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育児の落とし穴 〜パートナーのケア〜

自己紹介
私は、働く人の健康をサポートする「産業医」をしています。普段は、産業医活動の「落とし穴」や日々の実践・考えを、noteやX(Twitter)で発信しています。

育休・育児シリーズを始めます
2025年に第一子を授かり、合計4ヵ月ほど育休を取得しています。この経験を通して得た学びを、『落とし穴シリーズ』として発信していきます。特に、これから育休を取ろうと考えている男性に参考になればと考えています。諸先輩方からすれば鼻で笑われるような内容もあろうかと思いますが、こんな人間もいるんだと温かい気持ちでご笑覧いただければ幸いです。

子のケアよりパートナーのケア

子供が生まれて育児をする、といえば、当たり前ですが「子どものケア」だと思っていました。いわゆる「育児タスク」をどう分担し、どうこなしていくかを考えていたわけです。

ところが、育児関連の書籍を数冊読んでみると、「育児も大事だがパートナーのケアをしましょう」、といったことが書いているわけです。

なるほど・・・妻のケアか・・・

なるほど・・・?
どういうことだ・・・?

パートナーのケアはなにをすればいいのやら
私を含め、多くの男性が「パートナーのケア」と言われても、それはつまり何をすればいいんだろう???と思うんじゃないかなと思います。
(みんな仲間だよな!)

プレゼントを買っていく?
・・・でもなにを?気に入らないものを買ってったら意味ないしな

ケーキを買っていく?
・・・でも太りたくないって言っているしな。

優しい言葉をかける?
・・・わざとらしいかな。逆に気持ち悪いかな。

とかぼーっと考えていたわけです(というか、実際にはほとんどなにも考えていない、といった方が正確です)。


言われても助けられないことがとにかく多い

しかし、いざ妊娠がはじまると、妊婦にはつわりが始まり、本当に色々な訴えや症状が出てきます。

たべづわり、はきづわり、においづわりもそうですし、仕事ができなくなったり、お酒が飲めなくなったり・・・

また、産後のフェーズにも、さまざまな身体の変化が生じます。

いわゆるホルモンの変化に伴うもので、別の人間なんじゃないかというくらい体質が変わったりしますし、それに伴う不安やらなんやらで大変な状況に陥ります。

夫はそれらに対して無力です。
圧倒的な無力感があります。
さまざまな訴えに対してなにができるのか・・・

無力感があってもなにもできないわけではない

多くの男性がそんな無力感を味わいつつ、さらには家庭内で窮地感に追いやられているのではないかと思います(みんなそうだよね?)。

が、妊娠・産後の恨みは一生続くとよく言われるように、こんな状況でなにもしないわけにはいきません。

無力感があっても、なにもできなそうでも、なにもできないわけではないんですよね。

全然無力じゃない!できることがある!

そこで、そんな状況で、私がやったパートナーのケアを5つ紹介します。


①足のマッサージ

妊娠中のいつころからなのか、妻の足が痒みに襲われるようになりました。いわゆる「妊娠性痒疹」というやつです。

こんなときに、「産科の主治医に聞いてみれば?」「病院行ってみれば?」とか、治療薬を調べて教える、というのはあまりよくない対応だった気がします。そういう他人事感のある回答は求められておらず、前回の記事で書いたみたいに共感の姿勢を示すとか、一緒に病院を探すといった行動がよかったのではないかと思います。それと、そもそも妊娠中には、なるべく薬は使いたくないのが産婦の当然のマインドですので、それは当たり前に察しましょう。

なので、私は毎晩足のマッサージをすることにしました(出張のとき以外は)。

当初は、妊娠性痒疹のためでしたが、むくみの予防とか、静脈血栓の予防のため(効果の根拠はないよう)にもいいかなと思いましたし、夫婦の会話の時間にもちょうどいいので、その後も続けることになりました。出産後の現在も、ぽつぽつと続けています。

寝る前の数分ですが、喜んでくれますし、夜のルーティンとして定着すると、けっこう楽しくなりますので、おすすめですよ。


②髪を乾かす

これも、妊娠中のいつころからなのか、髪を乾かすことも始めてみました。

私は、横着な人間なもので、昔から髪を乾かす習慣がないのですが、稀に乾かすときに、昔から「ドライヤー重っ!」「これって自分でやるとめっちゃ疲れるやん!」「それも毎日?」って思っていたので、妊娠中に大変そうだし、代わるよーって言って始めることにしました。そっちの方が合理的な気もするし、いざやり始めると、いかにして早く乾かすかゲームみたいで楽しいですしね。こちらも出産後の現在も、ぽつぽつと続けています。

にしても、髪乾かすのって、しんどすぎひん?この習慣で人類はどのくらいの時間が奪われているんだ、と思わないでもない。


③体調を聞く

これもいつ頃からなのか忘れましたが、恐らくつわりがひどくなっていた頃からだった気がします。

つわりがひどい中で勤務を続けていたので、いやいやそんな辛いなら休みなよ、交通事故とか起こしたら危ないよって思っていたこともあって、朝ごはんを食べるときには、体調どうなん?って聞くことがルーティン化したような気がします。

