【デンマークの無名企業が、あなたの食卓を揺らし始めた】稲わらと木のゴミで「船の重油」を作る18.5億円の技術——CO2を「100%超え削減」する謎の数字の正体を、貿易商が5章で解き明かす。 #海運 #脱炭素 #スタートアップ #バイオ燃料 #欧州経済 #気候変動 #投資 #ESG #貿易 #エネルギー
こんにちは、ポス鳥です。
今日のニュースはこちら。
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📰 今日のニュース1分まとめ
2026年6月18日、デンマークの小さなスタートアップが、€10M(約18.5億円、約1,120万ドル)の資金調達を発表しました。
会社の名前は、 クヴァシル・テクノロジーズ(Kvasir Technologies)
聞いたことがない会社名だと思います。私も初めて知りました。
でも、この会社がやろうとしていることは、世界中の人の生活に、じわじわ関わってきます。
🔍 これは、何をやっている会社か
ひとことで言うと、 「船を動かすための、環境にやさしい重油を作る会社」 です。
もう少し噛み砕きます。
スーパーに並んでいる輸入バナナも、ガソリンスタンドの石油も、家電量販店のテレビも、ほとんどが「船」で運ばれてきます。
その船は、 重油(じゅうゆ) という、ドロドロした黒い燃料で動いています。
この重油が、大量の二酸化炭素(CO2)を出すのです。
クヴァシルが作ろうとしているのは、その重油の「環境にやさしい版」です。
しかも、ただの代替品ではありません。
原料は、 農業や林業で出る「使い道のないゴミ」
稲わら、木の枝、製材所で出る端材——人間が食べられない植物のクズを集めて、それを船の燃料に変えてしまう、という技術です。
例えば、こんな場面で使われます。
・コンテナ船が、アジアからヨーロッパへ荷物を運ぶとき
・タンカーが、原油や液体貨物を運ぶとき
・フェリーや貨物船が、港から港へ移動するとき
これら全ての船で、今までの重油の代わりに「使える」ことを目指しています。
例えるなら、 ガソリン車をわざわざ電気自動車(EV)に買い替えなくても、ガソリンだけを「環境にやさしいガソリン」に入れ替えれば済む ——そんな仕組みを、世界中の巨大な船で実現しようとしている、と考えると分かりやすいかもしれません。
⚡ そして、ここが今回のすごいところ
技術の中身もインパクトがありますが、 この技術が「今のままの船で、そのまま使える」 という点が、さらに重要です。
通常、船を「脱炭素」しようとすると、大変な工事が必要になります。
例えば、水素やアンモニアを燃料にする船は、 エンジンそのものを作り替え、港の給油設備も新しく作り直す 必要があります。
これには莫大なお金と、何年もの時間がかかります。
ところが、クヴァシルの燃料は、 既存の船のエンジンも、港の給油設備も、一切変えなくていい 。
今の重油に、混ぜて使うこともできます。
「半分だけ環境にやさしい燃料、残りは普通の重油」という、ゆるやかな移行も可能なのです。
さらに驚くのが、この会社の主張する数字です。
CO2の削減率が、 100%を超える可能性がある 、というのです。
「100%削減」なら分かりますが、 「100%超え」 とは一体どういうことか。
この謎は、本文で解き明かしていきます。
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🌸 季節の情景描写
6月のデンマーク。
北欧の夏は、日が長い。
夜の10時を過ぎても、空はまだ薄明るいといいます。
私はこのニュースを読みながら、ふと、自分が貿易の仕事で見てきた港の風景を思い出しました。
巨大なコンテナ船が、ゆっくりと岸壁に近づいてくる。
船体は、ビル10階分はあろうかという高さ。
その船が吐き出す排気は、空に向かって、もくもくと立ち上っていく。
あの煙の一つひとつが、CO2なのだ——と意識する人は、あまりいません。
でも、世界の貿易の9割は、海の上を通ります。
私たちの便利な生活は、あの「黒い煙を吐く船」に支えられているのです。
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📨 一般的なイメージへの疑問
「脱炭素」と聞くと、多くの人が思い浮かべるのは、たぶん電気自動車(EV)や、太陽光パネル、風力発電あたりだと思います。
クルマや電気の話は、ニュースでもよく見ます。
でも、 「船」の脱炭素 について、考えたことがある人は、少ないのではないでしょうか。
ここで、素朴な疑問が湧くかもしれません。
「船って、そんなにCO2を出してるの?」
「クルマや工場のほうが、よっぽど多いんじゃないの?」
実は、海運業界が出すCO2は、世界全体の約3%を占めると言われています。
これは、 ドイツ一国が出すCO2より多い 規模です。
「たった3%」と思うかもしれませんが、もし海運が「一つの国」だったら、世界で6番目くらいのCO2排出国になる計算です。
そして、ここが厄介なところ。
船の脱炭素は、 クルマより、はるかに難しい のです。
その理由を、これから一緒に見ていきます。
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💼 筆者コメント
貿易の現場にいた人間として、正直に言います。
「船の燃料を変える」というのは、言うほど簡単な話ではありません。
クルマなら、EVに乗り換えれば済みます。
充電スタンドも、街中に増えてきました。
でも、船は違う。
一隻が、何十年も使われます。
世界中の港に、給油設備がすでに張り巡らされています。
この「巨大な既存システム」を全部作り替えるのは、現実的ではないのです。
だからこそ、 「今の船に、そのまま使える燃料」 という発想に、私は思わず膝を打ちました。
これは、技術の優劣の話ではなく、 「現実をどう動かすか」 という、極めて実務的な戦略です。
貿易商として、こういう「現場を分かっている解決策」には、つい注目してしまいます。
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📑 本文予告
この記事では、以下の流れで解説していきます。
第1章では、そもそも「船の脱炭素」がなぜこんなに難しいのか、その構造を整理します。
第2章では、クヴァシルの技術が「なぜ画期的なのか」を、お弁当作りに例えながら噛み砕きます。
第3章では、「CO2削減100%超え」という謎の数字の正体に迫ります。
第4章では、今回€10Mを出した投資家たち——特に海運最大手マースクの影——が何を狙っているのかを読み解きます。
第5章では、この技術が私たち日本人の生活に、どう関わってくるのかを考えます。
それでは、始めましょう。
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