見出し画像

[JP] Ep.5|少女の色

From My Closet To You
~ファッションと心を綴る、創作エッセイ~


1.色と心

この世界は、たくさんの色であふれています。個人差はあるものの、人が識別できる色は、約100万色と言われています。加えて、目では捉えられない色も存在するそうです。また、色は、見る人の気持ちによって印象が変わります。明るい気持ちで見る空と、沈んだ気持ちで見る空。それぞれ異なった印象になるはずです。色と心はつながっています。では―今日、あなたが選んだ服の色は何色でしたか。どんな気持ちで選んだのでしょう。

2.似合う色
ファッションにおいて、色は悩ましい問題です。似合っているか、浮かないか。何色と組み合わせればいいか…朝、手にしたトップスを悩んで戻す。迷いは尽きません。「パーソナルカラー診断」は、無数にある色から、自分に似合う色や配色を見つけ出してくれます。メイクやヘアカラーなどにも活かせる、心強い存在。だからこそ活用範囲が広く、難しいと感じることも。どんな自分で在りたいか、考えて選択することが大切だと思います。

3.私の色
私のパーソナルカラーは「スプリング」です。明るく透明感のある色が似合うとされています。確かに、暗めで落ち着いた色と比べると、活発な印象になります。一方、その印象は、私の内面と少し距離があります。できれば、内面も表しながら似合う色を着たい。こうした思いから、私は診断結果を踏まえて、自分を象徴する4色を選び、ベースカラーにしています。これから綴るのは、この色の話―4つの小さな、色にまつわるストーリー。

4.ホワイト
それは、描かれない画用紙の色―隣で、妹が絵を描いている。伸びやかに、自由に。私は、クレヨンを強く握った。次の瞬間、「できた!」と明るい声が響いた。妹が母に絵を見せている。悲しくなり、幼稚園バッグを抱えて顔を隠した。私たちが生まれる前、母は絵を描いていた。個展にも出たという。幼い頃の憧れ。ただ、妹の絵のほうがずっとうまく見えた。私は自信を持てず、描くものさえも迷う。今すぐ欲しい…私だけが描けるもの。

5.ベージュ
それは、褪せた本の色―小学校の休み時間。私は、本を選んでいた。クラスメイトは教室で笑い合ったり、校庭で遊んだり。でも、私は図書室に行くことが好きだった。毎日、本を借りた。読んでいるときは、自分だけの世界へ。冒険者が駆ける荒野、動物と話せる博士の庭、名探偵の静かな書斎。チャイムの音が聞こえた。教室に戻らないといけない。貸出用ノートに名前を書き、本を持って扉を開ける。やだな…この時間が続けば良いのに。

6.ブラウン
それは、戦う英雄たちの色―「あー、終わっちゃった」週末は、友達の家に集まって映画を観た。中学生時代の定番の過ごし方。観終わると、みんなで感想を言い合った。私が熱くなったのは、傷ついても戦い抜こうとする英雄たちの物語。土や砂埃にまみれながら、挑み続けるその姿を、心に焼き付けた。美しい―傷つきたくはない。だけど、この弱さを変えられたなら。もしかすると、いつか私も。そうなるには…どうしたらいいんだろう。

7.ゴールド
それは、苦い挑戦の色―高校の夏休みが始まった日。私は洗面所にいた。手元には、初めて買ったブリーチ。最初はうまくいかなかったけれど、なんとか塗り終えた。時間が経ち、髪を洗い流す。ドライヤーで乾かしながら、だんだんと不安になっていった。なりたかった色よりずっと明るい―毛先は金髪になっていた。鏡を見て、ため息をついた。そして指先で数本をつまみ、天井の蛍光灯にかざす。大丈夫、きっと次は…きれいになれるよ。

8.あなたの色
そう、大人になる前。ささいな日常に、ストーリーがあった。私はあの頃のすべてを抱きしめたい。あなたはどんなストーリーに出会ってきましたか。私とあなたはまったく違います。同じ色を選ぶ必要はありません。人と違うからこそ「パーソナル」なのです。そして願わくば、あなたの想いが込められた色を、どうかまとってほしい。それが、あなたを輝かせる―さあ、明日の服に何色を選びますか。どんな気持ちを込めて選ぶのでしょう。


Fin (Ep.5 少女の色)
© Hilda Tutu. All rights reserved.


◆本作品の関連コンテンツ
Ep.5 制作後記 –Hilda's Voice–
[Reel] Ep.5 作品紹介
本作品の英語版
*Coming soon:Ep.5 ファッションを読む

◆シリーズとファッション、作者について
“From My Closet To You” シリーズについて
シリーズ作品一覧(1話完結型)
Fashion Writing✶ファッション関連記事
作者について

― Hilda Tutu ―

日本語版 HOME へ戻る

© Hilda Tutu. All rights reserved.
(無断転載・複製・改変・配布禁止)

Contact お問い合わせ(質問箱)

いいなと思ったら応援しよう!