正しさを選んだ人と、正しさを捨てた人。「チ。」とNidecが教えてくれること。
はじめに
アニメ「チ。―地球の動かし方―」をご存知ですか。
中世ヨーロッパを舞台に、地動説を信じた人たちの物語です。
当時、地動説は異端とされていました。 信じた者は、拷問され、処刑された。
それでも彼らは、正しいことを信じ続けました。
今回のNidec不正問題を考えながら、私はこの物語を思い出しました。
前回の投稿は以下に載せておきます。
「チ。」の世界で起きていたこと
「チ。」の登場人物たちは、こう言われ続けました。
「地球が動いているなんて、おかしい」 「異端者だ」 「お前は間違っている」
でも彼らは、自分の目で観測した事実を信じていた。
正しいことを信じたがゆえに、迫害された。 それでも諦めなかった。
その選択が、数百年後の世界を変えました。
Nidecの現場で起きていたこと
一方、Nidecの現場ではこうでした。
「この数値は基準を外れている」と気づいていた。 「このまま出荷するのはまずい」と感じていた。
でも、こう言えなかった。
「できません」 「問題があります」
なぜか。
正直に言うと、損をする構造になっていたからです。
「チ。」の登場人物たちは、損をしても正しさを選んだ。
Nidecの現場は、損をしないために正しさを捨てた。
同じ「正しさ」を前にして、真逆の選択が生まれました。
なぜ真逆の選択が生まれたのか
「チ。」の登場人物とNidecの現場担当者。
どちらが「勇気がある」かという話ではありません。
構造が違ったのです。
「チ。」の世界では、正しさを信じることに「意味」があった。
命を賭けても守りたい「真実」があった。
その真実が、次の世代に受け継がれていく「希望」があった。
Nidecの現場では、正直に言うことに「メリット」がなかった。
報告しても評価されない。
むしろ未達として責められる。
隠した方が、今日を生き延びられる。
人は「損得」で動きます。
これは弱さではなく、人間の自然な反応です。
不正の根本は「情報の非対称性」にある
前回の投稿で、「言い訳できない状況が不正を生む」と書きました。
今回はもう一段深く掘り下げます。
不正が生まれる本当の根本原因は、情報の非対称性です。
現場には「問題がある」という情報がある。 でも経営層には届かない。
届かないから、対処できない。 対処できないから、問題が積み重なる。
積み重なった問題が、不正として表面化する。
情報が正しく流れない構造が、不正を育てます。
なぜ情報が流れないのか。
それは「悪い情報を出すと損をする構造」になっているからです。
逆に言えば、「悪い情報を出した方が得をする構造」を設計できれば、情報は自然に流れるようになります。
「チ。」が示した本質
「チ。」の登場人物たちが命を賭けて守ったのは、「地球が動いている」という事実そのものでした。
その事実が歪められることなく、次の世代に正しく伝わっていく。
これが彼らの願いでした。
製造業に置き換えると、こうなります。
現場で起きている「事実」が、歪められることなく経営層に届く。
経営層が正しい情報をもとに、正しい判断をする。
この「情報の正確な流れ」を守ることが、製造業における「チ。」の精神です。
経営者に問いたいこと
「チ。」の世界では、正しさを守ることに命がけの覚悟が必要でした。
でも、製造業の現場ではそこまでの覚悟は必要ありません。
必要なのは、「正直でいることが最も合理的になる構造の設計」です。
悪い情報を早く報告した人間が評価される。
問題を発見した人間が称賛される。
未達を正直に言った人間が責められない。
この構造が整えば、現場は自然に正直になります。
人を変えようとしても、組織は変わりません。
構造を変えれば、情報は正しく流れるようになります。
あなたの会社では、現場の「本当のこと」が届いていますか。
YEES FACTORY|治部康臣(やすにぃ) 製造組織の構造改革者
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