【シロクマ文芸部7月④】逃げてばかりではいけないよ
シロクマ文芸部の1カ月の全お題を使って一つの物語を作っています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。第1回目は20字小説、2回目以降は文字数制限のないお話というスタイルで毎月挑戦中です。
上記プラス、おばあさんが読み聞かせをするというスタイルを今年は取ることにしました。そのため、シロクマ文芸部のお題から始まる部分が読み聞かせとなり、その後に会話が続く形で物語が展開します。2025年、12個のお話を上手く完成させられるか、お付き合いいただければ幸いです。
7月の物語1回目はこちら👇
7月の物語2回目はこちら👇
7月の物語3回目はこちら👇
夕焼けはやくこ~いこい♪
ミチルを追うアレは楽しそうに歌っている。目も耳も口もないのに。息遣いさえミチルには感じられる。恐怖がミチルの全身を覆い動きを鈍くする。ただでさえ砂浜で足がとられるのに。
アレも動きにくそうにウネウネしているが、逃げるミチルを追うのが楽しくて仕方ないらしい。恐怖で固まりながら逃げるミチルとウキウキするアレの距離はジリジリッと縮まっていく。
おかあさぁん!
そう叫んだ瞬間、逃げてと叫んだ母はどうなったのだろう、と気になりだす。アレは母をどうしたんだろう?母は無事なのだろうか?そう思ったミチルの足はピタリと止まる。
アレ?ニゲナイノ?
アレは不思議そうにウネりを止めた。目がないのにアレの視線を感じるおぞましさに耐えながらミチルは対峙する。
ニゲルノアキラメタンダ
にたあっとしながらアレはミチルの足に絡みつく。湿り気と粘りの入り混じった感触がミチルの右足を這い上る。その時、ミチルは歯を食いしばりながら叫んだ。
「逃げてないもん!夕焼けの前には朝焼けがあるもん!夕方の前には朝も昼もあるもん!」
そう叫んだ瞬間、海から朝陽が顔を出す。アレはこの世のものとは思えない声を出し、溶けていく。その姿は醜くひどい臭気を伴っていた。
自分の放った言葉の強さに衝撃を覚えたミチルを白く輝く光が包み込んだ。
📚📚📚
「ミチルちゃん、強い!」
「やっつけちゃった!」
「そうね……強いね」
孫2人はミチルの強さに感動していますが、おばあさんは恐怖の方が勝っているようです。顔はどことなく青ざめています。
「おばあちゃん、どうしたの?」
「ねえ、今晩、おばあちゃん一緒にネンネしてもいい?」
あはは、と孫2人は笑い、布団のはしに寄り「どうぞどうぞ」と手招きをしました。
「ありがとうございます」
心の底からのお礼をいいながら、おばあさんは天使2人の横で眠りました。
(つづく)
小牧幸助部長、今週もありがとうございました。
来週が7月1カ月物語の最終回です!