私の仕事である産業医的には、「毎日の体調確認は管理職の責務です」ってセミナーで連呼してましたが、いざ自分がやってみることになるとは、という感じでした。

そもそも、体調を聞いたところでできることなんてほとんどないのになぁ、とも思いながら、とは言え心配は心配なので、とりあえず毎朝聞くという感じでした。

個人的なおすすめは、「おはよー、今日の体調はどう?」か「いただきますー、で、今日はどうですか?」と普段の会話の延長で自然とさらっと聞いてみることですかね。

体調も変化し続けるし、これはつわりかなとか、どうしたらいいかを一緒に考えることには一定のそれなりの意義があった気がします。なにかするよりも、一緒に悩むことがパートナーケアの大事なことなのかもしれませんね。他人の身体であっても、妊娠して自分の子供を育ててくれているわけですから、自分の身体と思って一緒に悩むってことなのでしょう。結果的にそれが育児参加になるんじゃないでしょうか(ちょっと偉そうですが・・・笑)。


④すぐにやる

これは決して育児に限ったことではないのですが、妻のオーダーに「すぐに応える」ことは、パートナーケアにおいてもけっこう大事な気がします。なんなら、言われる前にやる、ですよね。

育児パパ業界のレジェンドたる杉浦太陽氏は「頼まれたら3秒以内」という格言を仰ってます。

妻に頼まれたなら3秒以内に動くべき。妻から「ゴミ捨てて〜」とか「お風呂を入れて〜」とか「料理手伝って〜」とか頼み事を結構聞く。

https://www.fnn.jp/articles/-/271766


「仕事で疲れているんだよ」とか「後でやる」とか「今やろうと思っていたんだよ」というセリフはなんの意味も成しません。

ダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」でいうところの「システム1」で動きましょう。妻の頼み事には、考えるのではなく反射で動きましょう。アルゴリズムにそう叩き込みましょう。

脳の中には2つのシステムがある。システム1は自動的に高速で働き、努力はまったく不要か、必要であってもわずかだ。システム2は、複雑な計算など頭を使わなければできない困難な知的活動にしかるべき注意を割り当てる。

あなた(システム2)が考えたり行動したりすることの大半は、システム1から発している。だがものごとがややこしくなってくると、システム2が主導権を握る。最後の決定権を持つのは、通常はシステム2である。

ファスト&スロー(上)

⑤そこにいる

これはこのシリーズの一つ目の記事でも書いた通りです。なにかするより、まずそこにいること。タスクベースで考えないことです。

詳しくは記事を読んでください。

(⑥話をする)

本当は、パートナーケアに「話を聴く」を入れたかったのですが、議論好きの私の場合には、話を聴くことに徹することはできませんでした。しかしまあ一般論からしても、「話を聴く」は正解に近いと思いますので、ぜひやってみることをおすすめします!

とはいえ、いざ「話を聴く」と言ってもいつすればいいのか、って話だと思うので、おすすめは、①のマッサージをしながら話を聴くことがよいと思いますよ。お試しあれ。

おわりに

育児というと、つい「子供のケア」と思いがちだと思いますが、実際には、負担を背負わざるをえないパートナーのケアが極めて重要なんじゃないかと思います。当初は無力感すらありますが、なにもできないわけではないんですよね。本当は無力じゃないのに、無力だと思い込んでしまうことが大きな落とし穴なんだと思います。私は、始めることも遅かったですし、できたのは微々たることですし、少しは貢献できたのではないかと思います。

なにをすることがケアになるのかはそれぞれの家庭で異なると思いますので、対話をしながら色々と試してみるといいんじゃないかと思います。

これからパートナーの妊娠・出産が控えている方や、育児をする方には、私と同じ失敗をしないようにしていただければ幸いです。


産業保健的コラム:このコラムは、私の専門である産業保健領域になぞらえて、この記事を補足で説明します。

〜支援者支援〜

「支援者支援」とは、支援をする人(支援者)を支えケアすることです。支援者は支援を行う上で疲弊したり、ストレスを抱えたりすることが多いため、支援者自身が心身ともに健康であることで、支援が継続し、質も向上します。
育児においても同じことが言えると思います。パートナーと協働する上では、「支援者支援」の概念をインプットすると、よりよい協働ができるのではないかと思います。父親は、支援そのものをやろうとすると、タスクが思いつかなかったり、空回りしたりします。それよりも、支援者を支援することに注力した方がよいように思います。支援者支援も立派な支援であり、育児者支援もまた立派な育児です!

過去の記事
育児の落とし穴〜そばにいる〜
育児の落とし穴〜まずは共感〜
育児の落とし穴〜パートナーのケア〜 ←NEW!
育児の落とし穴〜記録をとろう〜  ←Comming soon!


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ちょっと癖のある投稿多めですが笑

また、夫婦でラジオも始めました。
育児トークは少な目ですが、よかったら聴いてください!


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