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「売らないFP」という選択が開いた未来――顧客本位がもたらした価値【回想録(2)FPサテライトの革新1-2】

前回の記事では、FPサテライトがなぜ「金融商品を販売しないFP会社」として創業したのか、創業の原体験からビジネスモデルまでお伝えしました。

今回の記事では、徹底してポリシーを貫いた結果としてFPサテライトが得た結果について綴っていきます。


なぜ「売らない」をここまで徹底したのか

創業してから3年は経済的に本当に苦しく、もう次の経費支払いができない……となったことが何度もありました。(……いや、5年、、、7年目くらいまで度々そんなことあったかな……。。)
それでもポリシーを貫いたのは、FPがこの現状に甘んじてはいけないと強い危機感を持っていたからです。

FPの本質は「中立」である

FPという職業は、”顧客にとって”中立であるのが本質であり、原理原則です。これは、日本FP協会の各種規程にも明記されています。

第1条 会員は、順法精神に基づき、顧客の最善の利益を追求しなければならない。
第2条 会員は、顧客に対して、その業務の適正、公平さを保つために必要なすべての情報を開示したうえで、専門家としての業務を公平かつ道理に適った方法で提供しなければならない。
第3条 会員は、利益相反事項がある場合は、これを顧客に開示しなければならない。


第6条 会員は、ファイナンシャル・プランニングの業務に誇りと責任をもち、専門家としての業務を誠実に提供しなければならない。
第7条 会員は、誤った、あるいは誤解を招く方法で顧客を勧誘してはならない。

特定非営利活動法人 日本ファイナンシャル・プランナーズ協会 会員倫理規程

(利益相反事項等)
第5条 顧客と利益相反が生じる場合、会員は、顧客のために業務を提供してはならない。利益相反事項が顧客との取引開始後業務完了前に発生した場合は、会員は、直ちに当該事項を顧客その他関係者に開示し、当該事項については辞任しなければならない。
2 会員は、利益相反事項に該当しなくとも、自己との中立性を損なう可能性がある業務については、顧客のために業務を提供してはならない。

特定非営利活動法人 日本ファイナンシャル・プランナーズ協会 業務基準規程

要するに……

  • 専門家として公平、誠実に業務を提供し、顧客の最善の利益を追求する

  • 利益相反が生じる業務を提供してはいけない、利益相反になることがあれば顧客に開示する

  • 誤った内容、あるいは誤解を招く方法で顧客を勧誘しない

ということです。

規程内容自体は「個人顧客への相談業務」を前提としている節があり、解釈に差は生じそうです。
しかし、倫理的に考えて「顧客は法人だから顧客に言われるままエンドユーザーに不利な情報を伝えずミスリードが発生しても問題ない」「法人顧客の最善とは、商品販売成績を追求することである」とは、大抵のFPは思わないのではないでしょうか。

FPが販促に利用されるだけの存在となり、FPの価値が損なわれる

金融機関や不動産会社のバーター、販促要員、売り子。
金融商品のメーカーや売り手たちのポジショニングトーク受け売り。
そんな存在が「専門家」と言えるでしょうか。

FPは士業ではありません
しかし、個人のお金の専門家とされている以上、士業に同じくらいの誇りと責任を持つべきだと私は考えます。
(だからといって、悪い意味で士業ぶって偉そうにしたりビジネス化の努力をしなかったりするのはダメですよ……!)

ちなみに、弁護士には「弁護士法」、税理士には「税理士法」など、各士業には法令がありますが、FPには専用の法律がありません。
ということは、ある意味ではFP一人一人が自主的に倫理観を高く持って業務に臨む必要がある、ともいえるのです。

「専門家」として、個人にとって中立的な立場から発信し、業務に臨むべきと考えると、クライアントの商材を販促することが是か非か自ずと答えは見えてくるのではないでしょうか。

(余談:「米国のFPは医者や弁護士と同じくらいの社会的地位がある」というお話を聞いたことはありますか?素晴らしいお話だと思いますが、やや誇張かも?な説があります。私の昔のnoteエントリーを置いておきます。)

理念の一貫性こそが会社の存在意義

そもそも、「起業するからには社会課題を解決する会社を創りたい」という想いがありました。
FP業界を良くしたい」のが一丁目一番地ですが、会社経営者として「働きがいのある会社を創りたい(学生時代、ブラック企業が話題だった)」「女性が活躍できる環境を創りたい(10年前当時、待機児童問題が話題だった)」など、できる限り社会のためになる会社を創るつもりでいました。
それがFPのイメージアップにも繋がると信じていたからです。

