【長編小説】獣戦記(アポカリプス)第四十五話 黒豹との激突
吹雪が荒れ狂う絶対零度の氷原。シャバルによる狩りは続けられていた。
——ザッザッザッザッ、シュバッ!
「ハッハッハッ逃げろ逃げろ!もっとだ……もっと俺を楽しませろ!!」
「くそっ!あいつ、なんでこの吹雪の中、おいら達の居場所が分かるんだ!ありえねぇぜ、普通!」
「うむ……ミラのように匂いを追っているわけではなさそうだが……」
「……!?飛龍屈んで!」
——ザシュッ!
(あ、危なかった……いつの間に回り込まれていたんだ)
「良く避けたな。避けなきゃ首飛ばせたんだがな……狼娘のおかげか?」
「ありがとう、ミラ。危なかった」
「それより大丈夫、飛龍」
「問題ない」
(さっきの飛龍の動き、いつもより鈍かったような)
「お、おいら……もう足が……限界だ……」
(そうか、テトラは毛皮があるけど、脚にはそれがない。飛龍も毛皮がないから、この寒さで感覚が鈍ってるんだわ……)
「飛龍、テトラ、ここでこいつを仕留めるわよ」
「マジかよ、ミラ……」
「今戦わないと、どんどん不利になるわ」
(なるほど、俺とテトラの動きが鈍くなっていることに気づいたか……)
「はぁ……はぁ……やるしかねぇな!」
「行くぞ、2人とも!」
「なんだ?反撃か?良いぜぇ……狩りがより一層楽しくなってきやがる」
——ビュォォォ……バァン!
「テトラ!!」
「おうよ!風羽乱奏ァ!」
「……!?うるせぇ、このトサカ……」
「シャバルの足が止まった、今よ、飛龍!」
—————ドォォォォォン!!
「第三鼓———『嵐拳』!」
——ゴォォォ、ザザッ!
「ふっ!」
——スゥゥ、フワッ
シャバルは軽やかに後退し、雪の上を滑るように着地した。
「やるじゃねぇか。いいねぇ……狩りが盛り上がってきた」
(こいつ、まだ余裕があるわね……)
ミラは震える手で双剣を構える。
—スゥ……バァン!
「月牙双閃!!」
交わる双剣がシャバルを襲う。だが、シャバルは一歩も動かず、ただ一歩退くだけで避けた。
「遅ぇ……」
(そんな、こんなに簡単に……やばい、シャバルの姿が……)
「ミラ!!後ろだ!」
——ギリ…ッギリ…ッギリ…ッ
(構えが低い?今までよりも一段と……これは!?)
「くらえぇ! 黒豹の裂爪!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ミラァァァァ!!」
テトラがシャバルを蹴りあげ、ミラを抱える。
「ちくしょう……ミラ……大丈夫か?……しっかりしろ!」
シャバルは驚いたように目を見開き、 次の瞬間、笑った。
「ほぉ……?……面白ぇ」
その笑みは、氷より冷たく、獣より鋭かった。
「トサカ、てめぇ、うるさいだけじゃないみたいだな」
——ギリ…ッギリ…ッギリ…ッ
シャバルが低い体勢になった瞬間、ミラが声を上げる。
「飛龍!! 今!!」
—————ドォォォォォン、ドォォォォォン!!
「第二鼓———『地拳・砕塵』!」
「……地面がっ!」
「今のうちに……距離を取って!!」
「おうよ!」
3人は一気に後退する。
シャバルは煙の中からゆっくりと姿を現した。
擦り傷だらけの浅い傷。
「ハッハッハッ、今のは焦ったぜ……いいねぇ、だが……」
「……」
(こいつ、攻撃くらってにやけてやがる、完全にイカレちまってるよ)
「まだまだ……もっと……もっと血を……」
——ビュォォォ……バァン、ザザン!!
(この速度!先程の比ではない!)
「ミラ!テトラ!」
「終わりだァァァ!!」
「うわぁっ!」
ミラはテトラの腕を振りほどく。
「氷蓮の双壁!!」
——ガギィィィン!!
(なんだ、これ?壁か……俺には関係ねぇ!)
「テトラ!! 今だ!!」
「はぁぁぁ……陽輪爆咆!!」
——ボワァン!
「くっ!ぐはっ!……いいねぇ!いい……っ!?」
(おいらの攻撃効いてんのか?)
「畳み掛けて、飛龍!!」
—————ドォォォォォン、ドォォォォォン、ドォォォォォン!!
「第一鼓———『雷拳・迅雷天刑』!」
飛龍から一閃された雷光がシャバルを包み込む。
「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!!」
——バァァァァァン!
「ハァ……ハァ……やった?」
「分からない、氷壁に激突していたが……」
「ダメージは、デケェはずだ!」
雪煙の中から、ゆっくりと立ち上がる影があった。
「おいおい、マジかよ……」
血を流し、肩を押さえながらも、 その眼はまだ獣のままだった。
「血だ……痛みだ……この感覚、高揚感、最高だ、最高だぜ、お前らぁ!さぁまだまだ、狩りを楽しませてくれ……血を……血を……ハッハッハッ!」
(こいつ……狂ってる……)
「あの男、傷だらけになってもなお、笑うか……」
「常軌を逸してる。こいつ、死ぬのが怖くないのこんな“怪物”どうやって……」
「怪物……そうだ、俺は怪物……リィナもそう言って……あぁ、とにかく血を命を早く……」
(何?どうしたの……リィナ?)
ミラの “怪物” という一言でシャバルの脳裏には、遥か昔の記憶が蘇る。
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