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漫画家アシスタント物語 諦めま章〈7〉 大学で小話をするアシスタント

 
《 写真上: 前回のガスコンロのすぐ下側です。本来、この床は明るいウッド調のフローリングですが‥‥それが黒くなり、さらにホコリが付き、変色しています。中央の棒は排水口が詰まった時に使うゴムパッコン。2012年》
             < この諦めま章〈7〉は、文庫本約10ページ分 >

 
 
 
「諦めま章」は、独立した「章」ですので、「第9章」の続きではありません。 ほとんどは、雑多な回想ですが、一部連続していますので、やはり、「諦めま章〈1〉」からお読みになる事をお勧めいたします。
 
それから‥‥
はじめての方は、
「マガジン:第1章、第2章」(無料)がお薦めです!

 
 
 
 
               その13
 
 
 《 漫画家アシスタントが・・・有能な学生に接すると・・・!? 》

 

久しぶりに、大学で非常勤講師をやっていた頃(2009~2016年)のお話です‥‥

大学の朝一番の授業では、学生の出席率があまり良くないそうですが‥‥‥‥

私の授業( ※参照 )でもそれは例外ではなく‥‥‥‥ 学生の皆さんにとって、朝一番の授業は、苦しそうな様子が見て取れるのです‥‥‥‥

私が1年生用に個人的に行なう授業アンケートでも「 朝の授業が辛い 」という意見が毎年出てきます。

第1回目の授業は、ガイダンス( 指導説明 )になっていて実習というものはないのですが、第2回目から本格的に実習やら講義やらが始まるわけです。

ちなみに私が担当する科目は「 マンガ背景美術 」( ※参照 )‥‥‥‥「 マンガ背景 」ではなく「 美術 」と付くあたりがいかにも大学らしい脚色(?)があって面白いところです。

授業が始まる前には教室に行くようにしているのですが‥‥‥‥ 学生の少ない年度( 特に3年生の授業でクラスの編成上、学生数が数人しかいない場合がある )には、教室のドアを開けるのが恐ろしい事があります。

『 ひょっとして誰もいないかもしれない‥‥‥‥ 』

‥‥ってな事を考えていると‥‥‥‥ ホントに誰もいない!

教室内はガラ~~~ンとしてエアコンの音だけが静かに響いている‥‥‥‥

私は、一瞬‥‥ 教室を間違えたのかと、ドアの外に出て、教室の番号を再確認‥‥‥‥
 
『 ‥‥‥‥間違いない‥‥‥‥ この教室だ‥‥‥‥ 』
 
たった一人で教壇に立ち、授業の準備を始めるのですが‥‥‥‥ 教師としてこれほど寂しい事はありません‥‥‥‥

キ~~ン、コ~~ン‥‥‥‥ 私一人の教室に、わびしく始業のチャイムが鳴っている‥‥‥‥‥‥

『 ‥‥何ンだぁこりゃ‥‥‥‥ このまま誰も来なかったらどうなるンだろう‥‥‥‥ 』

‥‥などと狼狽を隠しつつ教卓に資料や漫画道具を広げる‥‥‥‥ そして、ホワイトボードに今日やる課題のためのサンプルなどをボード用マーカーで描いていると‥‥‥‥ 私の背後で‥‥‥‥

「 あ‥‥ れぇ‥‥‥‥ 」

などと小声でささやきながら入ってくる学生が2~3人‥‥‥‥

『 助かった‥‥! 』

私は、ホワイトボードに向かいながらホッと胸をなで下ろす気分なのですが‥‥‥‥ 学生の方は、自分たちの側に責任を感じているのか恐縮している様子‥‥‥‥

「 遅れて‥‥ すいませ~ん‥‥ 」

しかし、私のホンネを言えば‥‥ 嬉しくて‥‥ 最初に来てくれた学生を抱きしめたいほどの心境なのです。

今年で4年目( 2013年頃 )の授業になるのですが‥‥ こうした事が3~4回ありました。

私の授業が不人気なために学生の出席率が悪いという訳ではないようなので、それほど気にはしていないのですが‥‥‥‥ 教師なんて学生のちょっとした態度一つで天国と地獄を行ったり来たりしているもののようです。

