【消費者庁審議会】食品に含まれるPFASとプベルル酸についての報告
【消費者庁審議会】食品に含まれるPFASとプベルル酸についての報告(本文4,401文字)
消費者庁は、令和7年9月4日に「令和7年度第1回食品衛生基準審議会食品規格・乳肉水産・伝達性海綿状脳症対策部会」を開催しました。本審議会では食品に含まれるPFAS(有機フッ素化合物)の今後の対応方針と、プベルル酸に関する調査状況の進捗について報告と議論が行われ、国産畜産水産物に含まれるPFASの実態調査やプベルル酸の毒性に関する研究結果などについても取り上げられています。詳細は<一次情報>からご確認ください。
<議事次第>
1. 食品中のPFASに係る今後の対応について
2. プベルル酸に関する調査状況の進捗について
<概要>
1. 食品中のPFASに係る今後の対応について
1-1. PFOS及びPFOAに関する動向
PFAS(有機フッ素化合物)の分子種であるPFOSとPFOAは、熱や化学的な安定性から様々な製品に利用されてきたが、環境残留性や健康影響の懸念から、平成21年(2009年)以降、多くの国で製造・輸入が原則禁止されている。近年、これらPFASの食品への影響について、国内外で新たな動きが見られる。
◆わが国では、内閣府食品安全委員会がPFOS及びPFOAの食品健康影響評価を行い、耐容一日摂取量(TDI)をそれぞれ20ng/kg体重/日と設定し、令和6年6月25日に関係大臣宛に通知した。
◆環境省は、水道水におけるPFOS及びPFOAの水質管理目標設定項目を水質基準へと引き上げ、その基準を0.00005mg/L(50ng/L)と設定した。これは令和7年6月30日に公布され、令和8年4月1日に施行される。
◆食品衛生基準審議会では、ミネラルウォーター類についても水道水と同様の基準を設定し、令和7年6月30日に告示された。
1-2. 実態調査結果および令和7年度以降の対応
農林水産省は、国内に流通している代表的な国産農畜水産物14品目を対象にPFAS含有実態調査を実施した。
1-2-1. 令和6年度調査結果の概要
■PFOSの14品目合計の平均摂取量は、耐容一日摂取量(TDI)の0.5%、最大摂取量でも7.5%であり、十分に低い水準である。
■PFOAの14品目合計の平均摂取量は、TDIの0.4%、最大摂取量でも2.6%であり、こちらも十分に低い水準である。
■今回の調査は食品全体の消費量の約3割に留まっている。
1-2-2. 令和7年度以降の対応
◆農林水産省は、令和7年度も引き続き実態調査を継続し、対象品目を14品目以外にも拡大する。
◆令和6年度調査で特異的に高い値が見られた品目について、さらに実態の把握や要因の調査を実施する計画である。調査予定品目には、ダイコン、ホウレンソウなどの農産物、牛肉、鶏卵などの畜産物、ギンザケ、アユなどの水産物など。
1-3. 厚生労働省による摂取量推定に関する研究について
厚生労働省も、厚生労働行政推進調査事業の一環としてPFASの摂取量推定に関する研究を実施しており、PFOS及びPFOAの平均一日摂取量はいずれも食品安全委員会が示したTDIを下回っていることが確認されている。
■令和5年度及び令和6年度においては、マーケットバスケット方式によるトータルダイエット試料を用いて、PFOS及びPFOAを含むPFASの含量分析による摂取量推定を実施した。
■調査結果によると、PFOSの平均一日摂取量はTDIの1.1~26%、PFOAはTDIの0.13~6.6%の範囲であった。
1-4. 食品中の汚染物質に係る規格基準設定
1-4-1. 基本方針
食品中の汚染物質の規格基準設定にあたっては、コーデックス規格(国際食品規格)が定められている食品については、これを採用することを基本としている。ただし、国内の汚染実態や食品摂取量を踏まえて採用が困難な場合は、汚染物質の低減対策を要請し、ALARAの原則(As Low As Reasonably Achievable:合理的に達成可能な範囲でできる限り低くする)に基づいて基準値やガイドライン値を設定することがある。また、直ちに規格基準の設定が必要でないと判断される場合でも、将来にわたって見直しの検討を行うこととされている。
1-4-2. 今後の対応の方向性
食品中のPFASに関する規格基準設定の方向性については、農林水産省の調査で確認されたばく露量が耐容一日摂取量(TDI)を十分に下回るため、現時点では直ちに新たな規格基準を設ける必要はないと考えられている。しかし、この判断は食品全体の消費量の約3割にあたる14品目のみの調査結果に基づくものである。そのため、今後の基準策定に向け、農林水産省は以下の方針で調査を継続する。
