属人化させない再現性
はじめに
「あの人がいないと、この仕事は回らない」
製造業の現場で、こういう言葉を何度も聞いてきました。
属人化は悪い言葉として使われがちです。でも私は、属人化そのものが問題だとは思っていません。
本当の問題は、「その人にしかできない理由」が誰にも分かっていないことです。
以前書いた、簿記の人の話
以前のnoteで、長年「ただの作業者」として扱われてきた人の話を書きました。
その人は周囲から「扱いづらい」と見られ、異動の話が出ても「受け入れ先がない」と断られ続けていました。
でも過去を掘り下げると、簿記の資格と工業簿記の知識を持っていることが分かりました。製造現場は、モノを作ることには長けていても、お金の視点が入ることは少ない。
その人に現場のお金の管理を任せると、これまで誰も気づかなかったコストの無駄が次々と見えてきました。
あの記事では「多様性とは、その人の本質を理解し、役割を与えること」という視点で書きました。
今回は、同じエピソードを少し違う角度から見直したいと思います。
「属人化」という視点です。
属人化とは「再現性が見えていない」状態
あの記事で一番大事だったのは、その人が「特別な才能を持っていた」という話ではありません。
属人化とは、ある人に偏った仕事のことではなく、その仕事がどういう構造で成立しているのかが、誰にも見えていない状態のことです。
その人にしかできない仕事も、分解していくとほとんどの場合、こういう要素に分かれます。
知識(資格や経験で得たもの) 判断(経験から導かれる暗黙のルール) タイミング(いつ動くべきかの感覚) 関係性(誰に何を頼めば動くかという情報)
属人化を解消するというと、多くの人は「マニュアルを作る」という発想に行きます。
でも、マニュアルだけでは解決しません。
なぜなら、マニュアルは「やり方」を記録するものであって、「なぜそのやり方になったのか」という構造までは記録できないからです。
再現性を生むのは、構造の言語化
属人化を解消するために本当に必要なのは、「その人の頭の中にある構造」を言語化することです。
「なぜこの判断をしたのか」
「何を見て、何を判断材料にしているのか」
「なぜこのタイミングで動いているのか」
この問いを本人に投げかけ、一緒に紐解いていく作業が必要です。
これを解消するために私がやったことは、当の本人に作業を一人で抱えさせるのではなく、現場のリーダーたちと一緒に「なぜ」を考える場を作ることでした。
すると、その人の知識が、その人の言葉として現場に染み込んでいきます。
最初はその人にしか分からなかった視点が、少しずつ周囲にも理解できる「共通言語」になっていく。
これが、属人化を解消する本当の再現性です。
再現性があるからこそ、人は安心して育つ
属人化を解消する目的は、「その人をいつでも替えられるようにする」ことではありません。
本当の目的は、その人が病気になっても、異動しても、退職しても、現場が機能し続けられるようにすることです。
これは会社のためだけではありません。
属人化したまま働いている本人にとっても、実は苦しいことが多いです。
休めない。代わりがいない。
常にその仕事を一人で背負わなければならない。
再現性を作ることは、会社を守ると同時に、その人自身を守ることでもあります。
最後に
属人化は、人の問題ではありません。
構造が見えていないだけです。
その人にしかできないと思われている仕事の中に、必ず構造があります。
その構造を一緒に紐解いていくことで、属人化は解消され、組織全体の再現性が生まれます。
あなたの会社で「あの人がいないと回らない」と言われている仕事、その構造は、誰の目にも見える形になっていますか。
YEES FACTORY|治部康臣(やすにぃ) 製造組織の構造改革者
製造業の構造的な課題でお悩みの経営者・社長の方、 まずはお気軽にご相談ください。
