ドラクエ10にハマった還暦の母の高齢者向けガジェット選び——デジタルデバイドを家族で乗り越える方法
「お母さん、最近どう?」
久しぶりに実家に電話をかけると、返ってくる答えが最近いつも同じです。
「今ね、ドラクエ10が楽しすぎて!昨日もう少しで新しいエリアに進めそうだったんだけど、夜中まで頑張っちゃって…」
還暦を超えた僕の母が、今まさにMMORPG(多人数参加型オンラインRPG)にどハマり中です。毎日PS5の前に座り、魔法使いのキャラクターを操って冒険を続けているそうです。
息子としては、元気にしてくれているのが何より嬉しい。そして同時に、ふと気づいたことがありました。
「そういえば、母のデジタルリテラシーって、いつの間にかすごく上がってるな」と。
数年前まで、スマホの操作で詰まるたびに電話をかけてきていた母が、今ではオンラインゲームの課金方法を自分で調べ、ゲームのコミュニティで他のプレイヤーと交流し、PS5のアップデートも一人でこなしています。
この変化は何だったのか。そして、まだデジタルの入口に立てていない高齢の親御さんを持つ方に向けて、「どんなガジェットが助けになるか」を今日は真剣に考えてみたいと思います。
デジタルデバイドは「機械が苦手」ではなく、「入口がなかっただけ」
「うちの親は機械に弱くて」という言葉を、よく聞きます。
でも、僕の母を見ていると、本当にそうなのかな?と思うんです。
母はもともとゲーマーでした。嫁入り道具がファミコンだったというくらい、ゲームへの愛着は筋金入りです。ドラクエ3を徹夜でプレイし、僕はひらがなをドラクエで覚えたという家庭環境でした。
ただ、そんな母でも、スマートフォンが普及し始めた時代には戸惑っていました。タッチパネルの感覚、アプリのインストール方法、通知の意味、Wi-Fiとモバイルデータの違い。僕たちにとっては「空気のように」わかることが、親世代にとっては一つひとつが未知の概念なのです。
「機械が苦手」なのではなく、「当たり前とされている知識の前提が共有されていない」だけ。
そしてその溝を埋めたのが、ゲームという「強烈な動機」でした。
好きなものがあれば、人は覚える。
ドラクエ10をプレイしたい一心で、母はPS5の操作を覚え、オンラインのアカウント管理を覚え、サブスクの支払い設定まで自分でこなすようになりました。
「やる気」と「入口」さえあれば、デジタルは決して敷居の高いものではないのだと、母が証明してくれた気がします。
母がゲームを通じてデジタルに慣れていったプロセス
少し時系列を整理します。
母がゲームから離れていた時期がありました。僕がメンタルを病んでいた時期と重なって、実家全体が暗い空気に包まれていた頃です。母も大病を患い、趣味どころではない状態でした。
その後、僕が回復し、妻と入籍して実家を出るタイミングで、使わなくなったPS5とテレビを母にプレゼントしました。するとどうでしょう。母のゲーム熱が再燃し、最初はオフラインのRPGを楽しんでいたのが、気づいたらオンラインゲームのドラクエ10に辿り着いていたのです。
最初は僕に電話してくることも多かったです。「ログインってどうやるの?」「フレンドってどこから申請するの?」「プレミアムって入ったほうがいいの?」。
でも3ヶ月もすると、電話の内容が変わってきました。「今日ね、レベルが100を超えたよ!」「新しい職業を解放したんだけど、どれが強いと思う?」と、ゲームの内容そのものを語るようになったのです。
この変化の裏側に、デジタルリテラシーの着実な積み上げがありました。
ゲームを通じて、検索することを覚え、YouTubeで攻略動画を見ることを覚え、コミュニティサイトで情報を集めることを覚えた。知りたいことがあれば自分で調べられる、という感覚を掴んだのだと思います。
「入口」が大事です。その入口を、ガジェット選びで整えることができるはずです。
高齢の親に本当に勧めたいガジェット5選
ここからは、母の経験も踏まえながら、「高齢の親御さんへのガジェット選び」について具体的にご紹介します。選定基準は「操作が直感的であること」「文字が大きく見やすいこと」「家族とつながれること」の3点です。
1. Amazon Fire HD 10(大画面タブレット)
高齢者へのガジェットで、僕が最初に勧めるのはタブレットです。
スマートフォンは画面が小さく、文字入力がしづらく、「電話がかかってくるもの」というイメージが強くて使いにくいと感じる方が多いです。一方でタブレットは画面が大きく、動画も見やすく、「触れる」感覚が直感的です。
中でもAmazon Fire HD 10は、価格と使いやすさのバランスが優秀です。プライム会員であれば動画見放題(Prime Video)、音楽聴き放題(Prime Music)、Kindle本の読み上げ機能まで使えます。難しい設定なしに、リモコン感覚で使えるのが高齢者には大きなメリットです。
また、Alexaが搭載されているため、「アレクサ、今日の天気は?」「アレクサ、〇〇のニュースを教えて」と声で操作することができます。手先が不自由になってきた方にも、音声操作はとても助けになります。
おすすめの使い方:
孫の写真・動画を大画面で見る
Zoomで家族とビデオ通話をする
好きな演歌や映画をゆっくり楽しむ
Kindleで文字サイズを拡大して読書する
2. Echo Show 8(スマートディスプレイ)
「スマートスピーカー」というカテゴリのデバイスですが、画面付きの「Echo Show」シリーズは、高齢者にとって非常に優秀な相棒になります。
