広島旅、呉編2日目ー旅ノートとリュックと一緒に旅に出たー
プロローグ
戦争を経験したはずの祖父は、自らの体験を語らぬまま、天に旅立った。
遺品の中から唐突に見つけた「呉海軍工廠」の文字。
祖父も関わったかもしれない戦艦大和のふるさと「呉」へ、私は訪れたー。
ホテルの朝
潜水艦ホテルのベッドは驚くほど快適で、昨日の疲れがすっかり癒してくれました。かすかに港の音が聞こえてきます。ここは確かに「海の街・呉」なのだと、まだ眠気の残る頭で実感しました。
朝食は、昨日のうちに買っておいた小麦屋さんのパン。自動販売機でも売られているそのパンは、24時間稼働なのに売り切れることもあるほどの人気だそうです。袋を開けた瞬間に広がる焼き立ての甘い香りに、思わず笑みがこぼれました。地元の人に愛される味を朝一番にいただけるなんて、旅人にとっては幸せなこと。胃袋だけでなく、心まで満たされていきます。
荷物をまとめ、お礼の手紙をそっと残してチェックアウト。海風を感じながら、胸の奥で「さあ行こう」と呟きました。祖父に少しでも近づける旅になるように、と。

大和ミュージアムサテライト
ホテルのそばにある橋を渡ると、すぐに「戦艦大和の主錨」が視界に飛び込んできました。存在感のある鉄の塊は、まるで大地に根を下ろした巨木のように動じません。その重みを目にした瞬間、祖父が見たであろう光景と、いまの自分が繋がったような感覚に胸が熱くなりました。
橋を戻り、川沿いを歩いて10分足らず。潮の香りを含んだ風が頬を撫で、心臓の鼓動が少しずつ速まっていきます。「もうすぐだ…」と。
そして、午前9時の開館と同時に、大和ミュージアムサテライトの扉をくぐりました。
入ってすぐに飛び込んできたのは、200分の1の戦艦大和の模型。模型とわかっていても、その大きさと迫力に息を呑みました。
砲塔や艦橋まで細密に作られた姿に、「祖父もこの巨艦の一部を見ていたのだろうか」と思うと、心が震えます。
奥には零式観測機の実物大模型。タラップを上がってコクピットを覗き込むと、人ひとりがやっと収まるほどの狭さ。
計器類の復元は驚くほど精緻で、そこに座ったパイロットがどんな気持ちで空を見上げていたのかを想像すると、胸がざわめきました。

着水するフロートがついてます。
資料室との出会い
展示を見終えたあと、学芸員の方に祖父のことを少し話しました。
どこに配属されていたのか、どんな仕事をしていたのか、何ひとつ分からないまま呉を訪ねてきたこと。私の拙い言葉を領きながら受け止めてくださる姿に、安堵と同時に「この場所に来てよかった」という思いが込み上げます。
出口に向かおうとしたとき、学芸員の 方が私を呼び止めました。
「この建物の2階に資料室がありますよ。呉海軍工廠の記録が残っているので、よかったらぜひご覧ください。」
案内に導かれ、階段を上がると静かな資料室が広がっていました。
机の上には、すでに数冊の分厚い資料がページを開かれたまま並べられています。
「どうぞご覧ください」との言葉ととも に。
手に取った資料には戦時中の工員の動員人数の推移、当時の街の様子、さらに給料の記録まで細かく残されていました。白黒の写真に映る工員たちの表情は硬く、けれどどこか誇りを宿しているように見えます。
ページをめくるたびに、工場の騒音や油の匂いが立ち上ってくるようで、祖父もこの中のどこかに立っていたのではないかと胸が熱くなりました。
予定の時間をすっかり過ぎてしまったことに気づき、名残惜しくも席を立とうとしたその時、再び声をかけられました。
「呉海軍工廠に来られた工員さんは、技術者として選ばれた方だったんですよ。おじい様は優秀な方だったんですね。」
その言葉は、不意に胸の奥深くに届きました。
ずっと知りたくても知り得なかった祖父の姿が、ようやく肯定されたような気がして。
曖昧な記憶の影が、少しだけ光を帯びた気がして。
誇らしさと、長い間探していた答えにたどり着いた安堵とで、目頭が熱くなり、涙を堪えることができませんでした。
折り鶴のその後
サテライトを出てすぐの土産コーナーで、ひときわ心を惹かれるものを見つけました。平和記念公園に奉納された折り鶴を再生紙にして作ったメモ帳です。
手のひらに収まるその小さな紙束に、どれほどの祈りが込められているのだろうと想像しました。
年間に1000万羽、重さにして10トンにもなる折り鶴が広島に届くといいます。そのひとつひとつに、誰かの平和を願う気持ちが宿っている。その思いは一度ガラスケースに飾られ、やがて再生され、名刺やアクセサリーとなって再び人の手に渡る。
命のように受け継がれていく祈りの循環。その静かな力強さに胸を打たれました。
祖父が過ごした時代は、平和など夢のまた夢だったかもしれません。けれどいま、折り鶴の祈りがこうして形を変えて生き続けている。
そのことに、未来への希望を託したくなる自分がいました。

戦艦大和のイラスト入り

書かれています。
ご当地ポストとの出会い
サテライトを出て、大和ミュージアムに向かいます。10分ほど歩いて駅前の歩道橋を上りすぐに下りると、目の前に海の色をした青いポストが現れました。その姿は、街に溶け込みながらもどこか愛らしくて、思わず立ち止まってしまいます。
それは「また来て呉市」くんという呉のキャラクター。名前の響きに思わず笑みがこぼれました。「また来て」と言われた気がして、ほんのひととき、この街に受け入れられたような温かさを覚えました。旅先でのこうした小さな出会いこそが、心に残る宝物になるのかもしれません。