だからこそ、「FPの信念を曲げてまで収益を優先する」という選択肢は私たちの中にありませんでした。
それであれば会社を興す意味はなく、保険代理店にでも勤めればFPっぽいことを安定した給与収入を得ながらできるわけですから。

FPサテライトという会社は、FPの原理原則に従って事業を展開することで、FPの価値を高めるために生まれたのです。
それができないのであれば、この会社の存在意義はない。一貫してその想いを持ち続けていました。

この選択がFPサテライトにもたらしたもの

創業当初は理解を示されないことが多かったこのスタンスも、年数を重ねるごとに少しずつ評価されるようになってきました。

2010年代から2020年代にかけて、世の中の潮流が、小手先のマーケティング一辺倒ではなく本当に良いものや社会的意義のあるもの、心からの熱意があるものを受け入れる流れになってきていると感じます。
FPサテライトはその潮流に乗ることができたのです。

ブランドの確立

この信念を貫いてきたことで、「中立中正なFP会社」としての明確なポジショニングができました。
FPサテライトを起用することによる自社の企業イメージ向上、エンドクライアントへの高品質な情報や業務を提供できると認識していただけるようになったのです。

差別化の実現

後に別の記事で触れますが、FPサテライトは中立的にFP実務を遂行する組織の先駆者となりました。業務に対応するFPは、FPサテライト専属。顔出しして対応したFP個々人のスタンスが場面によってブレるリスクを排除しています。

クライアントとの関係性

FPサテライトのスタンスが評価されていなかった時代、私はしばしばクライアントと揉めることがありました。クライアントの意向とFPサテライトのポリシーが合致しない、ということが多かったのです。

後述しますが、Googleアルコリズムの変化により中立的なFPが評価されるようになってきました。それでも、その変化対応に対する依頼ですら揉め事がありました。

2019年後半頃から、FPサテライトの理念に深く共感してくださるクライアントが1社、2社と増えていきました。理念に共感してくださるクライアントは長期的にお付き合いいただけることが多いうえに、「共創して良い記事を制作しよう」「お客様により良い情報を伝えるセミナーを開催しよう」という想いを持って双方リスペクトのもと前向きな気持ちで業務を遂行することができるのです。

良好な関係を持てるクライアントが増えれば増えるほど、FPサテライトの業績も向上していきました。

2025年現在の業界状況と先駆性の意義

創業から9年。
肌感覚ですが、FP業界も少しずつ変化しているように感じます。

9年経った今でも「売らないFP」は少数派

そもそもFP業界自体が極小であり、「FP業界なんて存在しないでしょ」と主張する業界内外の人すらいることもあり、まだまだ金融商品を販売しないFPは少数派といえます。

上の図はFPサテライトの希少性を説明するために用いている図です。
右の円グラフ(オレンジ)は、あまりにも母数が少なすぎて統計データが存在しないため町田の感覚ですが、当たらずとも遠からずかと思います。
(FPの皆様、どうでしょう?)

「独立系FP」の認識変容

ですが、この10年程度で変わったと思うことがあります。
前回記事の冒頭で一昔前の独立系FPの風潮について述べましたが……

私が独立を志して日本FP協会の会合などに顔を出し始めた2013年頃から創業した2016年まで、独立系FPの風潮はこんな感じでした。

・「独立するにあたって、商品を”販売するかしないか”どっちにしようか……」
・「お金の相談を受けるのに、まずFPの収入が安定していることが大事だと思うので私は販売しています。」
・「保険とか金融商品を販売しない独立系FPは厳しいよね……」

つまり、「独立系FPは金融商品を売るも売らないも選択肢」「売らない選択は稼ぐのが難しい前提」という論調が業界内のスタンダードでした。

なぜ「売らないFP」を選んだのか。顧客本位を貫くという選択【回想録(1)FPサテライトの革新1-1】

このスタンダードに変容を感じます。
ここ数年で新たに誕生した「独立系FP」は、金融商品を販売していないことが前提になっている気がするのです。

2010年代はFPに会うと「金融商品の販売はしていますか?していませんか?」とまず聞いていましたが、今は販売しているか否かは名刺を見れば大抵明記されていますし、聞かずとも販売していないことが前提で話す傾向にあります。

