【ピアノ】回想 いつもと同じ気配
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息子がピアノを始めた当初、指の練習がメインで、聴いていても「曲」ではなく「音」だった。
私は息子が音を弾くたびに、音色を褒めそやした。
電子ピアノはあらかじめ録音された音色が出るため、息子が天才だったわけではない。
しかし、何より今は楽しくやる雰囲気を出すことが大事だ。
そう信じて、毎日「上手」「キレイ」「ステキ」など、乏しい語彙力を総動員して盛り上げた。
息子は得意顔になり、幼いながらも明日も練習すると決意。私も大満足していた。
そんな時に、背後に不穏な空気が漂っているのに気づいた。
夫が何やら不満そうにぶつぶつ呟いていた。
妻子が、ピアノに時間とお金を使っていることに納得していないように見えた。
夫は、目の前で起きている事をそのまま受け止めるタイプだ。
一音のみ弾く息子が、練習と言うよりただ遊んでいるように見えたのだろう。
根が真面目な夫は、姿勢を正してピアノと向き合うのが練習と思っていたのだ。
苛立ちつつ、私は夫の呟きを聞き流した。
私は、息子が曲を演奏する未来を信じていた。
息子が今やっていることは、ずっと先にも繋がっているはずなのだ。
見ているがいい…。
ネガティブオーラを放つ夫を背後に、私の心は静かに燃えていた。
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