サイゼリヤの鶏肉不足は他人事か?製造業のBCPを形骸化させる『構造』の正体
はじめに
ホルムズ海峡の緊張が続いています。
サイゼリヤは鶏肉が手に入らず、メニューを提供できない事態になったことは皆さんもご存知だと思います。
こうしたニュースを見るたびに、私はあの時のことを思い出します。
私のBCPは、一度、一蹴された
樹脂成形部品を担当していた頃、社内でBCPの話が挙がりました。
当時すでに取り組まれていたことはありました。 1社しか生産できない部品については、別の業者にもお願いするというリスクヘッジです。 でも私には、それでは十分ではないという確信がありました。
樹脂成形部品のリスクは、大きく3つに分かれます。 金型・設備・材料です。
そして、特に影響が大きいのは材料です。 石油由来の樹脂材料は、地政学的なリスクと直結しています。 産地の問題、輸送の問題、需給の逼迫。どれか一つが崩れれば、生産は止まります。
私はこの3つのリスクについて、それぞれ詳細に検討しました。
問題が起きた場合、生産が再開されるまでどれくらいかかるか
その間に必要な在庫はいくらか
対応策は何か
資料にまとめて、報告しました。
結果は、一蹴でした。
「危機意識が大げさだ」「投資額が大きすぎる」「時間と労力をかけてやる意味がない」
とても悔しい思いをしました。 でも、会社の決定なので、それ以上は進められませんでした。
一年後、現実が動いた
その一年後です。
アメリカでコンテナの停滞が起きました。 寒波による設備の稼働停止も重なり、樹脂材料の供給が世界的に逼迫しました。
その時、私が作ったBCPの資料が再度取り上げられました。 「早急に進めるように」という指示が出ました。
在庫の確保も、対応策の実行も、実際に進めることができました。
結果として、生産を止まっても、問題ない状態を作ることができました。
あの時、誰も想定していなかったわけではありません。 私は想定していたし、資料も作っていました。
ただ、会社として進める決断ができなかっただけです。
BCPが機能しない、本当の理由
製造業のBCPが機能しない理由は、準備不足ではないことが多いです。
問題は、構造にあります。
BCPとは本来、有事が起きた時のための仕組みです。
しかし多くの企業では、評価の軸が「平時の業務効率」や「目先のコスト削減」に置かれた構造のままになっています。
平時の業務効率や目先のコストを優先した構造の中に、BCPを後から入れようとしても、うまく機能しません。
「投資額が大きい」「今は問題が起きていない」
この判断基準そのものが、BCPを形骸化させる構造です。
問題が起きてから動いても、手遅れになることがあります。
しかし人は、問題が起きていない状態では、なかなか動けません。
これは個人の意識の問題ではなく、組織の構造の問題です。
製造業として、大切にしていること
私が製造業として大切にしていることがあります。
モノの供給を止めてはいけない。
製造業の本質は、お客様に物を届け続けることだと思っています。
サイゼリヤの事例は、他人事ではありません。
どの製造業にも、同じリスクは潜んでいます。
だからこそ、問題が起きる前に考えることが必要です。
地政学のリスク、材料の調達ルート、設備の冗長性。
いろんな角度から検討し、準備しておく。
それが、ずっとお客様に喜んでもらい続けるための構造です。
BCPは、人も同じです
BCPは、モノだけの話ではありません。
人も同じです。
材料の調達ルートを複数化するように、その人にしかできない「ブラックボックス化した業務」を解体し、組織として冗長性を持たせる。
いなくなった時に初めて気づく人の価値は、材料の供給リスクと構造的には変わりません。
「その人がいなくなっても大丈夫」という構造を、平時に作っておく。
これもまた、BCPの本質だと思っています。
最後に
あの時、一蹴されて立ち止まってしまったことを、今でも教訓として思い出します。 組織の構造が「効率」に偏っている時、正論だけで突き進むことの難しさを知りました。
ただ、一つだけ言えることがあります。
想定される問題に、真剣に向き合うこと。
それをやった人間がいたかどうか。 それだけで、有事の時の動き出しは全く変わります。
BCPとは、文書を作ることではありません。 有事が起きた時に実際に機能する構造を、平時に作っておくことです。
あなたの会社のBCPは、本当に機能しますか?
YEES FACTORY|やすにぃ
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