【WWDC26感想】Macは「ゲームができないから」と書いた僕が、それでもMacに乗り換えたいと思い始めた話──WWDC2026が変えた選択軸
はじめに
リビングのデスクで、27インチのモニターをAppleのライブ配信に切り替えました。
2026年6月8日、WWDC 2026。Appleが毎年夏に開催する開発者向けカンファレンスです。今年はAI関連の大型アップデートが来るという噂が事前から出回っており、半信半疑で眺め始めました。「どうせSiriが少し賢くなる程度だろう」と。

でも、発表を見るのが進むにつれて、じわじわと頭の中で何かが変わるのを感じました。
Appleは、本気でした。
以前、この note にこんな記事を書きました。
その記事の答えは明快です。
「ゲームができないから」。
LinuxはProton技術でWindowsゲームが動く。MacはAppleのエコシステムに閉じており、SteamのWindowsタイトルをネイティブに動かすのが極めて困難です。だからLinuxのほうが「メイン環境」として優れている、と。
今でもその考えが間違いだったとは思っていません。
でも、正直に言います。
次のPC更新時期が来たら、Macへの乗り換えを本気で検討しようと思っています。
その理由を、4つに整理してお話しします。
理由①:ローカルAIのコスト問題をMacが解決する
Radeon環境でローカルAIを動かす現実
僕のメインPCのGPUはAMD Radeon RX 7800 XTです。
ローカルLLMの世界では、これがじわじわとコストになります。OllamaやLM Studioなどのツールはもともとはほぼ全てNVIDIA CUDAを前提に最適化されており、AMD GPUへの対応はCUDAと比べると深さが異なります。新しいモデルへの対応速度でも、CUDAとROCmには差があることが多いです。
これはNVIDIAを選ばなかった自分の選択の問題でもありますが、そもそもRadeon環境でローカルAIを快適に動かすための情報やサポートが少ないという構造的な現実があります。
VRAMの壁という本質的な問題
さらに根本的な問題として、NVIDIAのVRAM容量の上限があります。
RTX 4090:24GB
RTX 5090:32GB(現行最高峰)
大型モデル(70Bクラス)を動かそうとすると、量子化してもすぐにVRAMの上限に当たります。RTX 5090は50万円を超えます。「ローカルAIのためだけに」その金額は、今年11月に第一子が生まれる予定の僕には、容易な選択ではありません。
Apple Siliconが持つ根本的な構造優位
ここでApple Siliconの話になります。
M5 Maxの最大構成は128GBの統合メモリです。CPUとGPUが同じメモリ空間を共有するApple独自のアーキテクチャにより、ローカルAIの文脈では「VRAMの上限」が実質存在しません。
70Bクラスのモデルが、追加ハードウェアなしに1台で動きます。消費電力は、RTX 5090の約450Wに対してMac Studio M5 Maxは25〜35W程度。M5 Maxでは70Bモデルの推論速度が約28トークン/秒という計測も出ており(InsiderLLM, 2026)、これは人間が文章を読む速度を超えています。
スペック対コストで比較すると、ローカルAI用途においてMacはNVIDIAの高額GPUを凌駕するコスパを持つ可能性があります。
RTX 5090搭載のPC(GPU単体50万円超+PCトータルで70〜100万円)と、Mac Studio M5 Maxの価格を同じ土俵に乗せたとき、「どちらがローカルAIに向いているか」という問いの答えは、もはや自明ではないのです。
理由②:WWDC 2026が証明したAppleのAIへの本気度
2026年6月8日のWWDC 2026では、Appleのいくつかの大型発表がありました。
macOS 27 Golden Gate:Apple SiliconのみのOS
macOS 27(コードネーム:Golden Gate)は2026年9月のリリース予定です。そしてIntel Macへのサポートが完全に廃止されます。
これはAppleが「今後のOSの進化はApple Siliconのためだけに最適化する」という宣言に相当します。Apple Intelligenceの機能もApple Siliconに限定されており、チップとソフトウェアが一体化して進化するAppleの設計思想が、より明確になりました。
