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【#シロクマ文芸部8月④】最終回

シロクマ文芸部の1カ月の全お題を使って一つの物語を作っています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。第1回目は20字小説、2回目以降は文字数制限のないお話というスタイルで毎月挑戦中です。

上記プラス、おばあさんが読み聞かせをするというスタイルを今年は取ることにしました。そのため、シロクマ文芸部のお題から始まる部分が読み聞かせとなり、その後に会話が続く形で物語が展開します。2025年、12個のお話を上手く完成させられるか、お付き合いいただければ幸いです。

8月の物語1回目はこちら👇

8月の物語2回目はこちら👇

8月の物語3回目はこちら👇

星を買うと小鳥は少年の元へ少しでも早く戻ろうと、せいいっぱいの力で羽を動かしました。この星は少年の写真と交換した七色に輝く雲で買ったものです。フワフワの綺麗な雲を渡された時、小鳥はお店の人にたずねました。

「どうして写真がこんなに綺麗な雲になるの?」

お店の人はフワフワとした雲を小鳥の首に巻き付けながら、答えてくれました。

「それだけこの写真が美しいということさ」

フワフワの雲と共に戻った小鳥を見て、少年の顔が輝きます。そうして、小鳥にふたたび願い事をしました。

「次は星が欲しいんだ」

友達からの願いです。小鳥はすぐに飛び立ちました。虹のように輝く雲で星を買い、小鳥は少年へと持ち帰ったのです。星を買うという初めての体験に小鳥の身体は喜びでいっぱいになりました。

「星って買うことができるんだね!」

星を買った時のことを話しながら小鳥は、友達の役に立てたか少し不安になり、チラリと少年の顔を見ます。ニコニコと話を聞く少年の顔を見て、小鳥はホッとしました。少年の笑顔から察するに間違った星ではなさそうです。

少年はそっと手を伸ばし、小鳥の胸で輝く星を触りました。嬉しそうではありますが、目はどこか哀しそうな光をたたえているようにも感じられました。

ペカリと星が輝き、それに合わせるかのように少年の目もペカリと光を放ちます。

ペカリペカリ

ペカリとするたびに少年の姿は透けていくように思え、小鳥は叫びました。

「もっと!もっとないかな?君のために!僕、友達だから!」

ありがとう、と言う少年はさらに透き通っています。今にも消えてしまいそうです。せっかく友達になったのに!初めての友達なのに!小鳥はさっきまでの嬉しさも吹き飛び、悲しみの声をあげました。

「行かないで!友達!行かないで!」
「最後のお願いを聞いてくれる?」

消えそうになりながらも少年は小鳥に語りかけます。

キミノ羽バタキデボクヲ……

⭐⭐⭐

その村には、夜空を見つめるひとりの女の人がいました。戦争が終わって何年も経つのに、まだ息子を待つ母親でした。女の人は小鳥と友達になった少年のお母さんだったのです。母ひとり子ひとりで仲良く暮らしていたのを、無慈悲な戦争が引き離したのです。

戦争に行くと決まった時、なんて親孝行な子だろうと村の人達は褒めました。寂しそうに黙る母親に、頼もしい笑顔を見せ少年は旅立ちました。ある日、少年は勇敢だったと伝える手紙が届きました。村の人達は、立派な息子さんだと褒めたたえ、女の人は黙ってそれを聞いていました。

その知らせを受け取ってから、女の人は夜空を見つめるようになったのです。

「夜露は体にこたえるから」

暫くの間、声をかけてくれる人がいましたが、黙って夜空を見続ける女の人にどう接してよいかわからなくなり、今では声をかける人はいません。そのうち、女の人が夜空を見ていても誰も気にしなくなりました。

おかげで女の人は気兼ねなく夜空を眺めることができます。黙ってはいましたが、心の中は雄弁でした。

「ともちゃん、今日、川でね」
「ともちゃん、外れの森でね」

毎晩毎晩、何年も何年も夜空に向かい、声を出さずに語り続けますが、話は尽きません。少年と母親の思い出は深く広く果てしなく心にしまわれているからです。

ある夜のことです。いつものように夜空を見つめているとペカリと小さく光るものが見えた気がしました。不思議に思った女の人は心の声を止め、光を見つめます。だんだんとその光は大きくなり、女の人に近づいてくるように感じられました。

流れ星?それとも隕石?

流れ星なら、ともちゃんが戻ってくるようにお願いをしよう。女の人は目を閉じ、そっと願いを三度唱えました。すると……

オカアサン……

女の人の耳に息子の声が聞こえたのです。

「ともちゃん?」

キョロキョロと見回しますが、息子の姿はありません。

オカアサン……カエッテキタヨ……トモダチト

声のする方を慌てて見るとそれは夜空から少しずつ近づいてきた光でした。光の中に少年と小鳥がいます。気づくと女の人は光に包まれていました。

「とも……ちゃん?ともちゃん!」

光の中で女の人は我が子をしっかりと抱きしめました。

「帰ってきてくれたのね……ありがとう……」

流れる涙をぬぐおうともせず、女の人は息子の手を取り家の中へ入ろうとします。

「お腹が空いたでしょ?さ、早く!」

少年は光の中で少し困った顔をしました。

オカアサン、ボクハコノ光カラ抜ケ出セナインダ

少年は、命が消える少し前に小さな友達に会えたこと、その友達の小さく力強い羽ばたきのおかげでここまで来れたことを説明しました。

アノネ、ボクノカワリニ

少年は、手のひらでぐったりとしている小鳥を母親に渡します。

無理ヲ言ッテ、長ク飛ンデモラッタカラ
ボクノ友達ナンダ、オ願イネ

胸に星型の模様をつけた小鳥と、女の人が一緒に暮らすようになった理由を知る人は誰もいません。

📚📚📚

姉も弟も泣いています。おばあさんは黙ってふたりの背中を撫でていました。

「戦争ってきらい」
「なくなればいいのに」

口々に言う孫達に布団をかけるおばあさんの目にも光るものがありました。

(おわり)

小牧幸助部長ありがとうございました。

⭐⭐⭐

8月のお題を見た時、なぜか「幸福の王子」のお話を思い出し、これをベースにしようと閃きました。「幸福の王子」では王子の願いを叶えるのはツバメですが、みんフォトのスズムラさんの小鳥があまりに愛らしかったので、ツバメから変更しています。こちらはスズメでしょうか?

お?スズメが活躍するお話といえば「真面目にふざける同盟」の福島太郎さんの絵本がありましたね。

文章もイラストも美しい本です。