Apple値上げ、予想は当たったのに外れた——下げたのはAmazonだった
「1位はiPhone。値上げ幅は1万円から3万円ほど」
1ヶ月ちょっと前、僕はnoteにそう書きました。Apple値上げ、次の標的はどれかという記事で、AppleがすでにiPadとMacを値上げした流れから、「次に上がるのはこれだ」と4つの製品を順位付けして予想したのです。
結論から書きます。予想した製品は、当たりました。でも「いつ・どこで上がるか」は、見事に外れました。
そして外れたことよりも驚いたのは、そのあとに起きたことでした。Appleが値札を上げた11日後、Amazonが同じ製品の値札を下げていたのです。
何が起きたのか——7月17日、日本だけが上がった
7月17日。この日、Appleが日本向けの価格改定を伝え、翌18日から日本のApple公式ストアの価格が変わりました※1。
事実を整理します。
対象はiPhone・Apple Watch・AirPodsの3ジャンル※1
値上げ幅は8,000円〜25,000円。iPhone 17は13,000円、iPhone 17 Pro Maxは20,000円の上げ幅※2
米国の価格は据え置き※2
前月にはすでにiPadとMacのシリーズが値上げされている※1
現行の最安モデルであるiPhone 17eも、これで10万円を超えました※1
僕が今回いちばん注目したのは、3つ目です。米国は据え置きで、日本だけが上がった。
予想の答え合わせ——当たったのは「どれ」だけだった
4つ。6月28日の記事で、僕が順位をつけて並べた製品の数です。
1位にiPhone、2位にiCloud+などのサービス、3位にAirPods、4位にApple Watchを置きました。根拠はメモリの原価です。AI向けの需要でDRAMとNANDが急騰していて、メモリを多く積む製品ほど値上げ圧力が強い——だから最初に上がるのはiPhoneだ、という組み立てでした。
今回上がったのは、iPhone・Apple Watch・AirPods。1位・3位・4位です。
正直に言えば、当たったこと自体はあまり嬉しくありませんでした。読み違えていた部分のほうが、はるかに大きかったからです。
僕はこう書いていました。「AirPodsやApple Watchは、現行品の値札を貼り替えるのではなく、モデルチェンジのタイミングで上乗せされるだろう」と。つまり秋の新モデルで、世界一斉に上がるという絵を描いていたわけです。
実際に起きたのは、その逆でした。すでに売っている現行モデルの値札を、日本だけ、7月に、予告なく書き換える。
この差は、思っているより大きいと感じています。メモリの原価は、世界中のどのAppleストアでも同じように上がっているはずです。もしメモリだけが引き金なら、米国の価格も同じタイミングで動かなければ説明がつきません。米国が据え置きだったという一点が、今回の値上げの主因はメモリではなく為替だったことを示していると、僕は考えています(ここは筆者個人の推測です)。
メモリ高騰は世界共通の話で、円安は日本だけの話。僕は前者ばかり見ていて、後者を「補助的な要因」として脇に置いていました。予想の枠組みそのものに、変数が1つ足りなかったということです。
そして11日後、Amazonが値札を下げた
38,000円。これが、7月末時点でのiPhone Airの「公式価格とAmazonの価格の差」です。
公式ストアの価格が変わった7月18日から11日後の7月29日、AmazonでiPhone Airのセールが始まりました※4。
ここで手が止まったのは、割引率のほうではありませんでした。値上げ「前」の公式価格と比べても、まだ安いことに気づいたからです。
iPhone Air 256GBの公式価格は、値上げ前が159,800円、値上げ後が177,800円※3。Amazonのセール価格139,800円は、値上げ前の公式価格よりさらに20,000円下にあります。
つまりこの11日間で起きたのは、「値上げされたので、みんなが2万円多く払うことになった」ではありません。同じ端末に、17万7,800円という値札と、13万9,800円という値札が、同時に存在しているという状態です。
しかもこのセール価格は、7月10日から13日に開催されたプライムデーと同じ金額だと報じられています※5。祭りのときだけの特別価格ではなく、祭りが終わって半月後にもう一度出てきた価格、ということになります。
割引されているのはiPhone Airだけではありません。AirPods Pro 3が36,800円(14%オフ)、Apple Watch Series 11が63,800円から(11%オフ)と、今回値上げされた3ジャンルが、そろって割引の対象に並んでいます※6。
僕が耳に入れているのはひとつ前の世代のAirPods 4で、腕時計は3年前に手放したきりなので、この2つの中身について語れることはありません。ただ値札の動きとしては、見事なまでに対称的です。
定価は「基準」ではなく「上限」になった
会社で備品を発注するとき、僕はカタログに書かれた金額をほとんど見ていません。
総務職として日々やっているのは、カタログ価格から何割引けるかの交渉です。定価というのは、支払う金額ではなく、交渉の出発点として置かれている数字にすぎません。だからメーカーが定価を改定しても、実際の調達単価がそのまま同じ幅で上がるとは限らない。逆に、定価が据え置きでも実勢価格がじりじり上がっていく、ということも起こります。