さて、話を戻して‥‥‥‥

第1回目の授業がガイダンスで、2回目が「 射線、りゅう線、フラッシュ 」( ※参照 )がテーマ‥‥‥‥ いよいよ実践的な背景画講義に入ります。

射線は、普通に定規を使用してヨコにスイスイと等間隔に線を引いたもの。りゅう線はそのヨコ線の間隔をわざとバラバラに乱れさせる事で迫力のある効果を出す射線技法。

また、フラッシュというのは、射線を一点に集中させてその焦点が光っている様な効果を出す技法です。

こうした技法は、漫画背景の初歩的な技法なのですが‥‥‥‥ 慣れていないと簡単には描けません。( 現代ではデジタル処理で作成します )

定規を使用していても、線の太さがバラバラになったり、間隔がまちまちだったり、線が途中でかすれてブツブツ切れたり‥‥‥‥

ただ、多くの場合‥‥‥‥ 線の太さがバラけたり、線が切れたりするのは、インクが古かったり、ペン先が古かったり‥‥‥‥ といった道具のコンディションに問題があったりする場合が多いのです。

実際、学生の中には古くなってドロドロになったインクや、錆び付いたペン先を使用していたりする場合もよくあるのです。

難しいのはフラッシュ効果で、これは、定規を巧く焦点に合わせながら、ヨコ線を引く事を要求されるのですが‥‥‥‥

巧く焦点に合わせることが出来ずに、不安定でバラバラな方向に向かって射線が引かれていたりするケースも‥‥‥‥( そんな学生はホントに苦しそうです )

でも‥‥

この辺りからが、私の本当の授業が始まると言えるのかも知れません‥‥‥‥( コツコツ簡単な事からスキルアップしていけば良いのです )

毎日、思い通りに行かない‥‥‥‥ 描けない‥‥‥‥ そうした学生との接触‥‥‥‥ その瞬間こそ、私にとって最も挑戦しがいのある時間になります。

変な話ですが‥‥ 逆に上手にこなせる学生というものは、私にとっては、教える事が少ないで‥‥‥‥ 実に、まったく‥‥‥‥ 面白くないのです‥‥‥‥

『 無能な教師が、有能な学生を見て嫉妬している‥‥ 』
‥‥そんな風にお疑いの方もあるかも知れませんが‥‥‥‥

決して‥‥‥‥ 決して、そんな事はないのであります。(汗)




アシスタントの仕事場にあるテレビ。下のテレビは50年前のテレビで完全に映りません。上のテレビは40年ほど前のもので、これも完全に映りません。もうゴミ化したテレビに誰も触れません。

 
               その14

    《 漫画家アシスタントが・・・学校で失笑される!? 》

 
今回も前回につづいて学校( ※参照 )の話を書きたいと思います‥‥

学生に授業へ注目してもらう( 集中してもらう )事を求めるには、どうすれば良いのか‥‥

教師にとっては、結構難しい問題だと思います。 特に、授業の最初‥‥ その始まりでしっかり彼等の注目を集めておかないと、その後の授業効果にマイナスの影響を与えてしまいます。

恐ろしいのは、学生たちの私語や無関心など‥‥‥‥ バラバラな状態のまま、講義が始まってしまう瞬間です。

私は、数年前に聞いた事があるのですが‥‥‥‥ 最初に「 笑い 」を取る事が出来れば、その後の授業への集中がスムーズになる‥‥‥‥と‥‥‥‥‥‥

はじめて大学の教壇に立った頃‥‥

この事を随分と意識して落語のマクラ( 小話 )などを参考にしようと、テレビの落語番組などからマクラのネタをノートに書き取ったりしていました。

‥‥まさかテレビ放送された落語のマクラを授業で使っても著作権侵害で訴えられたりはしないと思いますので‥‥‥‥( 最近は、ちょっとした真似やパロディーでもすぐに『 金よこせ 』ですから怖い世の中です )

