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【禁断の錬金術】トランプが狙う中国の「天ぷら油」一見「空虚な脅し」の裏に隠された、数兆円規模のバイオ燃料戦争と「偽装」の闇。

割引あり

皆さん、ごきげんよう。北陸で貿易商を営む、ツイ鳥です。

国際ビジネスの世界に長く身を置いていると、時折、首を傾げたくなるようなニュースに出会います。一見すると筋が通っていない、あるいは、あまりにもスケールが小さいように見える出来事。

しかし、経験上、そうした違和感の中にこそ、時代の大きな変化や、大国の生々しい思惑が隠されていることが多いのです。

2025年10月14日、ドナルド・トランプ米大統領が放った一言は、まさにそれでした。

「中国が意図的に米国の大豆を購入せず、大豆農家に困難をもたらしていることは、経済的に敵対的な行為だ」

「報復として、中国製食用油やその他の貿易の要素について、中国との取引を停止することを検討している」

この発言を聞いて、皆さんはどう思いましたか?

「またトランプ節か」「大豆の仕返しに油? なんだか地味だな」

そう感じた方が多いかもしれません。確かに、中国が米国産大豆の購入を減らし、南米産にシフトしていることは事実です(この点については過去の記事でも詳しく解説しました)

米国の農家が苦境に立たされているのも事実です。

しかし、その報復が「食用油」というのは、どうにも釣り合わないように見えます。まるで、横綱に張り手を食らった力士が、相手の髷(まげ)を少し引っ張って仕返しするような、そんな違和感があります。

さらに奇妙なのは、このニュースに対する業界関係者の冷ややかな反応です。ロイター通信はこう報じています。

『米国向けの(中国製)食用油輸出は過去1年ですでに急減している』

『影響はトランプ氏の脅しと同じくらい空虚だ』

驚くべきことに、2024年には過去最高だった中国から米国への食用油輸出は、今年に入ってすでに前年比で65%も激減していたのです。

ですが、よく考えて見てください。

すでに取引が激減しているものを、

わざわざ「止めるぞ!」と脅す。


これは一体、どういうことでしょうか? トランプ氏は、効き目のない空砲を撃っているだけなのでしょうか?国内へのアピールでしょうか?

いいえ、違います。

長年、貿易の現場で「モノ」の流れと「カネ」の流れを見てきた私の直感は、このニュースの裏には、私たちが想像する以上に巨大で、そして少しばかり「後ろ暗い」物語が隠されていると告げています。

この物語の主役は、私たちが普段スーパーで目にするサラダ油ではありません。

それは、中華料理店の厨房や、家庭の天ぷら鍋から出る

「使用済み食用油

(UCO:Used Cooking Oil)」です。


この、一見すればただの「廃油」が、今、世界中で「グリーン・ゴールド」と呼ばれ、数兆円規模の巨大市場を生み出しています。

そして、この「廃油」を巡って、米中両国が熾烈な争奪戦を繰り広げ、さらには、国際的な「不正」の温床となっているのです。

トランプ氏が狙いを定めたのは、この巨大な利権構造です。

今回は、この「食用油」というキーワードの裏に隠された、バイオ燃料戦争の真実を徹底的に解剖します。

なぜ廃油が宝の山になったのか?

なぜ中国からの輸出は急減したのか? そこに隠された「不都合な真実」とは?

そして、トランプ氏の「空虚な脅し」の真の狙いは何なのか?

さあ、準備はよろしいでしょうか。油と欲望が渦巻く、現代の錬金術の深淵へ、共に旅立ちましょう。


第1章:「食用油」の正体と、現代の錬金術

まず、今回のニュースを正しく理解するために、最も重要な事実を明らかにしなければなりません。

トランプ大統領が言及した「中国製食用油」とは、その多くが、私たちが料理に使う新品の油ではなく、「使用済み食用油(UCO)」のことなのです。

この前提を理解しないと、話の本質を見誤ります。

1-1. UCOとは何か? ― ゴミが「黄金」に変わる瞬間

UCOとは、文字通り、レストラン、食品工場、家庭などで一度使われた植物油のことです。天ぷらや唐揚げを揚げた後の、あの油。かつては、産業廃棄物として処理コストがかかる厄介者でした。

しかし、この「ゴミ」が、ある時を境に「黄金の液体」へと変貌しました。そのきっかけは、「脱炭素」という世界的なメガトレンドです。

UCOは、次世代のクリーンエネルギーである「バイオ燃料」の原料として、極めて優秀だったのです。

1-2. 天ぷら油がジェット機を飛ばす ― SAFという革命

特に注目されているのが、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)です。

皆さんもご存知の通り、航空業界は膨大な量のCO2を排出しています。しかし、飛行機を電気で動かすのは、バッテリーの重さや航続距離の問題から、現実的ではありません。

そこで、既存のジェットエンジンを使いながら、燃料そのものを「持続可能」なものに置き換えるSAFが、脱炭素化の切り札として期待されているのです。

UCOを高度に精製し、化学処理(水素化処理など)を施すことで、従来のジェット燃料とほぼ同じ性質を持つSAFを製造することができます。(同様に、トラックなどで使われる「再生可能ディーゼル」も製造できます。)