Apple Foundation Modelのオンデバイス推論
Apple Intelligenceの中核にあるApple Foundation Modelは、デバイス上で動作するオンデバイスAIです。
クラウドにデータを送らずにAI処理ができる——プライバシーを守りながら強力なAI機能を使えるというこの方向性は、ローカルLLMユーザーが求めていた理想に近いものです。
さらに、MLX(Apple独自のAI推論フレームワーク)の成熟が急速に進んでいます。OllamaのMLXバックエンド対応が強化され、llama.cppのmetal対応も実用レベルに達しており、Apple Silicon上でのローカルLLM推論環境は着実に整備されています。
Siri AIの大幅刷新
Siriも生まれ変わりました。Google Geminiを内部に組み込み、システム全体の文脈理解とオンスクリーン把握ができる「Siri AI」として再設計されています。
発表前は「またSiriの小改修か」と正直思っていました。でも今回のSiri改刷はGeminiを活用したマルチモーダル・エージェント的な設計であり、これまでのSiriとは別物です。「デバイス上AIアシスタント」として本格的に機能するレベルに近づいています。
WWDC 2026全体を通じて感じたのは、「AppleはAIを付加機能として扱っていない」ということです。ハードウェア・OS・アプリ・クラウドの全レイヤーにAIが統合される設計が、今年の発表で明確になりました。
理由③:NVIDIAが「必須」でなくなりつつある時代
数年前のローカルAIは「NVIDIAのGPUがないと話にならない」という世界でした。CUDAというNVIDIA独自の計算基盤は、ローカルLLMのほぼすべてのツールが前提にしていた基盤です。
RadeonユーザーやApple Siliconユーザーは、常にその「外側」での戦いを強いられていました。
しかし2026年に入り、状況が変わってきています。
OllamaがMLXバックエンドに本格対応し、Apple Silicon上での動作が劇的に改善
llama.cppのmetal対応が成熟し、macOSでの高速推論が実用レベルに到達
GGUF形式のモデルはNVIDIA/AMD/Apple Silicon問わず動作し、エコシステムが拡大
AppleがMLXを積極的に更新し、新しいモデルへの対応速度が向上
ローカルAIの「NVIDIA一強」時代は、Apple Silicon(と一部AMD)の台頭によって崩れつつあります。
NVIDIAがなくてもローカルAIが十分動く環境として、Apple SiliconのMacは現時点で最も成熟したプラットフォームです。
Radeon RX 7800 XTでローカルAIを動かすこと自体は技術的に可能です。でも同じことをMacでやった場合、圧倒的に楽で速く、将来のアップデートへの対応も確実です。「NVIDIAを選ばなかった自分」の代替として、Macが現実的な選択肢になってきたのを感じています。
理由④:ユーザー数と環境均一性が生む安心感
LinuxをメインOSとして使い続けることの最大の自由は、カスタマイズ性です。NixOSなら設定をコードで書き、再現性のある環境を維持できます。
でも、その自由には「サポートを自分で取りに行く」コストが伴います。
情報量の構造的な差
ローカルAIを動かすための記事や情報は、圧倒的にmacOS向けが多いです。
新しいモデルが出たとき、最初に「macOSでの動かし方」が登場し、次に「Windowsでの方法」が来ます。Linuxはその後、Radeon向けの情報はさらに後になることも珍しくありません。
これはユーザー数の差から来る構造的な問題です。AI・クリエイティブ系の用途ではMac率が高く、情報量・日本語解説の充実度・コミュニティへのアクセスしやすさ、すべてにおいてLinux/Radeon環境より優れています。
環境均一性というメリット
Linuxはディストリビューションによって環境が異なります。NixOSは特に特殊な部類で、「NixOSで動きますか?」への回答は他のディストリビューション以上に情報が少ないです。
