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ととのえ職人の本棚17|怒らないこと― 怒りを消すのではなく、怒りに飲み込まれない ―

ハイサイ。
ととのえ職人、五木田穣ごきたゆたかです。

このnoteでは、心と体と思考のズレをやさしくととのえる話を、日々書いています。

今日は、
「ととのえ職人の本棚」として、
1冊の本をご紹介します。



本を読むことで、ととのう

本を読むことは、
知識を増やすことだけではありません。

本を読みながら、
今の自分の状態に気づくこと。

言葉にならなかった感覚が、
少しずつ言葉になっていくこと。

自分の中にあった違和感が、
本の言葉を通して、少し輪郭を持ちはじめること。

ととのえ職人の本棚では、
ただ本の内容を紹介するのではなく、
その本を通して、心と体と思考の関係をどう見つめ直せるのか。

そして、
今の暮らしの中で、
どう自分に還っていけるのか。

本を読むことで、ととのう。

そんな視点で、ととのう本をご紹介しております。


今回の一冊|怒らないこと

今回ご紹介する本は、

アルボムッレ・スマナサーラさんの
『怒らないこと』
です。

「怒らないこと」

とてもシンプルなタイトルです。

でも、この言葉を見た時に、
少し反発したくなる人もいるかもしれません。

怒らない方がいいのはわかっている。

できることなら、怒りたくない。

怒ったあとに疲れることも、
怒りに飲み込まれて後悔することも、
本当は自分でもわかっている。

でも、怒ってしまう。

だから困っている。

そう感じる人もいるでしょう。

この本を読むことで、
「怒らない人になりましょう」
ということが言いたいわけではありません。

この本を読むことで、
自分の中に怒りが生まれる瞬間を、
どう観るか。

怒りが出た時に、
自分が何に飲み込まれているのか。

そして、
怒りを消そうとするのではなく、
怒りに飲み込まれないために、
どこへ戻ればいいのか。

そんなふうに、読むといい本です。


怒りは、悪い感情なのか

怒りが出ると、
多くの人は自分を責めます。

怒ってしまった。

また感情的になってしまった。

もっと穏やかでいたかった。

大人げなかった。

自分はまだ未熟だ。

そんなふうに、怒った自分に後悔をする。

もちろん、怒りを誰かにぶつけてしまえば、
人を傷つけることがあります。

怒りに任せた言葉は、
あとから取り返しがつかなくなることもあります。

だからといって、
怒りという感情そのものを否定しなくてもいい。

怒りがでてしまったことはもう仕方ありません。
後悔するより、反省をして、これからに活かせばいい。

では、どうするか。
怒りという感情・反応から、どうととのえていくか。

怒りは、
心と体と思考が乱れているサインでもあります。

自分の思い通りにならなかった。

大切にしていたものを否定されたように感じた。

わかってほしかったのに、わかってもらえなかった。

我慢していたものが限界に近づいた。

疲れていて、余白がなくなっていた。

本当は悲しかった。

本当は怖かった。

本当は助けてほしかった。

怒りの奥には、
怒り以外のものが隠れています。

だから、怒りをただ抑えるだけではなく、
怒りが何を知らせているのかを観る。

そこから、ととのえることは始まります。


怒りを消そうとすると、怒りが居座り続ける

怒らないようにしよう。

イライラしないようにしよう。

穏やかでいよう。

感情的にならないようにしよう。

そう思うことは、悪いことではありません。

でも、怒りを消そうとするほど、
そこに怒りは居座り続けます。

今、自分は怒っていないか。

またイライラしていないか。

この感情は出してはいけない。

怒ってはいけない。

抑えなければいけない。

そうやって、怒りを監視する。

すると、怒りは消えるどころか、
内側で強くなっていきます。

怒りを消そうとしているのに、
怒りをずっと意識している。

怒らないように頑張っているのに、
体の中は緊張し続けている。

穏やかでいようとしているのに、
心の奥ではずっと戦っている。

これでは、怒りはなかなか静まりません。

怒りを消すことより、
まず怒りに気づくこと。

今、怒りがある。

体が熱くなっている。

呼吸が浅くなっている。

言葉が強くなりそうになっている。

