生活を立て直すための入院(後編)
精神科入院の話、今回で最後になります。
前回も書いた通り、入院時の日中や夜は基本的に自由に過ごすことができます。
周りを見てみると、日中外出されている方も多く、最初は病室にこもりがちだった私も、しばらくすると外に出るようになりました。
病棟は常に鍵がかかっているため、外出の際には許可を取って出かけます。
いわゆる、閉鎖病棟というものです。
午後になると、病院の周りを散歩するようになりました。
入院していたのは去年の10月でしたが、日中はまだ暑く、体力の落ちていた私にはそれがなかなか堪えました。
病院は丘の上にあるため、帰り道は坂を上りながら、ゼーゼーと息を切らしていたのを覚えています。
敷地内は禁煙なので、敷地の外でタバコを吸う方や、玄関横の自販機で飲み物を買う方の姿もよく見かけました。
私も、丘を下った先にあるスーパーでアイスクリームを買って、外のベンチでよく食べました。
「1か月で退院する」という目標があったので、体力づくりも意識して取り組みました。
中には、散歩というより競歩のようなスピードで歩いている方もいて、すれ違うたびに少し驚いたりもしました。
基本的には患者同士の交流はありませんでしたが、時間がある分、自然と人間観察をするようになります。
「あの人はどんな仕事をしているんだろう」
「いつも来ているお見舞いの方は、ご家族なのかな」
そんなふうに、ぼんやりと周りを見て過ごす時間もありました。
入院中、ひとつ大きな決断をしました。
仕事のことです。
どうするべきか悩んでいましたが、入院して1週間ほど経った頃、退職するという意思が固まりました。
主治医の先生と精神保健福祉士さんに相談し、「今の勤務内容や今後のことを考えるとそのほうがいい。これからは我々がバックアップするから」と背中を押していただきました。
意思が決まってからは早く、上司に連絡を取り、外出許可をもらって会社へ出向き、面談と退職願の提出を済ませました。とても緊張したのを今でも覚えています。
その後は総務部とのやり取りが必要だったため、しばらくは会社の携帯を持ったまま過ごすことになります。
退職後の傷病手当金の手続きなどについても、精神保健福祉士さんが会社と調整してくださり、本当に助けていただきました。
勤怠の締めの関係もあり、私は入院したまま退職日を迎えることになりました。
今振り返ると、大きな感慨があったわけではありませんが、同僚の方々に最後の挨拶ができなかったことだけは、少し心残りです。
上司には1度病院に来てもらい、手元にあった会社の備品を直接手渡しました。
入院生活を通して規則正しい生活を送ることができたおかげで、当初の目標通り、1か月で退院することができました。退院の日は11月2日。その日付は今も鮮明に記憶に残っています。
日常生活の過ごし方は病院側もちゃんと把握されているようで、この患者さんは退院しても大丈夫ということになったのだと思います。
入院中は通用口から出入りしていた私でしたが、退院手続きを終えて正面玄関を出たとき、それまでの出来事が一気にあふれてきて、気づけば涙が止まりませんでした。
あれだけ不安だった入院も、今では「入院してよかった」と思えています。
改めて振り返ると、入院してよかったことはいくつもあります。
起床と就寝時間が整い、生活リズムが戻ったこと。
3食きちんと健康的な食事ができたこと。
毎日シャワーを浴びられたこと(風呂キャン勢なので…)。
散歩を通して少しずつ体力が戻っていったこと。
1ヶ月で退院するという目標を立ててそれを実行できたこと。
そして、看護師さんやスタッフの方々と関わることができたこと。
一人暮らしのままでは、どれも叶うことはなかったものばかりでした。
あの1か月は、間違いなく自分にとって大切な時間でした。
今でも忘れることのない経験です。
いま、同じような悩みを持つ方にとって、入院という選択が決して後ろ向きなことではなく、未来に向けた前向きな一歩として捉えられるような記事を書きたいと思い、ここに記します。
【免責】
この記事は、私が体験し感じたままを綴った記事です。
別の病院や施設では、今回の記事のような治療方針や院内の雰囲気とは違う場合があります。
そのことについてはご承知の上ご一読ください。
心配な方は、病棟などの事前の下見をご検討ください。
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