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【ネタバレあり】文楽『まちの灯』と映画『街の灯』

チャップリンの代表作『街の灯』が
大阪・国立文楽劇場にて新作文楽『まちの灯』として上演
されています。

文楽作品の中で史上最速で感涙した作品として
文楽の『まちの灯』を推薦させていただきます。

何が史上最速かと申しますと
チラシのアラスジを読んで感涙したのです。

チラシには、こう書いてあります。
「幕末の大坂を舞台に、
風来坊・与次郎(よじろう)が、
目の不自由な娘・お花に献身的な愛を捧げる物語。」

この一文を読んだだけで、
ぶわーっとイメージが広がり、
自然に涙が流れてきました。

正直に申しますと
チャップリンの映画『街の灯』は未見で、
鑑賞する6日前にAmazon Primeで急いで見たのでした。
文楽『まちの灯』は、チャップリンの映画『街の灯』を
知らなくても楽しめると思います。
でも私は、事前にチャップリンの映画を見ておきたかったのです。

ここで、映画『街の灯』と、文楽『まちの灯』の相違点
挙げたいと思います。

多くの点が挙げられるのでしょうが、2点、挙げさせていただきます。

1点目、
これはチラシに載っている登場人物から分かっていたことですが、
目の不自由な娘が同居しているのは映画では、お祖母さん、
文楽では、お母さんになっています。

文楽のかしらの基本から逸脱していないので、お母さんでも問題ないと思われます。文楽の世界では、文楽人形の子どもに対してお祖母さんは存在するのですが、成人した娘に対するお祖母さんは存在しないのです。これも年配の女性のかしらは「婆(ばば)」一択なので、そうなってしまうのでしょうね。もちろん、性根の悪い年配の女性のかしらとして「悪婆(わるばば)」はありますが、これでは、優しい人柄とは合致しません。

2点目は映画ではボクシング、文楽では相撲になるのですが、
対戦相手が映画では2人、文楽では1人です。

映画の1人目がずる賢い男でチャップリンに八百長で引き分けにして
賞金も半分半分にしようと持ち掛けます。
ところが、そのずる賢い男は
指名手配犯で、仲間の手紙から「警察がやってくる」ことを知らされます。
警察がやってくることを知った1人目の男が逃げ出したために
新しい対戦相手が出てきます。
その相手は、見た目からも強そうで、ビビりまくるチャップリン。
文楽の方は対戦相手が一人で、見るからに力持ちの太目山でした。
1人目のずる賢い男が登場しないことで、
最初から対戦相手がどんな強靭な相手であっても勝って見せる、勝って賞金を稼いで、目の不自由な娘(文楽ではお花)を助けたいという気持ちが見てとれます。

さて、最後に文楽『まちの灯』の見どころ聞きどころをお話させていただきます。

開演と共に御簾内から三味線と胡弓の音楽が流れてきて
客電が、ゆっくりと落とされます。
観客は暗闇の中で物語の世界に入っていくのです。
イヤホンガイドでは映画館が映画を上映するかの雰囲気との解説がありました。

最初の太夫さんと三味線弾きさんが床(ゆか)から登場する前に
しばらくの時間があります。

そして文楽ではチャップリン扮する浮浪者役
与次郎の登場です。

映画では除幕式の彫刻の上で寝ていますが、
文楽では、大仏の掌の上で寝ています。
すぐに顔は出さないのです。
まず、足だけが観客に見えています。
その後で与次郎は起き上がり、観客に顔を見せます。
「うわー、太い眉に、チョビ髭、瞳の下にアイライン、
チャップリンそっくりの顔!」と気付き歓声と拍手が起こります。

二段目で、お花が舞台奥から登場します。
ねむりの娘という瞳を閉じた、かしらをつけた女方の人形が
花籠を持って登場するだけで感涙。
胸がキュンと切なくなります。

大詰は「天神橋まちの灯の段」。
ラストシーンで目が見えるようになったお花と与次郎は
再会するのですが、

ここは号泣を覚悟しておいていただきたいです。
目が見えるようになったお花とようやく再会できたのに
与次郎は、まっすぐお花を見ようとしないのです。

目が不自由でチャップリンのことを富豪と思っていたお花には
積極的にアプローチできるのに、
いざ、目が見えるようになったお花と対面すると
自分の身なりを恥じ入り、目をそらす与次郎に切なくなるのです。

改めまして、設定がアメリカの物語を日本の江戸時代に置き換えるのは
床本も三味線の演奏も、お人形さんも、さぞ大変だったと想像しています。

文楽でもチャップリンの世界観を大切にしていると思ったのは
いろいろありますが、
元の『街の灯』の音楽からテーマソングとボクシングのシーンを
サンプリングして三味線で演奏したところでは
思わずニヤリとなってしまいました。

開演前と幕間では、ロビーで『街の灯』のテーマソングを流していたのも
通常の文楽公演ではない劇場の演出でした。

自然に耳に入って来るお客さんの会話からも
初めて文楽を見に来られている方が多いように思われました。

初日では、チャップリンの四男ユージン・チャップリンさんも観劇し、
「父が見たら、心を打たれたでしょう」と語っています。

是非、大阪・国立文楽劇場の

Bunraku Summer Festival

『まちの灯』を是非、ご覧ください。


プログラムは、無料でいただけました。


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