授業の最初か、ちょっとした「 つなぎ 」に軽いジョークをはさんだりする事でリラックスしたり集中したりする事を促す‥‥‥‥ それが私の目論見だったわけです‥‥‥‥

ただ‥‥‥‥

元々、私は人付き合いが下手ですし、会話が苦手な質ですので‥‥‥‥ ちょっと考えれば、巧くいくわけないのは、すぐわかるはずだったのですが‥‥‥‥

ついついテレビで笑いを取る落語家を見ていると、自分も真似したくなるわけです‥‥‥‥‥‥ もちろん、落語家がその奥深い芸の領域に到達するためには、長い修練がある‥‥‥‥‥‥ その事を脇に置いたまま‥‥‥‥

皆さんもご存知の事とは思いますが、よくあるネタで‥‥‥‥

「 隣に壁ができたね‥‥ 」
「 へ~~ 」

‥‥などというやつです。

これなどは、最初の授業に使ったのですが‥‥ 当然のごとく‥‥ 

一人の笑いも取れず‥‥‥‥ 教室中が冷凍庫のような冷え切った状態になったものです。

そこで、もう少し気の利いたものをと‥‥‥‥

「 新年、明けましておめでとうございます! さっそく、おめでたい小話を‥‥ 」
‥‥と、林家三平風に前置きして‥‥

「 おい、見ろよ‥‥ あっちから坊さんが二人来るぜ‥‥ 」
「 これがホントの和尚がツ~! 」

‥‥みたいなものに挑戦しても、まったく受けません‥‥‥‥。(当然か)

ひどい時には、この前置きを間違えて‥‥‥‥

「 新年、明けましておめでとうございます! さっそく、お正月(!)の小話を‥‥‥‥ あれ? 」

ここで、絶句‥‥‥‥

「 オチを先に喋ってしまいました‥‥‥‥‥‥ どうもスイマセン! 」

私の間抜けぶりに学生たちが失笑する‥‥‥‥

こんな調子ですので、まったくいけません‥‥‥‥

これで諦めれば良いのですが‥‥‥‥ すっかり頭に来て( 何を怒っているのか分からないが )、意地になってネタを覚えて‥‥‥‥

今では、小話を7~8個は使いこなせる様になっています。

ただ、笑いを取るのは‥‥ ホントに難しく‥‥ まだまだ10年位時間がかかりそうです。( 焦っているうちに引退 )

ちなみに、学生用のアンケートで「 印象に残っていることは? 」という質問の回答欄に‥‥‥‥

「 何だかよく分からない小池先生の落語‥‥ 」

というのがあったりして‥‥‥‥ さすがにしばらく考え込んでしまいました‥‥‥‥
 

さて‥‥‥‥‥‥

次回は、私の漫画家アシスタント人生38年( 19歳の時に始めてアシスタントになる、2013年当時 )で、もっともスキャンダルなお話を書きたいと思います‥‥‥‥

有名な漫画家先生の下半身のお話ですので‥‥‥‥

ヤバイ‥‥ 絶対にヤバイ話なので‥‥‥‥

どう書いたものかと‥‥‥‥ 現在、思案しておりますのです‥‥‥‥

  
 
 
  

      「 漫画家アシスタント物語 諦めま章〈8〉」へつづく・・・・

                  「諦めま章〈6〉」へもどる‥‥

                       「もくじ」 へ‥‥
 
 

  

 ~~~ 参照 諦めま章〈7〉 ~~~ ( 読んでも、読まなくても!)

 【その13】
・授業 : 東京某所、繁華街にある美術系の大学。2009年から私が3年生に非常勤講師として漫画背景を教えています。2011年からは、1年生にも「漫画背景美術基礎」を教える様になったりました。
・漫画背景美術 : 少年漫画から青年誌、さらには女性誌まで、その背景の描き方を基礎的な部分から解説、実技指導する。主にスクリーントーンの効果や、透視図の基本、建物や自動車などの描き方など‥‥かなり幅広く指導します。
・りゅう線、フラッシュ : 漫画のアクションシーンなどで、人物のバックに迫力のある多数の射線によってスピード感を演出する技法。こうしたアナログな作業は、現在ではパソコンソフトを使って処理しています。
 【その14】
・学校 : 東京某所、繁華街にある美術系の大学。2009年から私が3年生に非常勤講師として漫画背景を教えています。2011年からは、1年生にも「漫画背景美術基礎」を教える様になったりしました。

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