部分痩せは狙ってできる説
〖プロローグ〗
お腹だけ細くしたい。
二の腕だけ落としたい。
これは自然な願いだ。
だから腹筋や脚トレをすると、その部位の脂肪も優先的に減ると考えたくなる。
だが、体脂肪の減り方は意外と素直ではない。
鍛えた部位がそのまま痩せる、とは言い切れない。
〖結論〗
この説は概ね間違いである。
特定部位を鍛えることで、その場所の筋肉は発達しうる。
しかし、その部位の脂肪だけが狙って大きく減るとする証拠は弱い。
体脂肪の減少は、基本的に全身のエネルギー収支と個人差の影響を強く受ける。
〖エビデンス〗
腹筋運動を集中的に行っても、腹筋の機能は向上しうるが、腹部脂肪や腹囲が特異的に大きく減るとは言いにくい。
また、片側や片脚だけを鍛える研究でも、鍛えた側だけ脂肪がはっきり減るとは限らなかった。
局所運動で血流や筋活動は上がるが、それが見た目で分かるほどの局所脂肪減少に直結する証拠は一貫していない。
一方で、筋肉がつくことで輪郭が変わり、引き締まって見えることはある。
〖研究から分かること〗
ここで分けるべきなのは「脂肪が減る」と「見た目が変わる」である。
部分痩せは起こりにくいが、部分的に鍛えてラインを整えることはできる。
この二つを混ぜると、腹筋を頑張っているのにお腹が変わらない、と無駄に落ち込みやすい。
〖なぜこの説が広まったのか〗
局所トレーニングは分かりやすく売りやすい。
お腹用、脚用、二の腕用と商品化もしやすい。
さらに、筋肉の張りで見た目が少し変わると、脂肪が落ちたようにも感じる。
体感としてはもっともらしいので定着しやすい。
〖制御ダイエット理論視点〗
脂肪を落とす操作は全身の収支管理で行い、見た目を整える操作は部位トレで行う。
この役割分担で考えると混乱しにくい。
減量と造形を別ルートで管理したほうが、期待と結果が一致しやすい。
〖まとめ〗
特定部位の運動で、その場所の脂肪だけを狙って大きく減らすのは難しい。
ただし部位トレーニングで筋肉の形を変え、引き締まって見せることはできる。
脂肪減少は全身管理、見た目作りは部位設計と分けて考えるのが合理的である。
〖参考文献〗
Katch FI, Clarkson PM, Kroll W, McBride T, Wilcox A. Effects of sit up exercise training on adipose cell size and adiposity. Research Quarterly for Exercise and Sport. 1984;55(3):242-247.
Vispute SS, Smith JD, LeCheminant JD, Hurley KS. The effect of abdominal exercise on abdominal fat. Journal of Strength and Conditioning Research. 2011;25(9):2559-2564.
Ramírez-Campillo R, Andrade DC, Campos-Jara C, et al. Regional fat changes induced by localized muscle endurance resistance training. Journal of Strength and Conditioning Research. 2013;27(8):2219-2224.
Ramirez-Campillo R, Andrade DC, Clemente FM, et al. A proposed model to test the hypothesis of exercise-induced localized fat reduction (spot reduction), including a systematic review with meta-analysis. Human Movement. 2022;23(3):1-14.
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このシリーズは、 知識を単発で増やすためだけのものではない。
減量を"思いつき"ではなく"構造"として捉えるために書いている。
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