◆令和7年度も引き続き品目を拡大しながら実態調査を継続する。
◆特に高い値が検出された品目について、さらに実態把握と要因調査を実施する。
これらの追加調査の結果を待って、改めて基準策定に関する議論を進める必要があるという方向性が示されている。
2. プベルル酸に関する調査状況の進捗について
2-1. 紅麹関連製品に係る事案を受けた機能性表示食品制度等に関する今後の対応
今回の事案を踏まえた当面の対応として、食品衛生法上の措置の対象となる製品の特定と健康被害の原因究明が行われた。回収命令の対象となった3製品を除いて、同じ原材料を使用した製品について各企業に自主点検を依頼した結果、食品衛生法第6条第2号に該当しないことが確認された。また、健康被害の原因究明として、多くの健康被害が報告された製品の原料ロットに、プベルル酸のほか2つの化合物が含まれることが判明している。さらに、今回の事案を踏まえた今後の対応として、以下の措置が検討されている。
◆健康被害の情報提供の義務化:機能性表示食品の届出者に対し、健康被害と疑われる情報を把握した場合、因果関係が不明であっても速やかに消費者庁長官等へ情報提供を義務付ける。これにより、違反した場合は食品衛生法に基づいて営業の禁止・停止などの行政措置が可能となる。
◆機能性表示食品制度の信頼性向上:製造工程管理による製品の品質確保を目的として、GMP(適正製造規範)に基づく製造管理を届出者の遵守事項とすることが検討されている。また、新規成分の安全性に関する専門家の意見を聴く仕組みの導入や、届出後の定期的な自己評価・公表を要件化するなどの措置も進められている。
◆その他の取り組み:情報提供のDX化や消費者教育の強化、国と地方の役割分担の明確化も進められている。特に緊急性の高い事案については、都道府県と連携しつつ、必要に応じて国が対応することとされている。
2-2. 小林製薬社製の紅麹を含む食品の事案に係る取組について
厚生労働省は、健康被害の原因究明のため、以下の取り組みを実施したと公表している。
■原因物質の特定:健康被害が報告された製品ロットから、プベルル酸および化合物Y(C28H42O8)、化合物Z(C23H34O7)の3つの物質が検出された。
■発生機構の究明:工場内に存在した青カビ(Penicillium adametzioides)が、培養段階で混入し、コメ培地を栄養源にプベルル酸を産生したと推定された。また、この青カビが紅麹菌との共培養により、モナコリンKを修飾し、化合物Y、Zが生成されたと推定されている。
■腎毒性の検証:ラットを用いた7日間反復投与試験において、プベルル酸の単独投与により近位尿細管の変性・壊死など腎毒性が確認された。一方、化合物Y、Zの単独投与では腎毒性は認められなかった。
2-3. 原因物質について
2-3-1. 化学的特性、毒性ならびに暴露量に関する調査
原因物質として特定されたプベルル酸は、動物実験(ラット)で腎臓および胃への毒性所見が確認されている。遺伝毒性については、細菌を用いるAmes試験では陽性だったものの、マウスを用いるTGR試験では陰性であったため、総合的に陰性と判定された。化合物YおよびZは、モナコリンKと基本骨格が類似しており、いずれも現時点で既知の天然化合物ではないと推定されている。
2-3-2. プベルル酸産生菌の分布実態調査
令和6年度に食品製造環境等でのプベルル酸産生菌(Penicillium属)の分布実態調査が実施された。消費者庁食品衛生基準審査課と国立医薬品食品衛生研究所が主体となり、合計428株のPenicillium属菌株を収集・試験した結果、5株(1.2%)からプベルル酸が検出された。これらの菌株は、検査会社、食品関連メーカー、および国内の菌株分譲機関から提供されたものであった。この調査結果から、プベルル酸産生性の菌株は、特殊な系統の菌株が特定の業種において存在している可能性が示唆された。
2-3-3. 令和6年度および7年度の調査
令和6年度の調査では、プベルル酸産生性の菌株がどのような環境に存在しやすいかを検討することは困難であった。そのため、令和7年度は引き続き、プベルル酸産生菌の分布や産生条件等を検討するため、業種を絞った調査を実施する予定である。調査対象の候補としては、以下のようなものが挙げられている。
◆プベルル酸産生菌であるP. adametzioidesが、果実の腐敗菌であることから、ジュースやドライフルーツなどの果実加工品。
◆Penicillium属菌を使用して産生される、ブルーチーズやカマンベールチーズなどの食品。
◆培養、濃縮などの工程を経て産生されるサプリメント。
2-4. 今後の対応の方向性について
