第59話|ピアノ|楽譜も読めんのに
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第1話|抱っこと決意|シングルファザーとなった最初の日
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仕事から帰ると、
パピコが普通の顔で言った。
「学習発表会のピアノ、
今年やる事になった」
「おーそーかー」
そこまで言って止まる。
「は!?おまえピアノ習った事ないじゃろ!?」
普通に意味が分からんかった。
「楽譜読めるん?」
「読めん」
「じゃあどうやって弾くん?」
「先生に教わりながら覚える」
余計分からんかった。
聞くと、
別にピアノが得意だった訳ではない。
無理矢理決まった訳でもない。
「やってみたかった」
それだけで、
ピアノパートへ行ったらしい。
確かに、
鉄琴とか木琴はやっとった。
でも、
ピアノって、
そんなノリでやるもんじゃないと思っとった。
会社に、
ピアノが出来る部下がおったけぇ、
楽譜を送ってみた。
家にある電子ピアノの写真も送る。
すると、
「とっちゃさん、
左手の音5個足りないです」
と言われた。
お。
そういうもんなんじゃ。
そのまま、
少し大きい電子ピアノを買いに行った。
部下には、
手本の動画まで送ってもらった。
それを見ながら、
家で練習し始める。
最初は、
かなりぎこちなかった。
でも、
日が経つにつれて、
少しずつ形になっていった。
その後は、
パピコもイヤホンで練習するようになった。
仕事が忙しく、
進捗もあまり見れんまま、
1ヶ月半が過ぎた。
本番の日。
正直、
かなり心配しながら見に行った。
始まる。
びっくりした。
指運びは、
習っとる子とは少し違った。
なんというか、
慣れた感じじゃない。
でも、
習ってないのに、
ちゃんとペダルまで使っとる。
しかも、
指揮者を見ながら弾いとる。
周りが少し走っても、
パピコだけ、
ちゃんと指揮通りに弾いとる。
親バカかもしれんけど、
普通に天才なんじゃないかと思った。
ピノとの帰り道でも、
「絶対向いとるって」
とか、
「今からやっても全然いけるじゃろ」
とか、
わし一人で盛り上がっとった。
ピノはピンと来てなかったけど、
とっちゃが興奮しとるのは、
伝わったようだ。
パピコが少し遅れて帰ってきた。
「凄かったな!」
「とっちゃがずっとこの調子よ」
気がつくと、
何が凄かったかを、
暑苦しくパピコへ説明しとった。
パピコも、
少し照れながら聞いとる。
「せっかくじゃけぇ、
ピアノ習うか?」
と聞くと、
パピコは笑顔から、
プラスマイナスゼロの顔になって答えた。
「あー、
もう十分よ。
キャラじゃないし」
--------とっちゃRECO-------
子供って、
「出来そうだから挑戦する」
より、
「面白そうだから飛び込む」
の方が強い時期があるようで。
心理学でも、
結果より好奇心が先に動く時の方が、
吸収速度は上がりやすいと言われとる。
ピノのセグウェイ同様、
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多分パピコも、あの時はそれに近かった。
「出来るか」より、
「やってみたい」が先だった。
大人になると、
それが少しずつ逆になっていく。
パピコを見とると、
時々それを思い出す。
-------とっちゃRECO-------
▼パピコの話
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