息子に「療育」を勧められた日、私は彼の“いいところ”を思い出していた。
「はい?……療育?」
それって、発達障害ってことですか?
思わず、そう聞き返してしまった。
まさか、うちの子が。
来月5歳になる息子は、117cm・26キロ。
年中さんにしてはかなり大きめで、
服のサイズは130がぴったり。
小学校低〜中学年の子たちと変わらない。
島でスクスクと育ってきた、わんぱく坊や。
仮面ライダーやスーパーヒーローが大好きで、たまに暴力的なことをしてしまうところは気になるけれど、「お利口さん」にもちゃんとなれる子。
そんな息子に「療育」を勧められた。
療育ってなに?
私もそこからだった。
療育とは、発達障害やその疑いがある子どもに対して、その子に応じた発達を支援する活動のこと。
息子は「社会性」に著しく欠ける場面があり、「療育」が必要と判断されたらしい。
ひとりで歌ったり踊ったりするのは大好きなのに、「みんなで並んで」歌う・踊るということを極端に嫌がる。親が見に来る発表会なら頑張れるけど、普段は端っこでひとり遊びを始めてしまうこともあるらしい。
そんなこと、知らなかった。
先生たちとは定期的に面談していて、これまで指摘されていたのは「お友達にちょっと暴力的なところがある」という点だけ。しかも最近は「落ち着いてきました」と言われて、安心していたところだった。
それが、今年に入った頃から急に「集団行動を極端に嫌がるようになった」とのこと。
去年までは、「その場に立っている」くらいのことはできていたのに、今はその“立っていることすら拒否”するらしい。
なんというか……
とんでもない“気分屋さん”って感じ。
グレーゾーンという現実
この島では、療育を受けたからといって、小学校で特別支援学級に入るとは限らないらしい。
いわゆる“グレーゾーン”の子も多く受けているとのこと。
ありがたいことに、この人口2300人ほどの島には、国家資格を持つ言語聴覚士がいて、役場と連携しながら、週1回の個別療育(30分)と、月1回の集団療育(2時間)を実施してくれている。
……けど、正直「こんな頻度で、何か変わるの?」とも思う。
それに、うちの子って本当に“必要なタイプ”なんだろうか?
息子のいいところに目を向けてみる
言葉が遅いわけじゃない。
むしろ、コミュニケーション能力はかなり高い方だと思う。
母親の私でさえ、一瞬ドキッとするような言葉を、文脈ぴったりに使うことがある。
たとえば、息子がまだ2歳のころ。
海辺にいるカニを見つけて、「カニさんが“ケイカイ”してる」と言い出した。
最初は「喧嘩してる?」って聞き返したけど、何度聞いても「ちがうよ、“ケイカイ”してるの!」の一点張り。
2分くらい問答して、ようやく「あ、警戒か!」と気づいた。
そういえば、数ヶ月前に私が「このカニさん、警戒してるね」って何気なく言ったことがあった。
彼は、それをちゃんと覚えていた。
記憶力も、語彙も、表現力も――
きっと、すごく豊かなんだと思う。
それでも、「普通」じゃないといけないの?
「社会性に欠けている」と言われると、たしかに気になる。
でも、息子は息子のペースで世界を楽しんでいるし、今のところ私には“困っている”ようには見えない。
むしろ、大人びた言葉で会話したり、知らない人にも堂々と話しかけられたり――そういう面は、ちょっと誇らしくもある。
以前、異国の地で一瞬迷子になったときのこと。
息子は、初めて出会う肌の色が違う人たちにも、臆することなくこう話しかけていた。
「あの〜、ちょっとすみません、僕のお母さんはどこですか?」
もちろん、日本語は通じない。けれど、何度も何度も話しかけて、最終的には(奇跡的に)日本人にたどり着いた。
……目を離した私が悪い。でも、あのときの彼の姿には、成長と、度胸と、たくましさがあった。涙が出そうになった。
だから、少しだけ思ってしまう。
いいところが、たくさんあるんだから、
それでいいんじゃないかな――って。
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