プベルル酸が腎障害を引き起こすことが確認されたことから、厚生労働大臣は食品衛生法第72条第3項に基づき、食品中のプベルル酸の規格基準の策定検討を内閣総理大臣に求めている。規格基準の策定には、ばく露量と毒性についてのさらなる調査が必要である。
今後の対応の方向性として、まずプベルル酸産生菌が存在し、プベルル酸が産生される可能性の高い業種に絞った調査を実施する予定である。また、毒性試験としては、遺伝毒性試験の一環として、染色体異常試験を実施する予定である。これらのさらなる調査結果および試験結果が得られ次第、改めて食品衛生基準審議会において議論を行うこととされている。
<まとめ>
本審議会では、食品中のPFAS(有機フッ素化合物)とプベルル酸という2つの重要な議題について、これまでの調査結果と今後の対応方針が報告されました。
食品に含まれるPFASについては、これまでの農林水産省や厚生労働省による調査で、その摂取量が安全性の指標である耐容一日摂取量(TDI)を大きく下回っていることが確認されています。このため、現時点では直ちに規格基準を設ける必要はないとの見解が示されました。しかし、今回の調査は限定的な品目に留まっているため、今後も対象品目を拡大した実態調査を継続し、その結果をもとに改めて基準の必要性を議論していく方針です。
また、紅麹関連製品の健康被害に関連して、原因物質の一つであるプベルル酸の調査状況についても報告されました。動物実験ではプベルル酸に腎毒性が確認されており、これを産生する青カビの食品製造環境における分布実態調査も進められています。今後の展望として、プベルル酸についてもさらに詳細な毒性試験や、特定の業種に絞った産生菌の分布調査を継続することが決まっています。これらの追加調査の結果が得られ次第、食品中のプベルル酸に対する規格基準策定の議論を本格的に進めていくことになります。このように、国民の食の安全を確保するため、科学的根拠に基づいた継続的な調査と段階的な対応が重視されています。
詳細は<一次情報>からご確認ください。
<配布資料>
議事次第
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fssc_cms204_250903_01.pdf
委員名簿
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fssc_cms204_250903_02.pdf
【資料1】食品中のPFASに係る今後の対応について
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fssc_cms204_250903_03.pdf
【資料2】プベルル酸に関する調査状況の進捗について
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fssc_cms204_250903_04.pdf
【参考資料1】(農林水産省)令和6年度国産畜産水産物に含まれる有機フッ素化合物(PFAS)の実態調査や試験研究の結果について
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fssc_cms204_250903_05.pdf
【参考資料2-1】食品衛生法第72条第3項に基づく内閣総理大臣への求め
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fssc_cms204_250903_06.pdf
【参考資料2-2】令和6年度厚生労働行政推進調査事業費補助金研究報告書「原因物質と推定されるプベルル酸等の毒性に関する研究」1
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fssc_cms204_250903_07.pdf
【参考資料2-3】令和6年度厚生労働行政推進調査事業費補助金研究報告書「原因物質と推定されるプベルル酸等の毒性に関する研究」2
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fssc_cms204_250903_08.pdf
<一次情報>
令和7年度第1回食品衛生基準審議会食品規格・乳肉水産・伝達性海綿状脳症対策部会(2025年9月4日)
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/review_meeting_006/043321.html
令和7年度第1回食品衛生基準審議会食品規格・乳肉水産・伝達性海綿状脳症対策部会の開催について
https://www.caa.go.jp/notice/entry/043323/
<関連情報>
