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仕事へ行けなかった日に読むはなし

「本当は、会社行きたくなくて…」

向かい合って座る彼女の声は、弾丸のような風となり、わたしの肩をドンッと揺らしていった。
息を呑んだことに、気づかれなければいい。
わたしは、どんな顔をしているのだろうかーーー

仕事を休みがちだ、と聞いていた。
今までは月1くらいで、生理痛がひどいと聞いていたので、たぶんそれだろうと思っていた。
けれども、その頻度が増えている気がする。
様子が、おかしい気がする。

思い込みであったらそれでいい。
でも、「圧倒的におかしい」の、少し手前の場所にいるのではないか。
そんな気がして、余計なお世話かもしれないと思いつつも、声をかけた。

余計なお世話だったらそれでいい。
でも、わたしだって救ってもらった命だ。
「自分の人生を生きなさい」
人生の節目で、何度も、いろんな人にそう言われてきた。

責任感というか、手の抜き方を知らないというか、頼まれた仕事はなんとなくこなせてしまう器用さと、人に頼むことの申し訳なさと面倒くささで、ついつい必死になってしまう。
でも、会社というコミュニティは、わたしがいなくても回る。
どこだって、絶対にそう。
そしてどこにいても、「わたしが抜けたら迷惑がかかる」などと思ってしまう。
そのたびに言われてきた。
それが、「自分の人生を生きなさい」だった。

具合はどう?と尋ねているうちに、ついに出てきた言葉が「会社に行きたくなくて」だった。
やっぱりそうだったか、という重さと、その言葉を引っ張り出せた安堵だった。すなおに言ってくれてよかった。

それを彼女は、「会社をサボってしまって」とうつむいて、それでも笑っていた。
「行きたくないときは、行かなくていいのよ」
それは、自分に言い聞かせ続けた言葉でもあった。
「行きたくないってときはね、何かしら具合も悪いモンよ。
 頭痛かったり、お腹痛かったり、だるかったり。
 頑張れば動けるかもしれないけど、しんどいでしょう?」
そういうのはね、具合悪い、っていうのよ。それでいいのよ。

わたしの病も、ちょうどそんな感じだった。
何度も、熱が出てくれればいいのに、と思った。数字はわかりやすかった。
倦怠感も、圧倒的に歩けなくなってくれればいいのに、と思ったりする。
「会社まで歩けないので休みます」
信じられないけれど、それが事実ならば仕方がない。
その苦しさを知っているのに、そんなことを思ってしまう。

でも、少し頑張れば動けそうとか、我慢できそうとか、そういうこともある。
そういうときは、「自分が弱いからいけないのではないか」などと思ってしまったりする。
それでもやはり、会社に行けない。

そういうときは、休めばいい。
でもいまが、「そういうとき」なのか、実際にサボっているだけなのか、線引きができないこともある。
それがまた苦しい。
今日行かなかったら、二度と行けなくなるのではないか。
不安なのに、それなのに身体は動かない。

そんな日々を繰り返してようやく、「サボるときはもっと健やかな気持ちだ」とか、「具合が悪いという判断は難しいが、具合が良いときはわかる」というようなことが理解できた。
つまり、「頑張れるとき、というのは注意深く見ていれば案外理解できるのだ」ということだ。
だから「サボりたい」と思うとき(それも、ちょっと泣いちゃったりしているとき)は、心身に何かしらのエラーが発生している。
そして、エラーが発生したときは、ふとんに引きこもるのがいい。
少し元気になったら、アニメを見ても良い。散歩もしてもいい。
「休む」というのは、ふとんに引きこもるだけではない。
自分に、やさしくすることなのだ。

持てる言葉をすべて投じて、君に伝えたつもりだ。
わたしはついついしゃべりすぎてしまうけど、できるだけ口をつぐんで君の言葉も聞いたつもりだけど、足りなかったらごめん。

いろいろ思うところもあるけれど、ひとつだけ約束を覚えていて欲しい。
周りは変えられないけれど、あなたはは変われる。
ついつい、「これくらいやっちゃおう」っていうのを繰り返して、気づいたら息ができなくなってしまうけれど
簡単なことだからこそ、自分でできてしまうことだからこそ、容易く「お願い」と頼んで欲しい。
あなたが持っている荷物を持たせて欲しい。
わたしを、友達を助けられない不義理なやつにしないで欲しい。
わたしが持ちきれないものは、次の誰かに押し付けてやるから。だから、どうか

このことを覚えていて欲しい。
サボりたいときは、サボって大丈夫。
サボり続けて、動けなくなってしまったら、そのときは相談して欲しい。一緒に考えよう。
そして、荷物を持ちすぎないで欲しい。
持てるからってぜんぶ詰め込んではいけないよ。
わたしがあなたを助ける余裕を持ち合わせて生きていくように
あなたも、大切な人に手を差し伸べられなかったら、きっと苦しいでしょうから。
隙間を、忘れてはいけないよ。

「自分ってダメだなァ」って自分を責められるのは、自分自身だけなのだと思う。
周りは案外気にしていないし、つまらない言葉で否定してくる奴の言い分は聞かなくていい。
あなたがわたしに「大丈夫だよ」と言ってくれる気持ちの半分でいい、
自分の心の身体にも宛てて欲しい。

あなたの旅が健やかでありますように。
でも、無理をして元気にならなくてもいい。
何かあってもなくても、なんでも話そうよ。
せっかく出会って、わたしは君が好きなんだから
ちょっとくらい役に立たせて、格好つけて、あなたの人生に関わらせて欲しい



※がんばりすぎてしまうあなたへ わたしが許す

※新しい環境で不安なあなたへ

※さわやかに仕事を早退してやった話

※会社をクビになっても、健やかに働く30代が綴るエッセイ集

このサムネいい加減変えたい……
会社クビになって、ヤケクソで撮影したやつ


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