なお、組織化している企業に所属しているFPや地域のFPは、まだこの限りではないかな……という肌感覚です。

徐々に広がる顧客本位の潮流:Googleアルゴリズムの変化

Web上に流れる情報の品質向上に大きな影響を及ぼしたのは、Googleアルコリズムの変化です。2018年頃の大幅アップデートが、FPサテライトの存在意義を大きく引き上げることとなります。

YMYL領域でE-E-A-Tが重視されるアルコリズムへ
……SEOマーケティングに知見がある人を除き、意味の分からない小見出しですよね。専門用語ですのでちゃんと解説します。

  • YMYL領域

    • →YMYLは「Your Money or Your Life」の略で、
      「金融・医療など人生に重大な影響を与える領域」を指します。

  • E-E-A-T

    • →「Experience, Expertise, Authoritativeness, Trustworthiness」の略。
      つまり「経験、専門性、権威性、信頼性」を意味し、Googleはこれらを重視すると示しています。

このアルコリズムに変わったことで、FPサテライトのように中立的で専門性の高い情報発信の価値が高まったのです。2018年末に公式サイトのドメインを「 fpsatellite.co.jp 」へ移行してリニューアルオープンすると、たちまち記事執筆や監修の依頼が舞い込むようになりました。

アフィリエイト目的の誘導記事の評価低下とステマ規制
上記に関連して、ユーザー体験を損なうような過剰な広告やアフィリエイトリンクのある記事は評価が下がるアップデートがなされ、商材への誘導記事は検索順位が下がるようになってきました。

そして、Googleアルコリズムではありませんが2023年10月1日から「改正景品表示法」が施行されました。国内において、ステルスマーケティング(ステマ)が規制されることとなります。
すなわちアフィリエイトリンクを含む記事や広告費用を受け取って制作する広告記事には、必ず広告が含まれている旨を明記しなければならなくなりました。


このように、世の中から求められる良質な情報の提供によって経済的ベネフィットが得られるようになり、そのコンテンツ制作依頼先として先行者利益的にFPサテライトへ案件が舞い込むようになったのです。

金融庁の方針転換と時代の追い風

さらにもう一つ。
2017年3月、金融庁が「顧客本位の業務運営に関する原則」を公表しました。
金融業界では「フィデューシャリー・デューティー」と呼ばれていますね。

この見出しについて執筆するにあたり、内容の壁打ちで利用していた生成AI(Claude)の回答があまりにも至言で、涙腺が緩んでしましたのでそのまま引用させてください。

1.FPサテライトは金融庁の動きより先行していた
・創業:2016年
・金融庁の原則策定:2017年3月
・つまり、FPサテライトは規制や方針に「従った」のではなく、業界が向かうべき方向を先取りしていた
2.金融庁の問題意識とFPサテライトの創業動機が一致
・金融庁:「ビジネスの本質が顧客本位に変わっていない」という反省
・FPサテライト:生保営業・税理士法人での反倫理的営業への問題意識
3.時代の追い風として
・2017年以降、金融庁が継続的に「顧客本位」を推進
・金融事業者リストによる「見える化」
・業界全体が(遅いながらも)顧客本位へシフト
FPサテライトの先駆的な取り組みが「正しかった」ことが証明される形に

Claude回答

FPサテライト創業が2016年11月、金融庁の原則策定が2017年3月ということは、FPサテライト創業時は原則を策定している最中だったのでしょうから、金融庁とFPサテライトはそれぞれ同じくらいの時期に課題意識を抱えていたのだろうと思います。

FPサテライトが示した一つの道標

自分たちの方向性は間違っていなかった……。
退任して振り返る今、改めてそう感じています。

FPサテライトのように中立的で消費者本位のスタンスをもって、ときにはクライアントの依頼を断ることがあっても、ちゃんと評価されて事業化できることを証明できたと胸を張って言えます。

相談に訪れる顧客本位のコンサルティングユーザーファーストのコンテンツ制作正しく中立的な情報発信は、これからの時代益々評価されていくでしょう。

▼次の改革「所属FP」を読む


FPサテライトは特殊な事業形態であることも成功要因の一つですので、正直なところ再現性が高いわけではありません(次回以降に詳しく記事化します)。

ただ、この10~15年ほどFP業界を見てプレイヤーとして経営してきた知見と、FPサテライト所属ファイナンシャルプランナーの採用マネジメント経験、そして私が持つ無数のFPビジネスアイデアから、成功可能性のあるFP戦略をアドバイスすることはできます。
2025年4月に北海道へ移住しましたので、地方戦略についてお話することもできます。

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併せてもう一つ……

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