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宇宙民話 : ワラキアの子犬たち ⓵ Cuentos del Universo : Los perritos de Valaquia by ルア・ノアール

ルア・ノアール(Lua Noire)
メキシコ生まれ。書くことは自分の世界を捉えること。統合失調症である。そこで見る幻覚と現実の世界をリンクさせて作品を書いている。
フェルナンダ・カルバハル(Fernanda Carvajal)
チリ在住のジャーナリスト。スペイン語話者として本プロジェクトの翻訳をサポート。2020年以来の葉っぱの坑夫の友人。
だいこくかずえ(Kazue Daikoku)
日本在住の翻訳者・編集者。ルア&フェルナンダの支援とAI翻訳をフル稼働させてスペイン語 → 日本語訳を敢行。

Title image, 笛を吹くミハイ by Lua Noire 

*メキシコの新米作家によるスペキュレイティブな民話集。
宇宙民話
 もくじ
自己紹介/わたしについて(ルア・ノアール)
大好きな日本のみなさまへ(ルア・ノアール)


<宇宙笛> La flauta cósmica

ルーマニアのワラキアという所に、一人の若者が住んでいました。その男は、木の皮で笛を作ろうと思ったのですが、どの木を選んだらいいか決めかねていました。そもそも木でものを作った経験などなく、ただの農夫で、歌ったり、羊を放牧することが好きな男でした。

ある晩のこと、男は瞑想をしようと、タラ・ルアネイの白い家に行きました。そこはルーマニアでは、修道士たちが瞑想するために行く場所として知られていました。男は瞑想の中で自分のよく知るものを目にしました。毎朝放牧する羊たち、馬たち(ルーマニア人はみな、飼っている馬を家族のように可愛がります)、道でヴァイオリンを演奏する陽気なロマの人々。男は深い瞑想状態に入っていき、自分が空を旅しているところを頭に描きました。雲に手をふれ、その上の宇宙空間に入っていきました。そこで星雲や宇宙塵、彗星を見ていたら、オリオン氏のところの星と衝突してしまいました。するとその星がおずおずとこう言いました。

「もうしわけない、傷つけるつもりじゃなかったんだ」 ミンタカという名の星でした。しかし、農夫のミハイがいったい何者か知らなかったオリオン氏は、腹をたてました。

「俺のところの星にぶつかるとは、おまえは何者だ?」

「わたしは農夫です」

「誰に言われて来た、ここは俺と星たちの場所だ」

「わたしは、、、夢をみていて」

「俺への謝罪として、これから渡す種子で木を植えよ。ワラキアじゅうに木を植えるのだ。そうすればこの俺、オリオンの邪魔をしたおまえの無礼を許してやろう」

ミハイは種子の入った袋を手に瞑想から目覚め、恐ろしい気分になりました。でもオリオン氏の命令に従わなかったら、もっと恐ろしいことになると思いました。すでにあたりは暗くなっていて、ミハイは家に帰りました。ルーマニアの昔式のベッドの横に据えられたストーブに火を入れ、コーヒーを沸かしました。それを待つ間に、ミハイは家の外に出て、とりあえず木の種を一つ蒔いて、家に戻りました。そしてドアを閉め、コーヒーを飲んで眠りにつきました。

ミハイが目を覚ましたとき、いつもの朝のように部屋が明るくないので心配になりました。そして自分は寝ていなかったのだろうか、まだ夜なのか、と思いました。ミハイが家を出てみると、もう朝で自分はよく眠ったことがわかり、昨夜植えた種子が、一夜で立派な木になっているのを目にしました。その木が太陽の光を遮っていたので、あたりが暗かったのです。そしてその木から太くて大ぶりの枝を切り落としました。その木は特別な木だと思い、ミハイは笛を作りはじめました。まる1週間、笛を仕上げるのにかかりました。家でその笛を吹いてみると、とても良い音がしました。それを手に、農場の動物たちのところに行きました。ミハイが笛を吹くと、馬たちが興奮して攻撃的になりました。ミハイにはその理由がわかりませんでした。

その翌日、ミハイは朝早くに、馬から離れたところで笛を吹こうとしたのですが、馬たちは興奮して納屋のフェンスを壊してしまいました。すると馬たちのそばに、フサフサした毛の犬が現れたのです。ミハイは放牧用の犬など飼ったことがないので不思議に思いました。フェンスを修繕しなければならないと思うと辛くなり、ミハイはまた笛を吹きはじめました。すると馬たちの飼い葉桶が空っぽになり、藁が群れになって集まってきました。ミハイが笛を吹くのをやめると、藁はおとなしくなりました。ミハイはそれほど不思議に思わず、玉になった藁に近づきました。ただの玉かとミハイは思ったのですが、集まった藁は、さっき飼い葉桶で見たのと同じような犬の形をしていました。

飼い葉桶の藁でできた1匹の子犬。ところがミハイが笛を吹くとそのたびに、同じことが起こりました。子犬が生まれたのです。ミハイは笛を吹きつづけ、藁が玉に、子犬になるところを目にしました。

ミハイは、藁から生まれた4匹の小さな犬を見て驚きました。それぞれ違う毛色で、どれもルーマニア原産の犬でした。ミオリティック・シープドッグ、カルパチアン・シェパードドッグ、ブコヴィナ・シェパードドッグ、コルブ・シェパードドッグ。どれも名前をつける価値のある犬だとミハイは思いましたが、すぐに思いつきませんでした。とはいえ、いつか名前はつけられるでしょう。


だいこくかずえ訳・フェルナンダ・カルバハル [ スペイン語→日本語訳 ] 校閲

第2話:<宇宙レースと桃クッキー> La carrera espacial y las galletas
大好きな日本のみなさまへ


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