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僕と娘と覚醒剤 #008 | 母と娘の関係②

「あの子は宇宙人。なにを考えてるかわからない」


元妻が娘の不祥事を嘆くとき、必ず使う言葉だ。

僕からすれば、娘も元妻も、なんかだかどっちも宇宙人みたいなもんなんだけど、それを口に出すほどバカではないので、ほむほむ…そうなの~大変ねぇ~、と、電話で話を聞いている。

ぶっちゃけ言うと、元妻から話を聞いていても、僕は娘に共感してしまうことが多いのだけれども…そんなことは口が裂けたって言えないよね。



娘の母親に対する感情は不安定で、「ママうざい死ね」と言っていたかと思うと、「本当は大好き、だけどムカつく」みたいな曖昧な表現になったり、「ママに謝らなきゃ」と、急にしおらしくなったりする(でも謝りはしない)。

たぶん全て本心なのだろう。娘はコロコロ変わっていく自分の感情をコントロールできないのだ。感情の揺れ幅が大きすぎて自分でも戸惑っているのが良く解るから、僕はいちいち相手にしないのだが、元妻はそれに細かく反応してしまう。

そして元妻は激しく上下する娘の感情に付き合って、自分の感情までジェットコースターのように猛スピードで上下させて、結果、疲れ果ててしまうのである。

「なんでいちいち反応するかなぁ…」

「だって、ちゃんとBBに向き合ってあげないと…」


なんというか、足を怪我した人が可哀想だから、自分の足も傷つける、みたいな行為だ。僕はそんなことしたってなんにも解決しないから、親はどっしりと構えていたほうが良いと思うのだけど、どうも元妻はそうではないらしい。

それでもしつこく同じことを指摘すると、


「どうせあなたはBBと10年くらいしか一緒にいなかったじゃない。誰が育てたと思ってんの!?」


と、こうくるのだ。

はい、仰る通り。1ミリも異論はございません…

元妻が少しでもラクになるように、思ったことを言っただけなのに…

やっぱりどっちも宇宙人だ。



と、こんな感じでも、元妻にはすごく感謝している。

まぁ、ひとりで育ててくれたんだから当然だけど、それよりもなによりも、元妻は子供に僕の悪口をひとことも言っていないのだ。

「あなたのことじゃなくて、子供のことを考えた」


と、元妻は言う。

子供が父親を嫌いになったら可哀想だ、と、そういうことらしい。

ありがとうありがとう…本当に感謝しています。

そのおかげなのか、娘と僕の関係は、まぁ良好、なのだが、なぜか母親との関係が不安定になっている。

なんとも、むずかしいものだ。



「パパは昔のイケメンだから、ママじゃない女とかいたんでしょ」


元妻は離婚した理由や、僕への悪口を言わなかったけど、娘はそこらへんを正確に察して指摘してくる。しかしなんだよ『昔のイケメン』て…


「今のイケメンではないっしょ。おじさんだし」


うん。まぁなんでもいいけど…パパとママのことはどうでもいいから、お前とママはもっと仲良くできないの?と聞いてみる。保釈1日目に電話で話してモメてから1週間程の時間が経っていた。

「えー、仲いいじゃん。ママのこと超好きだし」


うーん…これは本当じゃないな。なんだかこの話題を避けたい雰囲気を娘から感じる。娘がおおげさな表現を使うときは大抵言葉にウソが混ざる。

『超好き』なんて単語、普段使わないだろ…

と、これ以上、深追いすると、次は僕と娘がモメてしまう、と感じた僕は「そっか、ふぅん…」と気の無い了解を示し、この話題を打ち切った。

裁判という大きな問題を抱えているのに、次々と別の問題が発生する。

僕は積み上がっていくタスクの量にゲンナリし始めていた。