所詮、私はしがないライター。でも、誰よりもずっと一緒よ【ショートショート】
だめだ。我慢できない。
暫くNoteは休むって宣言したのに(馬鹿)
みくさん…こんなおいしいショートショート投下して下さるとは。
というわけで、みくまゆたんさんのショートショートに触発されて書きました。
これはスピンオフ。というより、オマージュ作品ですな。
あっ、みくまゆたんさんの作品を先に読んでね。
コッシ―さんの素敵なスピンオフも。
そして、藤本さんの男性目線のスピンオフも。
ひとつの元ネタでこんなに作品が出来ちゃうの、楽しいですよね。
てなわけで!
ひつぎ ひなたが料理するとこうなりました!
散らかったテーブルの上。
煙草の吸殻が山盛りの灰皿。
くしゃっと潰れたマルボロの箱。
そして、その隣に無造作に置かれたあたし。
あなたは、煙草を咥えると、しなやかな手であたしを取り上げる。
親指がフロント・ホイールを擦り上げる。
ああ、たまらないわ。
ぞくぞくする。
あたしは官能に導かれて、しゅぼっと音を立てて頭に小さな赤い炎を灯す。
あなたはいつも眉間に皺を寄せて、あたしに煙草の先をくっつける。
あなたの口から立ち上る紫の煙。
「はあ」
呆けた溜息と共に、あなたはあたしをまたテーブルの上にことりと置いた。
あたしはジッポのライター。
あなたとは長い付き合いになったわね。
専門店のガラスケースに居たあたしを、あなたはじっと見つめて
「いいねえ、この柄。一点もの?」
「はい。職人が掘ったんです」
「へえ。じゃあこれにするわ」
あたしはこうして、あなたのものになった。
あなたはあたしをポケットに入れて、色んなところに連れて行ってくれる。
ラーメン屋。喫茶店。スーパー。そして、百円ショップ。
あたしはいつも、そこに並んでいる安っぽいライターを見下して笑っていた。
あたしはね。
ガスが終わったら捨てられるような、チンケなライターじゃないの。
そう。あんたたちとは違うの。
そもそもあたしの燃料はガスじゃなくてオイルだし。
そうよね。あんたたちには、オイルを充填される時の感覚なんて、わからないわよね。
終わった後、あの人があたしを優しく取り上げて、漏れたオイルを拭いてくれる、ぞくぞくするような快感も。
ねえ、あなた。
あたしたちは、ずっと一緒よね。
それで、人間の彼女以上に濃密な時間をこの先もずっと共有するの。
ーーなんてことを、あたしは割と本気で信じていた。
だけど。
その日は突然訪れた。
ふらりと出掛けた街中。
テントの中で、若い子が声を張り上げた。
「電子タバコのご紹介でーす!あなたもどうですか?」
ふと、あなたの足が止まる。
「電子タバコ、か」
興味深そうな声。
そして、ポケットに手を触れる。
あたしとマルボロが入っている、ポケットに。
「…確かに、今どき煙草は古いか」
あなたは確かに、そう呟いた。
あなたは、マルボロが切れるまでは、変わらずあたしを使ってくれた。
いつものように親指でフロント・ホイールを擦り上げ、
あたしをとろけさせて炎を呼び起こす。
眉間に皺を寄せて煙草とあたしをくっつける。
紫の煙。呆けたような溜息。
でも。
最後の一本を吸い終わった時、あなたはあたしを手に取って、こう言った。
「ご苦労さん」
あたしは今、お店のガラスケースの中にいる。
電子タバコに乗り換えたあなたは、あっさりとあたしを捨てた。
お金と引き換えに置き去りにされたあたしは、泣きながらその背中を見送った。
あたしは所詮、ジッポのライター。
あなたを追いかける足はついてない。
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飛び入り参加でした!
では、
休みます!