設定さえしてあげれば、親が「アレクサ、息子(自分の名前)に電話して」と言うだけで、スマホもタブレットも操作せずにビデオ通話ができます。これは、デジタル機器の操作が苦手な親御さんでもハードルなく使える仕組みです。
画面には今日の天気、カレンダーの予定、ニュース、写真スライドショーが表示されます。リビングに置いておくだけで、生活情報のハブになってくれます。
さらに、「Alexa Together」というサービスを使えば、離れて住む家族が親の活動状況を確認したり、緊急時の連絡手段として活用したりすることもできます。
3. らくらくスマートフォン vs 普通のスマートフォン——正直な比較
「高齢者向けスマホ」といえば、ドコモの「らくらくスマートフォン」が思い浮かぶ方も多いと思います。文字が大きく、ボタンがシンプルで、確かに「スマホ初心者」には入りやすいデザインです。
ただ、僕の母の経験を踏まえると、正直に言わせてください。
長期的に見ると、普通のAndroidスマホの方がいいと思っています。
理由は2つあります。
ひとつは「できることの幅の差」です。らくらくスマートフォンは使いやすさのために機能が制限されており、ゲームアプリや一部のサービスが動かないことがあります。母のようにオンラインゲームを楽しんだり、YouTubeを普通に使いたいという方には、制限が逆にストレスになります。
もうひとつは「世代を超えた会話のしやすさ」です。子供や孫が使っているのと同じ操作感のスマホを使っていれば、「これどうするの?」と聞いたときに説明しやすい。「あのボタンを押して」「上にスワイプして」という言葉が通じる共通言語ができます。
具体的なおすすめは Galaxy S26 シリーズです。
理由はOSのアップデートが長期間保証されていること、カメラが優秀で孫の写真がきれいに撮れること、そしてAIアシスタントが音声操作をしっかりサポートしてくれることです。
文字サイズは設定で大きくできますし、画面の明るさや色味も調整可能。「らくらく」な設定は、自分たちで作り込んであげることができます。
4. 見守りカメラ(Tapo C200 など)
最後は、少し視点を変えたガジェットです。
離れて暮らす親御さんを持つ方なら、「元気でいるかな」と気になる夜があると思います。そういった見守り・安心のためのガジェットとして、室内設置型の見守りカメラをご紹介します。
TP-LinkのTapoシリーズは、スマートフォンのアプリから映像をリアルタイムで確認できるIPカメラです。設定もシンプルで、親のリビングに置いておくことで、日常的な様子を確認することができます。
「監視しているみたいで嫌だ」と感じる方もいるかもしれません。導入するかどうかは、親御さんとしっかり話し合ってからにすることをおすすめします。ただ、母から「何かあった時に見てもらえる安心感がある」と言ってもらえたことで、我が家では前向きに設置を検討しています。
設定してあげると喜ばれる3つのこと
ガジェットを贈るだけでは、宝の持ち腐れになりがちです。
実家に帰った際や、セットアップのタイミングで、ぜひ一緒にやってあげてほしいことを3つ挙げます。
① 文字サイズを最大にする
スマホもタブレットも、設定アプリから文字サイズを変更できます。デフォルトのままでは小さいと感じる方が多いので、最初から一番大きいサイズに設定してあげましょう。「こんなに大きくしていいの!?」と驚かれること間違いなしです。
② よく使うアプリをホーム画面に並べる
「LINE」「電話」「カメラ」「YouTube」など、よく使うアプリを大きいアイコンでホーム画面に並べてあげましょう。不要なアプリは非表示にして、画面をシンプルに整理するだけで、操作に迷う時間が大幅に減ります。
③ 緊急連絡先を「緊急情報SOS」に登録する
iPhoneにもAndroidにも、緊急時に素早く家族へ連絡できる「緊急情報SOS」という機能があります。ここに子供の連絡先を登録しておくことで、万が一の際に助けを呼びやすくなります。設定に5分もかかりません。ぜひ実家に帰ったタイミングでやっておいてあげてください。
デジタルを「家族の共通言語」にする
今の時代、デジタルツールは生活の一部です。
LINEで気軽に連絡が取れる。スマホで孫の写真が届く。ビデオ通話でリアルタイムに顔を見ながら話せる。これらは、高齢の親御さんにとっても、大きな生活の豊かさになります。
「うちの親には無理」「機械が苦手だから」と決めつけず、「入口」をデザインしてあげることが、子供の自分たちにできることだと僕は思っています。
母がドラクエ10を通じてデジタルに慣れていったように、きっかけは何でもいい。好きな俳優の動画でもいい、ニュースでもいい、孫との連絡ツールでもいい。一つ「好き」や「必要」がつながれば、人は自然と覚えていきます。
今度の帰省の際に、「一緒にスマホを設定しよう」「このタブレット使ってみて」と話しかけてみてください。その一言が、親御さんのデジタルとの新しい関係の始まりになるかもしれません。
最後に、蛇足かもしれないですが。
母との電話が、最近本当に楽しいです。ドラクエ10の攻略話をするようになってから、話題が尽きることがなくて。
ゲームが親子の共通言語になる日が来るとは、思ってもいませんでした。デジタルが、家族の距離を縮めることもあるんだなと、還暦の母に教わった気がします。
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