きなわけでもない。
ただ、ひたすらボールを打つ。
理由もなく、意味もなく。
でも、この感覚は本当に気持ちよかった。
しかし今思えば、
あの日以来、
一人で打ちっぱなしに行ったことはない。
次はボルダリング。
久しぶりに会社の後輩を誘って、
男同士でたわいもない話をしながら、
頭を空っぽにして壁を登った。
帰る頃には、
ジュースの蓋も開けられないくらい、
握力がなくなっていた。
そしてマッサージ。
正直、
少しおじさんくさくて敬遠していた。
それでもなぜか、
この1週間の間に
「行ってみたい」と思った。
結果的に、
これはその後も続く習慣になった。
疲れたと感じた時に、
年に3、4回の御褒美として。
今では、
自分の癒しのひとつだ。
あと、
子供たちを実家に預ける時は、
いつも冷蔵庫を空にする。
でもこの時は、
鯛が一匹残っていた。
子供たちに食べさせようと思って
買っていたのに、
出すのを忘れていたのだ。
子供たちがいないと、
基本的に料理はしない。
それでも鯛はもったいない。
余っていた野菜を適当に切って、
煮るだけ。
気づいたら、
アクアパッツァのようなものができていた。
流れ作業のように、
これらの事象をこなしていた。
振り返ると、
この1週間はずっとそんな感じだった。
選んだというより、
流れていた。
でも、
体だけはちゃんと動いていた。
そして、
ちゃんと休んだという実感だけは、
確かに残っていた。
本当は子供たちと旅行とか
行くべきだった様に思えるが、
当時は
小さい子を2人連れて旅行
なんてとてもする気になれなかった。
-------とっちゃRECO-------
人は慢性的な疲労状態に入ると、
「やりたいこと」よりも、
「判断しなくていい行動」を選びやすくなる。
行動心理学では、
強いストレスや負荷が続くと、
判断・期待・評価を処理する脳の働きが鈍り、
好きなことですら
重たく感じる状態になるとされている。
読書や娯楽は、
楽しい反面、
集中や理解、感情の動きを必要とする。
疲れている時ほど、
それが負担になることもある。
一方で、
やったことのない行動には、
評価軸や正解がない。
上手くやる必要も、
意味づけする必要もない。
ただ体を動かす。
ただ感覚を受け取る。
当時の自分には、
その方がやりやすかったのだと思う。
-------とっちゃRECO-------
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第35話|余裕のない日々|誤差にした違和感
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