国際的な規制は、この流れを加速させています。例えば、EUは2025年から域内の空港でSAFの混合を義務化し、その比率を段階的に引き上げていく方針です。

日本も、2030年までに航空燃料の10%をSAFに置き換える目標を掲げています。

これにより、SAFの需要は今後、爆発的に増加することが確実視されています。そして、その原料であるUCOの価値も、それに伴って急騰しているのです。

1-3. なぜUCOは「究極のエコ原料」なのか? ― 環境価値という名の利権

バイオ燃料の原料には、トウモロコシや大豆、パーム油などもあります。しかし、UCOはそれらと比べて、決定的な優位性を持っています。

それは、「環境価値が最も高い」ということです。

トウモロコシや大豆から燃料を作る場合、食料と競合するという倫理的な問題(フード vs フューエル ※限られた土地とリソースで食料を作るか、燃料を作るかの問題のこと。)があります。

栽培のために広大な農地や大量の水、肥料が必要となり、その過程でCO2も排出されます。

一方、UCOはもともと廃棄物です。これを燃料として再利用することは、廃棄物を減らすだけでなく、原料の生産過程でのCO2排出がほぼゼロと見なされます(ライフサイクルアセスメントという考え方です)

そのため、UCO由来のSAFは、化石燃料と比べてCO2排出量を8割以上削減できるとされ、各国政府から最も手厚い補助金や優遇措置を受けられるのです。

この「高い環境価値」こそが、UCOが「グリーン・ゴールド」と呼ばれる所以です。そして、この環境価値が、巨大な「利権」と、後に述べる「不正」の温床となっているのです。


第2章:米国の「補助金バブル」と中国の「廃油支配」

なぜ米国は、太平洋を越えてまで中国から大量のUCOを輸入していたのでしょうか。2024年には、その量は127万トン、金額にして11億ドル(約1700億円)にも達しました。

この巨大な貿易の流れを生み出したのは、米国政府による強力な政策誘導、すなわち「補助金」でした。

2-1. 政策が作り出した「官製市場」の歪み

米国のバイオ燃料市場は、市場原理というよりも、政府の政策によって人為的に作り出された「官製市場」としての側面が強いと言えます。そこには、「アメとムチ」の強力なメカニズムが働いていました。

1. 義務付けという「ムチ」:RFSとLCFS

米国には、連邦レベルでの「再生可能燃料基準(RFS)」という法律があり、石油精製会社に対して、一定量のバイオ燃料を混合することを義務付けています。

さらに、カリフォルニア州などで導入されている「低炭素燃料基準(LCFS)」は、燃料の環境価値(炭素強度)に応じて「クレジット(販売権のようなもの)」を発行します。

環境価値の高いUCO由来の燃料は、より多くのクレジットを獲得でき、それが高値で取引されるため、メーカーにとっては大きな収益源となります。

2. 巨額補助金という「アメ」:インフレ抑制法(IRA)

そして、このブームを決定的に加速させたのが、2022年に成立した「インフレ抑制法(IRA)」です。

この法律は、クリーンエネルギー分野への巨額投資を盛り込んでおり、特にSAFの生産者に対して、手厚い税額控除を提供することを決定しました。

この「アメとムチ」の政策により、米国内ではバイオ燃料の需要が爆発的に増加しました。「作れば売れる、しかも儲かる」という状況が生まれ、石油メジャー各社はこぞってバイオ燃料プラントの建設に乗り出したのです。

2-2. 原料不足と「チャイナ・コネクション」

しかし、ここで大きな問題が発生しました。急増する需要に対して、原料の供給が追いつかなかったのです。

米国内で発生するUCOだけでは全く足りません。大豆油など他の原料もありますが、コストや環境価値の面でUCOには劣ります。

そこで、彼らが目をつけたのが

「中国」でした。


世界最大の人口を抱え、油を多用する食文化を持つ中国は、まさにUCOの宝庫です。

中国全土から集められた膨大な量の廃油が、米国のバイオ燃料ブームを支える「陰の主役」となっていたのです。中国側も、輸出を奨励するために税還付(事実上の補助金)を出し、この流れを後押ししていました。

2-3. 貿易商の視点:補助金ビジネスの「甘い罠」

私も貿易商として、この種の「補助金ビジネス」の危うさを何度も目にしてきました。

補助金がある市場は、一見すると非常に魅力的です。しかし、その収益構造は、政策という不安定な基盤の上に成り立っています。政策が変われば、一夜にして市場が消滅するリスクを孕んでいるからです。

取引先が、過去に手掛けた再生可能エネルギー関連の事業でも、補助金が突然打ち切られ、大きな損失を出した経験があったそうです。あれは本当に悪夢だったとか。

そして、補助金という「甘い蜜」があるところには、必ず「不正」が入り込みます。

なぜなら、製品の品質やコスト競争力以上に、「いかにして補助金の要件を満たすか(あるいは満たしているように見せかけるか)」が重要になるからです。

そして、このUCO市場においても、その懸念は現実のものとなりました。


第3章:バブル崩壊の真相 ― なぜ中国産UCOは急減したのか?

2024年まで活況を呈していた中国から米国へのUCO輸出。それがなぜ、わずか1年で65%も激減したのでしょうか。

トランプ氏の脅し以前に、すでにバブルは崩壊しつつありました。その背景には、3つの複合的な要因がありました。具体的には、

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【本文予告】
1,今後の米国市場の方向性としてどうなっていくのか?の考察
2,今後どこが伸びるのかなど市場の考察
3,これがどこまで日本に影響あるかどうかの考察、など



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