相手を責めたくなっている。

自分の正しさを証明したくなっている。

そう気づくこと。

気づくことで、
自分の感情との距離を少し取り戻せます。


怒りに飲み込まれると、体も思考も狭くなる

怒りに飲み込まれている時、
人はとても狭くなります。

視野が狭くなる。

呼吸が浅くなる。

言葉が強くなる。

体に力が入る。

相手の言葉が聞こえなくなる。

自分の正しさだけが大きくなる。

その瞬間は、
自分が正しいように感じます。

相手が悪い。

状況が悪い。

わかってくれない人が悪い。

自分は間違っていない。

そう思いたくなります。

でも、怒りに飲み込まれている時は、
視野が狭くなり、自分の状態が見えにくくなっています。

体は硬くなっている。

呼吸は浅くなっている。

お腹は落ち着かない。

頭の中では、相手を責める言葉がぐるぐるしている。

心は傷ついているのに、
怒りの形でしか出せなくなっている。

怒りは、エネルギーです。

そのエネルギーが強すぎると、
自分の内側にある本当の声が聞こえにくくなります。

本当は、悲しかったのかもしれない。

本当は、疲れていたのかもしれない。

本当は、不安だったのかもしれない。

本当は、わかってほしかったのかもしれない。

怒りに飲み込まれないためには、
怒りの奥にある感情へ戻っていく必要があります。


怒りは、余白がなくなったサインでもある

夏の時期は、
怒りやすくなります。

暑い。

眠りが浅い。

冷房で冷えている。

胃腸が疲れている。

食欲が揺れている。

予定が詰まっている。

体が重い。

呼吸が浅い。

そんな状態が続くと、心の余白も減ります。

いつもなら流せる言葉に反応してしまう。

小さなことでイライラする。

人のペースに合わせるのがしんどくなる。

思い通りに進まないことに腹が立つ。

これは、性格が悪くなったわけではありません。

心が狭くなったのではなく、
体と心の余白が少なくなっているだけです。

怒りが出た時、
「自分はだめだ」
と責める前に、もう少し見てみましょう。

最近、眠れていたか。

胃腸は疲れていないか。

冷たいものが続いていないか。

体は重くないか。

予定を詰めすぎていないか。

誰かに合わせすぎていないか。

我慢していることはないか。

怒りを、心だけの問題にしない。

怒りは、余白のなさとして出ることもあります。

怒りは「なくすべき悪」ではなく、
体と心と思考のズレを知らせるサインです。


怒らない人になるより、怒りに気づける人になる

この本のタイトルは、
『怒らないこと』です。

この本を、
「一切怒らない完璧な人を目指す本」
として読もうとしない。

怒らない人にならなければ。

いつも穏やかでいなければ。

怒りを出してはいけない。

そう読むと、また自分を責める材料になります。

大切なのは、
怒りに気づける人になること。

怒りが出た瞬間に、
「あ、今、自分は怒っている」
と気づけること。

怒りのままに言葉を出す前に、
少し呼吸へ戻れること。

相手を責める前に、
自分の体の状態を観られること。

怒りの奥にある、
悲しさや不安や疲れに気づけること。

怒りが出た自分を責めるのではなく、
怒りに飲み込まれている自分を、少し離れて観る。

それができるだけで、
怒りとの関係は変わっていきます。

怒りをなくすことではなく、
怒りに飲み込まれないこと。

怒りに気づけるようになる。
怒りをコントロールできるようになる。

この本を、ととのう本としてお勧めする理由は、そこにあります。


怒りの奥にある、自分の正しさ

怒りが強くなる時、
そこには「自分の正しさ」が隠れています。

こうあるべき。

こうしてくれるべき。

わかってくれるべき。

ちゃんとするべき。

普通はこうするべき。

自分は間違っていない。

この「べき」が強くなると、
怒りは燃えやすくなります。

もちろん、自分の中に大切にしている価値観があること自体は悪いことではありません。

譲れないものがある。

大切にしたいことがある。

守りたいものがある。

それ自体は、自然なことです。

ただ、それが強くなりすぎると、
相手を観る余白がなくなります。

状況を観る余白がなくなります。

自分の状態を観る余白もなくなります。

正しさが強くなるほど、
怒りは自分を支配しやすくなる。

そんな時こそ、少し立ち止まってみる。

