選ぶのはいつも人形。——知育パズルを薦め続ける母の、静かな戦いは続く
おもちゃ屋に入ると、つい声をかけてしまう。
「今日はパズルにしてみない?」
「このレゴ、かっこいいね。組み立てて遊べるよ?」
息子の趣味を尊重したい気持ちはある。あるんだけど——
母には母の、ささやかな野望があるのだ。
「今日はパズルにしない?」の誘導作戦
おもちゃ屋に入ると、私は息子にさりげなく提案を始める。
「日本地図のパズル、楽しそうだね」
「ほら、恐竜のシールブックあるよ、貼るの好きでしょ?」
…そう、これは戦いだ。
彼に「知育っぽいおもちゃ」を選ばせたい、母の静かな戦いである。
ただ楽しく遊ぶだけじゃなくて、
できれば指先を使って脳にも良さそうなやつ。
レゴとかパズルとか、あわよくばひらがなの練習ブックとか…。
でも息子は、そんな私の下心に一切なびかない。
「それじゃない」。選ぶのは、またしても人形
私の目の前で、息子は迷わず怪獣人形の棚へ直行。
恐竜、ウルトラマン、戦隊ヒーロー。
1体ずつ手に取って、ポージングしながら吟味している。
本当、マジのポージングで笑える。
「今日も…戦いごっこですか」
母の努力、虚しく。
パズルにもレゴにも、目もくれない。
彼の世界では、「並べて戦わせる」こそが至高の遊びらしい。
私はその後ろ姿を見ながら、そっと棚に戻す。
パズル、レゴ、ひらがなワーク…。
焦る母、マイペースな息子
最近テレビで「年中さんでひらがな完璧」「パズル余裕」みたいな特集を見た。
そんな情報をうっかり目にしてしまうと、
つい「ウチはどうだっけ…?」と比較モードに入る。
私は息子を急かしているつもりはない。
ただ、「こういうのもできたらいいな」「今が吸収のチャンスかも」
そう思って、つい“促すような提案”をしてしまう。
でも、本人は気づいていない。
というか、完全に気にしてない。
息子は「これが欲しい!戦わせたい!」と、
シンプルに、まっすぐに、欲望に従って生きている。
戦っているのは、私かもしれない
彼は今日も、怪獣人形を手に満足げに帰路につく。
私はパズル売り場に残された“母の夢”をそっと見送りながら、
自問する。
——戦ってるの、私じゃない?
何に?
周りの情報に?理想の母像に?
「ちゃんと育てなきゃ」というプレッシャーに?
いつか、彼が自分でパズルを手に取る日が来るかもしれない。
それまで私は、そっと棚の影から知育おもちゃをおすすめし続けるのだろう。
今日もまた、静かな戦いは続く。
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