いま、工事の壁で目立たなくなっています。
大和ミュージアム(改装中の外展示)
改装中の大和ミュージアム。外からでも見られる展示があると聞き、足を運びました。
建物の前に並んでいたのは「戦艦陸奥」の錨や41センチ主砲身。巨大な鉄塊が静かに横たわる姿に、ただ圧倒されるばかりでした。
かつては海の底に沈んでいたものが、いまはこうして人々の目の前にある。その存在感は、歴史が決して過去のものではないことを教えてくれます。
さらに進むと、ガラス越しに見える「10分の1戦艦大和」。撮影禁止のため目に焼きけてました。主に鉄製でできた艦体に光が反射して、まるで今にも動き出しそうでした。「祖父もこれを見上げていたのだろうか」と想像するだけで胸が震えます。
外展示の最後に現れたのは、旧呉海軍工廠の巨大な旋盤。戦艦大和の主砲身を削ったとされるその機械は、全長16メートル。鉄の塊であるはずなのに、不思議と温もりを感じました。それは人の手と技術が、何年も何年も触れ続けてきた証だからかもしれません。
平成の時代まで稼働していたと聞いて、改めて「呉」という街が背負ってきた時間の厚みを思いました。
ミュージアムの建物は壁で囲われていましたが、その外側だけでも心を揺さぶる出会いがありました。
大和ミュージアムは2026年3月にリニューアルオープン予定です。「また必ず来よう」。そう静かに心に誓いました。

鉄のくじら館
大和ミュージアムを出た先に、すぐその姿は現れました。
街の真ん中に突如として現れる、巨大な潜水艦。その赤と黒の船体は、瀬戸内の青空を背景に、まるで海から抜け出してきたかのように横たわっていました。
目の前の光景に思わず息を呑みます。
戦艦の町・呉を象徴するもうひとつの顔が、そこにありました。
館内に入って最初に目に飛び込んできたのは、「海の掃除」と呼ばれる展示でした。
戦争が終わっても、海には数え切れないほどの機雷が残されていました。見えない海の底にひっそりと潜み、いつ爆発してもおかしくない危険な存在。それらを取り除くために、自衛隊員たちは命がけで作業を続けてきたのだと、初めて知りました。
展示室に並ぶ資料や映像の前で立ち止まると、胸が熱くなりました。戦いのためではなく、平和を続けるための活動。人々の暮らしや航路を守るために、誰にも知られない場所で黙々と働く姿。
その事実を目の当たりにして、「戦後もなお、平和を作り続けてきた人たちがいるんだ」と強く心に刻まれました。
次の展示では、潜水艦の仕組みや役割が紹介されています。大きなボディに隠された技術の数々、そして「抑止力」としての存在。
けれど、ここ呉の潜水艦からは「戦うため」よりもむしろ「守るため」の印象が強く伝わってきました。
戦艦大和が力を誇示する象徴だったのに対し、ここにある潜水艦は、目に見えない場所で静かに海を守る存在。その対比が心に深く残りました。
そして、いよいよ実物の潜水艦の内部へ。
小さなハッチをくぐった瞬間、空気が変わります。狭い通路にびっしり並んだ計器。肩をすぼめて歩かなければ進めないほどの圧迫感。奥へ進むと三段ベッドが並び、ひとつひとつはまるで箱のように小さく見えました。「ここで長い任務を過ごすのか…」と思うと、想像を超えた緊張感に胸が詰まります。
静まり返った艦内に立っていると、聞こえるのは自分の呼吸音だけ。まるで時間が止まったような空間で、人知れず任務にあたってきた隊員たちの姿を想像し、言葉を失いました。
館を出ると、目の前に広がるのは穏やかな瀬戸内の海。
波は穏やかに光を反射し、街には子どもたちの笑い声が響いています。その平和な日常の裏で、誰かが「海の掃除」をし、誰かが潜水艦に乗り込み、見えないところで海を守り続けている。
私はしばらく海を見つめながら、祖父の顔を思い浮かべました。
「おじいちゃん、呉の平和はいま、こうやって守られてるよ」――そう心の中で語りかけると、潮風がやさしく頬を撫でてくれました。

寝返りをうつのも一苦労。
呉のグルメといえば!その2
昨日のお好み焼きに引き続き、呉のグルメを頂きに。この後大移動をするので、近場を探します。
呉駅そばのショッピングモール「ゆめタウン」の中にあるリンガーハットでは、呉店のみで「呉冷麺」があると聞きつけ、行ってみました。平日だったため、フードコートは人が少なく、注文からあまり待たされることなく出てきました。
コシのあるしっかり麺にたっぷり野菜とエビワンタン、ゆで卵、豚肉が乗せてあり、甘辛さに酸味を合わせたタレがかかっていました。とてもさっぱりしていて、美味しく頂きました。

エピローグ
呉の街で出会った光景、祖父の足跡、折り鶴の祈り、潜水艦の静かな存在。
戦争の遺産に触れ、平和を願う祈りに出会い、そして今も海を守り続ける人々を知った旅。
今回の大きな目的は果たした。けれど、まっすぐ帰る私ではない。地元に戻る途中、福山や岡山のお城や寺社仏閣へと寄り道していくつもりだ。
この旅はまだ終わらない。いや、むしろここから新たな章が始まろうとしている。
あとがき的なご案内
祖父の足跡を追いかけた旅は、ひとまず終わりました。
これまでの道のりも、よければのぞいてみてください
🚉 広島エリア
旅のメモ(呉編2日目)
※ここからは、私の実際の行程と費用をまとめています(有料部分)
最後に今回の旅ノートを作るときに参考にしたサイトを貼っておきます。
旅の計画や電車の時刻表チェックにどうぞ✍️
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