洋上風力が日本の未来を変革する|0.04%の洋上風力が日本を変える!かもしれない話
1. はじめに
第3弾では、日本のEEZの海底に眠る「メタンハイドレート」「海底熱水鉱床」「レアアース泥」などの資源を紹介しました。
今回ブログを通じてアウトプットしている中で、日本はエネルギーも資源もほぼ輸入頼みなのに、なぜ私はこんなに長い間気にしてこなかったんだろうという感覚です。(笑)
今回の第4弾では、資源の話から少し視点を変えて、再生可能エネルギーとしての海洋活用、つまり「洋上風力発電」について、キャッチアップしてきた内容をご紹介しようと思います。
私自身、海洋産業に興味を持つまでは恥ずかしながら「洋上風力」という言葉も知りませんでした。でも調べれば調べるほど、「これは日本の未来を変えるかもしれないけど壮大な挑戦だ」と感じるようになりました。
洋上風力こそ、これまでもお伝えしたように、
・エネルギー安全保障
・海洋インフラ
・AI
・ロボティクス
・防衛
・港湾
・海底ケーブル
・素材
・気象解析
など、さまざまな技術や産業が交差する“巨大システム”でした。
しかも、日本は島国です。
EEZ(排他的経済水域)は世界トップクラス。
海に囲まれ、貿易をはじめとした海によって経済が支えられている国なのに、私たちは「海を活用する」という視点を、これまで十分に持てていなかったのではないか、そんな感覚を持つようになりました。
もちろん、目を向けてこれまで頑張ってくれていた研究者の方や専門の方々がいらっしゃっていて、それでもな一般的な産業になるまでの道のりが険しい、という点も理解しています。
だからこそ、今日本全体で注力するべき産業なのではないか、と思ったわけです。
陸上の風力発電や太陽光発電など、地上から建てますよね。
ただ、洋上風力では、その当たり前の地上から設計する、という概念はまた変わってきます。
日本の海では、「浮かせる」という発想が不可欠になってくる理由が存在するのです。
と、その前に、専門家ではない方がこのnoteを発見してくださった時のために、今回も専門用語から先に整理しておきます。(あとは自分が振り返りやすくするため用でもあります。笑)
・洋上風力発電(ようじょうふうりょくはつでん)
海の上に設置した風力発電設備のこと。陸上より風が安定して強く吹くため、発電効率が高い。
・着床式(ちゃくしょうしき)
海底に杭や基礎構造を直接固定して建てるタイプの洋上風力。水深50〜60m未満の浅い海向け。ヨーロッパで多く普及している。
・浮体式(ふたいしき)
海上に浮かぶ構造物に風車を取り付け、ケーブルや係留索で海底に固定するタイプ。水深が深い海でも設置できる。
・係留(けいりゅう)
浮体式の風車を海底に固定するための索・チェーンなどの仕組み。強い波・風・海流に耐えながら位置を保つ設計が求められる。
・GW(ギガワット)
1GWは約100万世帯分の年間消費電力をまかなえる規模の発電能力とのこと。
・GX(グリーントランスフォーメーション)
化石燃料依存から脱炭素エネルギーへと産業・社会構造を変革していく取り組みの総称。洋上風力はGXの柱のひとつ。
・再エネ海域利用法
日本の領海内・内水で洋上風力を整備するための法律(2018年成立)。
事業者を公募で選定し、最大30年の海域使用を認める制度。
2. 日本のエネルギーの「今」|数字からわかる重要性
第4弾のテーマに入る前に、現状を整理しておきます。
日本の総発電量の構成比は現在、
化石燃料(火力発電)が65%。
再生可能エネルギー全体が27%。
そしてその再エネ27%の大半を占めているのは陸上の太陽光発電です。
風力発電全体(陸上+洋上)の割合は1%。
そして洋上風力だけに絞ると、0.04%という数字になります。
……0.04%。統計上、ほぼゼロです。
しかし、日本の洋上風力は、今まさに「これからが本番」というフェーズにあるのは確かです。
政府が策定を進めている「第7次エネルギー基本計画」では、2040年までに日本の再エネ比率を40%〜50%へ引き上げるという方針が打ち出されています。
現在27%を、40〜50%にする。
数字で見るとあまりインパクト、実質的には再エネ発電量をほぼ倍増させることを意味します。
これは口で言うのは簡単ですが、産業・政策的にはかなり大変なチャレンジです。
その増分のかなりの部分を担うことが期待されているのが、洋上風力です。 0.04%から出発して、国家目標の40〜50%を目指すって、かなりの挑戦ですし、壮大ですよね。ただ、これが実現できたらワクワクしませんか?