Appleは長らく、この世界の例外でした。どこで買っても、だいたい同じ値段。Apple Storeでも家電量販店でも大差なく、値引き競争が起きにくい。だからこそ「Appleが値上げした」というニュースは、そのまま「僕らの支払額が上がった」を意味していました。
その前提が、今回はっきりと崩れたと感じています。Appleが決めているのは、もう「僕らが払う金額」ではなく「上限」のほうです。
これは日本の会社員にとって、悪い話ばかりではありません。定価が上限として機能しているなら、下は探せば動く。ただし裏を返せば、「公式が上げたから」と反射的に駆け込むと、いちばん高い値札で買ってしまうということでもあります。今回の11日間は、まさにそれが起きうる期間でした。
僕自身、値上げのニュースに弱い自覚があります。5月31日にiPhone 16eからPixel 10aへ機種変更した翌日、その端末が値上がりしているのを見つけて動揺したばかりです。あのときは間に合った側でしたが、間に合わせようとして急ぐこと自体が、いちばん高く買う道になりうる。今回はそれを、数字で見せられた気がしています。
じゃあ、僕らはどう買えばいいのか
「いますぐ買い替えることはしない」
妻のiPhone 15がまだ快適に動いている以上、値上げのニュースに急かされて現役の端末を捨てるのは家計の無駄だ、と。
そのうえで、条件を1つだけ付けていました。「1年以内に買い替えの兆候が出るなら、プライムデーで型落ちか現行モデルを確保する」。
そのプライムデー価格が、いま戻ってきています。1ヶ月前に自分で決めた条件のほうは、まだ有効です。妻のiPhone 15は元気に動いているので、我が家は今回も動きません。11月には第一子が生まれる予定で、いま優先すべき買い物は明らかに別のところにあります。
そのうえで、この11日間から僕が学んだことを3つだけ書いておきます。
1つ目は、公式価格とセール価格を必ず並べて見ること。 割引率だけを見ると判断を誤ります。今回の21%という数字は、値上げ後の177,800円を基準にした割引率です。値上げ前の159,800円と比べれば、実際の下げ幅はもっと小さくなります。どちらの数字と比べているのかを、自分で確かめる必要があります。
2つ目は、値上げの理由を1つに決めつけないこと。 僕はメモリ高騰という世界共通の理由に引っ張られて、為替という日本固有の理由を過小評価しました。理由が2つあるということは、片方だけが動いたときに値札が動く可能性も2倍あるということです。9月に新型iPhoneが出るとき、僕はもう「メモリだから世界一斉」とは書きません。
3つ目は、急がないこと。 これがいちばん難しいところです。セールには在庫があり、カラーによって価格が違うこともあります。だからこそ「今日買わないと損をする」という感覚のまま決めない。必要になった人にとってはいい機会ですが、必要でない人にとっては、ただ値札が動いているだけの話です。
なお、僕自身はiPhone Airを買いません。Pixel 10aに移ったばかりですし、この端末を使ったことがないので、薄さや電池持ちについて語れることは何もないからです。ここで書けるのは、値札に何が起きたかまでです。
おわりに
「1位はiPhone。値上げ幅は1万円から3万円ほど」
1ヶ月前の自分のこの一文を、いま読み返すと、当たっているのに何も分かっていなかったな、と思います。どの製品が上がるかは当てられても、それを僕らがいくらで買うことになるのかは、まったく別の話だったからです。
値上げのニュースが流れると、僕らはつい「これから高くなる」という一本の線で考えてしまいます。でも実際の値札は、メーカーが決める上限と、売る側が決める実勢の、二重になって動いていました。予想が外れたことより、その二重構造に1ヶ月間気づいていなかったことのほうが、僕にとっては収穫でした。
次に何かの値上げが伝えられたとき、僕はまず公式の価格ページを開いて、そのあとに実際の売り場を開こうと思います。順番はきっと、そのほうがいい。
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出典(すべて2026年7月31日時点。価格・在庫・セール期間は変動しますので、購入前に必ずご自身でご確認ください)
※1 Appleの日本向け価格改定(2026年7月17日に伝えられ、7月18日から公式ストアの価格が改定)
※2 値上げ幅8,000円〜25,000円/iPhone 17は13,000円、iPhone 17 Pro Maxは20,000円/米国価格は据え置き
※3 iPhone Airの公式価格:256GB 159,800円→177,800円、512GB 194,800円→212,800円
※4 Amazonのセール(2026年7月29日開始):iPhone Air 256GB 139,800円(21%オフ)、512GB 156,800円(26%オフ)
※5 今回のセール価格は7月10日〜13日のAmazonプライムデーと同額との報道
※6 AirPods Pro 3 36,800円(14%オフ)、Apple Watch Series 11 42mm 63,800円(11%オフ)/いずれも筆者は未所有のため、製品自体の評価はしていません
※7 予想記事=拙稿「Apple値上げ、次の標的はどれか」(2026年6月28日公開)
本記事は特定の製品の購入を勧めるものではありません。値上げの主因に関する記述は、公表されている情報からの筆者個人の推測です。
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