【#シロクマ文芸部 1月⑤】お題:月の花
シロクマ文芸部の1カ月の全お題を使って一つの物語を作っています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。今年で3年目の挑戦となります。
第1回目は20字小説、2回目以降は文字数制限のないお話というスタイルで毎月挑戦中です。
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月の花を欲しいと雪だるまは言う。
お正月から僕は雪だるまに振り回されっぱなしだ。本を読むと騒いだり、早朝に寂しいからと起こされたり。
SNSが発達した今、「映える」からという理由だけで、雪だるまのわがままは許されていいものだろうか?
丸いフォルムで僕におねだりをするさまは確かに可愛らしい。期間限定的な可愛らしさだとは思う。しかし、僕の私生活を振り回されてまで叶えなければいけないものだろうか?
「で?」
そう言って黙ったままの僕を雪だるまは不思議そうに見た。
「……」
「……」
しばらく沈黙が流れた。
「月の花が欲しいんだけど……」
「なんで?」
「なんでってそりゃ、聞いたから……」
なぜかモジモジしている。
雪玉が絶妙なバランスでゆらゆらと揺れた。
僕はため息をついた。
そうなんだよ、こいつは。溶けたくないという願い以外は全て、その場の思いつきなんだ。
「じゃあ、探せばいいじゃん」
もう振り回されるのはうんざりだ。僕はその場を立ち去った。これから二泊三日の出張なんだ。単なるわがままに付き合ってられるか!足早に去る僕を雪だるまは黙って見ていた。
いつもは大騒ぎをするくせに、雪だるまはなぜか静かだった。
「今日は、季節外れの気温となりました」
4月の気温だとスマホニュースで知ってはいたが、こんなにも温かいとは。駅に降り立った僕が見た景色は雪のまったく残っていない光景だった。
ふ~ん、見事なものだな。
なんとなく物足りなさを感じながら家路をたどる。
年末に振った雪は見事に消えていた。この地域では珍しいと言われていた大雪でも4月の気温には勝てなかったようだ。
そりゃそうだよな。
首に巻いていたマフラーをはずし、鞄につっこむ。ダウンの前も開けた。それでも暑い。近所の子どもたちとふざけて雪だるまを作ったのが嘘みたいだ。
雪だるまを作って、それで風邪ひいて寝正月になって。治ったら雪だるまに騒がれて振り回されたんだよなぁ。
「僕、雪だるまとなにを約束したんだっけ?」
泣いてまで主張した約束をやっと思い出せたのに。
部屋に入り、荷を解く。
これ、あげようと思っていたんだけどな……まさか溶けちゃうとはな。
邪険な態度を取ってしまったことにチクリと胸が痛む。
⛄⛄⛄
2月、お正月を思わせる寒さが戻って来た。
「ううう~寒い」
ダウンの前をしっかりと閉め、会社へと向かう僕は
「よう!」
と呼び止められた。
「え!溶けて……?」
「溶けるもんかよう♪」
雪だるまがいた。絶妙なバランスで雪玉をフルフルと震わせてたっている。
「週間予報で暖冬だって言ってたから」
SNSで動く雪だるまのファンになったという人が雪だるまを町はずれにある、冷凍庫へ保管してくれていたそうだ。
「寒くなるまで出れなかったんだ」
雪だるまだから顔色は変わらないが、なんとなく頬が紅色になった気がする。
「さみしかった?」
と雪だるまが聞くので、
「寂しくなんか……」
と言いかけたが、ごそごそと鞄からあるものを取り出した。
「あ!約束忘れてなかったんだ!」
「まあね」
差し出したのは出張土産のお菓子だった。
「わー♪「月の花」、楽しみにしていたんだ♪」
どういう風に動かしているのかわからないが小枝の腕で器用に小袋を開け、パリリと「月の花」を食べる。
雪だるまが顔が溶けるほど涙を流して主張していた約束(②の話参照)は「月の花」というお菓子を買ってくるというものだった。雪だるまを作りながら、近所の子に「出張に行ったら「月の花」を買ってくる」と話していたのをしっかりと聞いていたらしい。
約束をした覚えはないのにとずっと考えていたが、出張先で「月の花」を見つけたときに、そのことを思い出したのだった。
うれしそうに食べる雪だるまの身体がぽっとレモンイエローに光る。
「綺麗だな」
「綺麗だろう?」
雪だるまはうれしそうに笑う。
「見せたかったんだよ。せっかく作ってくれたから」
通り過ぎる人たちが、
「きれー」
といってスマホを雪だるまに向ける。
「おい!「月の花」が足りないぞ!もっともっと!」
雪玉を絶妙なバランスでグラグラさせながら主張する雪だるまに、僕は苦笑いをしながら「月の花」を渡す。
じゃあ、僕は会社に行くから、と言ったが雪だるまはポーズを取るのに忙しく返事もしない。
会社に着くころにはトレンドは「レモンイエローの雪だるま」が急上昇していることだろう。
雪だるまを作ったとき、ぼくは酔っぱらっていた。子どもたちが色々と言うことを「うん!いいよ」と安請け合いした気がする。
一緒に作った子どもたちを探して、あのときなにを話していたか確認しないと。また顔が溶けるほど泣かれてはたまったものじゃないから。
1カ月予報だとしばらくは寒波がこの地方に居座るらしい。会社までの道もまた雪で真っ白だ。
少しでも雪だるまを居心地よくしてやろう、真っ白な道を歩きながらそう思ったら、なんだか足が軽くなった。
小牧幸助部長、今週もありがとうございました!
ずっと貼り続けていたカクヨム連載の「きれいなものだけ」👆が本日無事に10万字を超えました🙌
人生初10万字です!
今、なぜか肩甲骨がだるいです。
ほっとしたせいでしょうか?
今日は👇の2話を投稿しました。
第38話が最終回です。ちょっと終わり方がイヤミス風です。
ホラーは読めない方がいらっしゃるのであまりおすすめはできませんが、もし、人間を描いた小説が好き、と言う方がいらしたら読んでみてください。
どの基準で審査の足切りになるのかわからないのですが、多分、あまり足切り対象レベルの読了率と評価です。
審査されないで終わるのは悲しいなと思いますが、カクヨム内で話題にならないのは、それだけの文章力なのかなと思いもします。
今は書き上げた高揚感でルンルンですが、明日辺りは「うわー酷い出来だ」と涙目になりながら修正をしているでしょう。
でもね、そういう積み重ねが文章修行なのかなと明日に向かって頑張ります!
10万字書けたってことを成功体験として頑張ります!
宣伝でお騒がせしてしまい申し訳ありませんでした!