Macは全員が同じmacOSを使っています。バージョンの違いはあっても、根本的なアーキテクチャは共通です。新しいAIツールが出たとき、Macユーザーの誰かが試した情報がすぐに手に入る確率は、Linux/Radeon環境より格段に高いです。
今年の11月に第一子が生まれます。PC環境の設定や調査に費やせる時間は今後さらに限られます。「詰まる時間を最小化する」という観点でも、Macの環境均一性は真剣に魅力的です。
Macへの乗り換えを検討すべき人・しなくていい人
検討すべき人
ローカルAIを本格的に使いたいが、NVIDIAの高額GPUを買いたくない人
AI活用の情報をすぐに入手したい、環境構築で詰まる時間を減らしたい人
プライバシーを守りながらオンデバイスAIを使いたい人
iPhoneやiPadとの連携を活用したい人
ゲームはゲーム専用機(Switch 2、PS5、ハンドヘルドPC)で完結できる人
すぐには乗り換えなくていい人
SteamのWindowsゲームをメインPCで遊ぶことを重視する人
Linuxのカスタマイズ性と自由度に価値を感じている人(特にNixOSユーザー)
自作PCの組み立てや設定そのものを楽しんでいる人
すでにNVIDIA環境を持っており、ローカルAIが快適に動いている人
それでもすぐには乗り換えない理由
ここまでMacへの関心を書いてきましたが、「今すぐ乗り換える」には踏み切れない理由もあります。
ゲームの問題はまだ解決していない
以前の記事で書いた「Macに移行できないたった1つの理由」——ゲームができないこと——は、2026年現在もほぼ変わっていません。
Steam上のWindowsタイトルをMacでネイティブに動かすのは、まだ現実的ではないです。「ゲームはROG Ally、作業はMac」という住み分けは理論上可能ですが、機器が増えることと管理コストは増します。
NixOSの設定資産が惜しい
NixOSで積み上げてきた設定ファイル(flake.nix、configuration.nix)は、僕のデジタル環境の「骨格」です。これをmacOSに移行するコストは小さくありません。nix-darwinでmacOS上でもNix管理ができますが、LinuxのNixOSとは異なる部分があります。
自作PCの「作る楽しさ」が消える
自作PCの醍醐味は、道具を「作る」行為そのものにあります。パーツ選びから組み立て、OSのインストール、設定の最適化——これは中学時代にPSPのカスタムファームウェアを入れた頃から連なる「ハードをハックする楽しさ」です。
Macは素晴らしい完成品ですが、開けて改造できない閉じた世界でもあります。この「作る喜び」がMacにはありません。これは合理性の問題ではなく、純粋に趣味の話です。
結論:次はMacかもしれない。みんなはどう?
整理します。
ローカルAIの時代において、Macは「コスト・性能・サポート・将来性」の4軸すべてで、NVIDIAを搭載したLinux/Windows PCと真剣に戦えるプラットフォームになってきています。
WWDC 2026の発表は、Appleがこの方向性を「本気で」追いかけていることを証明しました。
LinuxへのこだわりやNixOSの快適さ、自作PCの楽しさは今も本物です。でも「メイン環境を何にするか」という問いの答えが、AI時代においては変わりつつあることを感じています。
ぶっちゃけ、みんなはどうですか?
Mac派?Windows派?それともLinux派でローカルAI活用中?
次の更新時期がいつ来るかは分かりませんが、今の僕の頭の中には確かに「次はMacかもしれない」という選択肢が入ってきています。同じように悩んでいる方がいたら、ぜひコメントで教えてください。
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おわりに
「Macにできないたった1つの理由」を書いたとき、Macは選択肢の外にありました。
今日、その選択肢が「外」から「中」に入ってきました。それだけでも、大きな変化です。
ローカルAIの本格化と、AppleのAIへの本気の取り組みが、Linux使いの僕の選択軸を動かした——それが正直なところです。
次の更新時期まで、もう少し考え続けます。
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