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ディズニー『タワー・オブ・テラー』物語の舞台裏。“乗らなきゃ損”を生む感情デザインの仕組み

秋になると、いつもディズニーシーに行きたくなる。中でも、「タワー・オブ・テラー(ToT)」の門をくぐりたくなります。

正直、エレベーターの落下は怖い。なのに、なぜ私は「怖い」という本能に逆らい、あのホテルの前に立つと「乗らないと今日一日損をした気分になる」という衝動に駆られるのでしょうか?

それは、ToTの演出が「雰囲気」という名のハリボテではなく「コンセプトファースト」という揺るぎない設計思想で構築されているからです。その裏側の構造は、私が長年追求してきたダンスの「表現論」と本質的に共通する原理で成り立っていました。

単なるアトラクションを超えた、ToTの圧倒的な没入体験の秘密。その世界観を構成する物語の舞台裏を解き明かします。

裏側で徹底された「ストーリー設計」

ToTの素晴らしさは、作り手が「これは架空の話だ」と線を引かず「この場所で本当に起こった歴史」として物語を徹底したことに尽きます。

違和感の演出が世界観を定着させる

パーク内で唯一、ToTのキューラインの庭だけは意図的に落ち葉が無造作に散らされています。この「違和感」が、「ホテルが閉鎖されて久しい」という設定を、言葉なしに伝えます。

枯葉だらけの庭

完全に余談ですが、私はこの庭が好きすぎて「あつまれどうぶつの森」で再現しました。(建物や内装も再現しているがそれはまたいつか)

「あつ森」で作ったタワテラの庭

庭にある美術品、ホテル前の看板、ロビーのオブジェクトなど全てが設定に細かく作り込まれており「この建物の中に入らないなんて、できない!」と私を駆り立てるのです。

クロスオーバーが世界を“現実”にする

主人ハイタワー三世が集めた美術品は盗品。ロビーの絵画には、彼がディズニーシー内 別エリアの「ロストリバーデルタ」にある「レイジングスピリッツ」の遺跡を盗んでいる様子が描かれています。しかも、その盗品の一部がロビーに展示されている。さらに驚くことに、「レイジングスピリッツ」の近くにはハイタワー三世あての「積荷」が放置されているという、遊び心に満ちた仕掛けまであります。

ロビーに飾られている盗品

これは単なるイースターエッグではありません。「この物語は、あなたが今いるこの世界と地続きの、歴史の一部だ」という動かしがたい“証拠”を提示し、あなたの体験を「現実」に変えるのです。

全ての造形に意味を持たせる細工

ホテルのロビーには、過去に落下したエレベーターの残骸が不気味に展示されている。キューラインから見えるレストランのメニュー看板には、ハイタワー三世の「世界の珍しいもの」を誇示する趣味を反映したゲテモノ料理ばかりが並ぶ。
さらに、エレベーター直前の美術品コレクションには、実はシリキ・ウトゥンドゥが隠れていて目が光る。細かい。

まだまだあります。気になる方は調べてみてください。

「なんとなく雰囲気」ではなく、この「物語の軸」を徹底したからこそ、全ての造形物やギミックに「意味」が宿り、圧倒的な没入感を生んでいるのです。

恐怖を乗り越える「身体と心理の攻略法」

せっかくキューラインで引き込まれたこの世界観を最後まで堪能したい。怖いが頑張って乗ろう…!と思った私がやったことは、恐怖を「構造」として解体することでした。

情報で制御する心理

「乗りたい、でも怖い…」と思いながらキューラインを鑑賞する私は、並んでいる間に頭の中で乗る体験をシミュレーションしよう…と思いスマホでエレベーターの動きを調べ始めました。すると出てきた動画はこちら。

これを見た私は目からウロコでした。3台ある…!そして1台動き方が違う…!

この上がる・落ちるタイミングを事前に調べたところ、嘘のように怖くなくなりました。次に何が起こるかという情報を得たことで、脳は「制御可能=安全」と判断するからです。

身体で制御する浮遊感

「動きの恐怖は軽減したが、落ちる時のあの独特の浮遊感が嫌だな…」
次にそう思うようになりました。またスマホにかじりつく私。

特有の浮遊感は「落ちる時に上を向く」という攻略法で克服できました。身体の姿勢を固定することで、内耳が感じる重力変化の混乱を抑え、物理的な不快感を劇的に減らせました。

ToTは、私たちの心理と身体の弱点を突いてくるが、同時に攻略法が存在する。怖さを克服してでもリピートしたくなる魅力があるので、苦手な方は是非おためしあれ。

表現を支える「物語の軸」

そして、ToTが「乗らなきゃ損」という衝動を生むのは、その演出の構造が、私が長年追求してきたダンスの「表現論」と本質的に共通する原理で成り立っているからです。

ToTの成功は、揺るぎない物語を土台とし、全てをその軸から派生させたことにあります。

ダンスの世界でも、なんとなく「ファッション」で踊る人と、内側に明確なストーリーや経験という「軸」を持って「表現」する人がいます。それぞれ魅力的ですが、私は後者の表現こそが、見る人を心から惹きつけると考えています。

ToTのクリエイティブは、この「コンセプトファースト」な「軸」を徹底しました。

物語という軸が強固だから、落ち葉、美術品、看板、エレベーターの動き一つ一つに「意味」が宿る。

「この造形は何?」「あの看板は何が書いてある?」と深堀りすればするほど、そこに物語と設定があり、まるでアニメの考察のように世界が広がっていく。この緻密な構造こそが「すげ~~!」という感情を「没頭」へと変えている。

この物語の軸の大切さを理解し、自分の表現や企画に落とし込むことこそが、あらゆるクリエイティブで人を熱狂させる鍵ではないでしょうか。

あなたは何かの「物語の舞台裏」を覗く面白さを見出したことはありますか?

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