私は、何を正しいと思っているのか。

何をわかってほしかったのか。

何を守ろうとしているのか。

その正しさは、今、本当に必要なのか。

それとも、傷ついた自分を守るために握りしめているのか。

怒りを観ることは、
自分の正しさ・価値観を観ることでもあります。


怒りを体から観てみる

怒りは、頭の中だけで起きているわけではありません。

体にも出ます。

顔が熱くなる。

胸が詰まる。

みぞおちが硬くなる。

お腹に力が入る。

肩が上がる。

喉が狭くなる。

呼吸が浅くなる。

手に力が入る。

言葉が早くなる。

歩き方が荒くなる。

怒りに飲み込まれている時、
体はすでに反応しています。

だから、怒りをととのえる時、
頭だけで考えなくてもいい。

なぜ怒ったのか。

誰が悪いのか。

何が許せないのか。

もちろん、それを考えることも必要な時があります。

でも、その前に、体へ戻る。

今、呼吸はどうなっているか。

お腹は硬くなっていないか。

胸は詰まっていないか。

喉は狭くなっていないか。

足裏は床についているか。

体は熱くなっていないか。

怒りを体から観ると、
怒りと少し距離が生まれます。

体に戻ることで、
怒りの中に飲み込まれていた自分から、
少しだけ戻ってこられる。

そうやって、ととのえることができます。


夏土用に読む「怒らないこと」

今は、夏土用の時期です。

季節の変わり目に入り、
体も心も少し揺れやすい時期です。

暑さが続き、
冷房で冷え、
冷たいものが増え、
胃腸が疲れ、
眠りが浅くなる。

そんな時期は、
感情も揺れやすくなります。
怒りやすくなります。

怒りは、
突然出てくるように感じるかもしれません。

でも実際には、
その前から体は疲れていたかもしれません。

胃腸が重かったのかもしれません。

睡眠が浅かったのかもしれません。

人に合わせすぎていたのかもしれません。

予定を詰めすぎていたのかもしれません。

自分の中に、余白がなかったのかもしれません。

だから、夏土用に『怒らないこと』を読むのは、
とても良いタイミングだと思いました。

怒りを精神論で抑えるのではなく、
自分の内側の余白を見直していく。

怒らない人になろうとするのではなく、
怒りに飲み込まれそうな時、
どこへ戻ればいいのかを思い出す。

それは、体と心と思考のズレをととのえることにもつながります。


今日の小さな問い

最後に、今日の小さな問いを置いておきます。

最近、怒りやすくなっていないでしょうか。

その怒りの奥には、何があるでしょうか。

疲れでしょうか。

悲しさでしょうか。

不安でしょうか。

わかってほしかった気持ちでしょうか。

守りたかったものがあるのでしょうか。

最近、胃腸は疲れていないでしょうか。

眠りは浅くなっていないでしょうか。

予定や情報を受け取りすぎていないでしょうか。

自分の正しさを、強く握りしめていないでしょうか。

怒りが出た時、
少しだけ体に戻るなら、
どこへ意識を向けるとよさそうでしょうか。

全部に答えなくていいです。

ひとつだけでもいい。

怒りを消すためではなく、
怒りに飲み込まれないための問いです。


ととのう本

この本は、
怒りをただ抑えるための本ではありません。

怒りを消すための本でもありません。

自分の中に怒りが生まれる瞬間を観るための本です。

怒りに飲み込まれた時、
自分がどれほど狭くなっているのかに気づく本です。

怒りの奥にある、
疲れや不安や悲しさや正しさを見つめる本です。

怒らないこと。

その言葉は、
ただ穏やかな人になりましょう、
という意味だけではありません。

怒りに支配されないこと。

怒りのままに、自分や誰かを傷つけないこと。

怒りが出た時に、
一度、自分の体に戻ること。

呼吸に戻ること。

お腹の感覚に戻ること。

自分の中に余白を戻すこと。

怒りを消そうとしなくていい。

でも、怒りに飲み込まれなくていい。

怒りを責めるのではなく、
怒りが何を知らせているのかを観てみる。

その視点が持てた時、
怒りとの関係は少しずつ変わっていきます。

怒りを消すのではなく、
怒りに飲み込まれない。

そこから、
心と体と思考のズレは、
少しずつととのっていきます。

ととのえ職人
五木田穣


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