3. そもそもなぜ「"洋上"風力」なのか
「洋上風力発電」と聞いて、あまり詳しくない私は「海の上の風力発電ってよくわからないけど陸上より設計は難易度高そうだから無理して海でやらなくてもいいのでは…?」とそんな安直なことを考えました。
しかし、「陸上風力」と「洋上風力」には、大きな差があります。
陸上風力のむずかしい所は、山・住宅地・景観との調整が必要です。
日本の場合、山は急峻で、人口は都心と比較したら少ないとはいえ、村町も存在していますし、密度も高いため、大型の風車を建てられる土地が限られています。
また、騒音・景観問題で反対運動が起きるケースも少なくない。
一方、洋上風力は、広大な海がある。
また、EEZの強くて安定した風が吹く。人家から離れているため、生活への影響が少ない。陸上の数倍のスケールで発電できます。
さらにもうひとつ重要なのが、電力需要地(都市)との距離です。
日本の大都市は沿岸部に集中しています。
東京・大阪・名古屋・福岡。みんな海岸線の近くなんですよね。
洋上で発電して、海底ケーブルで都市に直接送電できる地理的な条件が整っています。
日本政府は現在、2030年に10GW、2040年には30〜45GWという洋上風力の導入目標を掲げています。
30GWというのは、一般家庭に換算すると約3,000万世帯分の電力に相当する規模です。これだけの量を洋上風力で賄う、という国家レベルの目標が立てられているそうです。
さらに、最近の国際情勢を見ていると、「エネルギーを海外依存していること」のリスクも改めて感じます。
やはり直近、中東情勢の緊張が高まるたびに話題になる「ホルムズ海峡」。
ホルムズ海峡が閉鎖されたニュースを毎日見ていた時、エネルギー / 資源 / 物資を輸入に頼りすぎている今の現状に対して危機感を持った方は多くいらっしゃったと思います。
私は車を運転する機会はないので、ガソリン高騰に対して大打撃を受けたわけではありませんが、いろんなニュースを見ている中で、ガソリンひとつとっても、海外からの輸入が少しでもストップすると、こんなにも大打撃なのか…ととても衝撃を受けました。
海峡が封鎖される・物流が止まるという事態は、日本経済そのものに直結する問題なんですよね。
その中で、「日本の海で、日本の電力を生み出す」という洋上風力の考え方は、単なる再エネではなく、"エネルギー安全保障"の意味合いも持ち始めているんじゃないかなと思っています。
4. 着床式 vs 浮体式|日本に「浮かせる」が必要な理由
ここからが第4弾の核心です。
洋上風力には2種類あります。着床式と浮体式です。
着床式は、海底に杭・基礎を直接打ち込んで固定する方式。
ヨーロッパを中心に、すでに大規模な普及実績があります。
ただし、水深が浅い海(目安50〜60m以内)でないと設置できません。
北海・バルト海はまさにそういう「浅くて風が強い」好条件の海域なので、ヨーロッパが洋上風力の先進地域になれた理由のひとつはここにあります。
問題は、日本の海が深いことです。
日本の沿岸は急峻な地形が多く、海岸線から少し離れると一気に水深が深くなります。
沿岸部で数十〜数百m
大陸棚周辺で200m前後
沖合で1,000〜6,000m超と言われています。
そのため、着床式が使えるエリアは、日本の海全体から見るとかなり限られてしまいます。
だから、深い海でも使えるのが浮体式です。
浮体式はこんな感じで取り付けられるらしいです。👇

浮体式は、海に浮かぶ構造物であるフロートと呼ばれる風車を取り付け、その構造物を係留索というロープやチェーンで海底に固定する方式です。
水深の制約がなくなるため、日本のEEZ全域を視野に入れた洋上風力の展開が可能になるそうです。
世界初の商業用浮体式洋上風力は、2017年にノルウェー・エクイノールがスコットランドのアバディーンシャー州ピーターヘッド沖約25kmの北海に建設した「Hywind Scotland」です。
まだ歴史が浅く、着床式ほど普及・コスト低減が進んでいないため、「次世代型」の技術と言えると思います。

日本では長崎県五島市沖での実証実験が先行して進められており、商業化に向けた知見が積み重ねられています。
よく「日本は洋上風力でヨーロッパ(もしくは海外)に遅れている」と言われますが、確かに、着床式の導入量では、イギリスやデンマークなど欧州勢が圧倒的に先行しています。
しかし、調べると"日本は遅れているのではなく、そもそも戦うフィールドが違う"ということがわかりました。
それは何かというと海の深さ。
ヨーロッパは遠浅の海が多い。
一方、日本は急峻で深い海が多い。
だからこそ、日本では「浮体式」という次世代型の技術が必要になる。
つまり、日本は「遅れている」のではなく、むしろ"次世代方式の主戦場"にいる可能性があるんですよね。
これらが全部揃って初めて「洋上風力」は成立します。
ひとつの発電事業に、土木・機械・電気・素材・海事・データ・AIが全部関わってくる。まさに「海洋巨大システム産業」です。
5. さいごに
今回の前編では、
今の日本の洋上風力がわずか0.04%という現実
それでも2040年に再エネ40〜50%を目指すという国家目標の重さ
洋上風力が陸上より優れている理由と、エネルギー安全保障としての意味
着床式と浮体式の違い、そして日本の海の深さが「浮体式一択」を必然にしている理由
をお伝えしました。
「日本は洋上風力でヨーロッパに遅れている」と言われることがあるそうですが、そういう見方もあるかもしれませんが、そもそも環境が違えば、課題感も違う。
浅い海で着床式を普及させてきたヨーロッパと、急激に深くなる海に囲まれた日本では、技術の前提条件が根本的に異なる。
だとすれば、日本は「遅れて同じことをやる国」ではなく、「次世代型の浮体式技術を世界に先駆けて確立する国」になれる可能性があるんじゃないか、と私は思っています。
では実際、その浮体式を建てるためにどんな技術が必要で、どんな課題があるのか。
産業構造は?採用市場への影響は?
後編では、そこについてインプットした内容をアウトプットできたらと思います!
お楽しみに!
