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わたしの大キライな言葉(バイナン 6)

これは、
現役の占い師がナンパ師に弟子入りをして、
1000人の女性に路上で声をかけた体験談の連載です。
はじめてご覧になる方は、先にこちらをご覧ください ↓

高校時代の彼女を思い出していた

はじめての路上レッスンから一週間後
私は、また渋谷・道下坂のモスバーガーに向かった。

約束より30分ほど早く着いて
小腹がすいていたので
カフェラテとフレンチフライを注文する

カフェラテは、紙コップじゃなくて
マグカップに入って出てきた。

そういえば……と思い出す
わたしをゲイからバイセクシャルにしてくれた女性がいた

高校時代に交際していたユキは
「モスのココアって、マグカップで出てくるでしょ
口当たりがいいから好き」
そう言っていた。

彼女は今ごろ、どうしているだろう
誰かと結婚していたり
子どもがいたりするのかな

もし彼女が
今のわたしがナンパのレッスンを受けていると知ったら
どう思うだろう
軽蔑されたりするのだろうか

「ほんと、サイテー」

高校時代のユキの口ぐせと
その顔が
ふっと頭に浮かぶ

そんなことを考えながら
フレンチフライをつまんでいた。

2回目の占いレッスン

約束の10分前に
ワタルがやってきた。

予定より少し早めにスタート
前半は、私からワタルへ
占いのレッスン

先週の第1回目では
九星気学の「九星」の意味と
誕生日から本命星を導き出すアプリの使い方を教えた

これさえ押さえれば
とりあえず
占いの真似事のようなことはできる。

そして、宿題を出していた

周りの人に誕生日を聞き
アプリで本命星を算出して
その星回りの意味を相手に伝えること

要するに
占いを実際にやってみなさい
という課題だった。

「何人できそう?」
先週そう聞いたとき
彼は言った

「1日10人
1週間で70人やります」

正直
難しいだろうな、と思っていた。

そもそも
相手の誕生日を聞き出すこと自体が
けっこうハードルが高い

過去に占いを教えたとき、
同じような宿題を出したことがあるけれど
週に10人を超えた人はいなかった
多くても5人くらいだ。

まあ、できなかったとしても
怒ったり詰めたりするつもりは、まったくなかった

むしろ、早い段階で
このハードルの高さを体感するのも悪くない。

あっさり言われた「ひとこと」

「さて
先週の宿題だけど
九星気学で何人占えた?」

「100人やったよ」

ワタルは
本当にさらっと言った

……え
まじで?

「70人って言ってたよね」

「なんか
キリのいい数字まで
やってみようと思って」

……もう
言葉が出ない

100人の内訳とは

詳しく聞いてみると
100人のうち

14人は
ナンパスクールの生徒や
路上のナンパ仲間、つまり男性

73人は
路上で声をかけた女性

いつもは
「ホテルに行くこと」がゴールだけど
この一週間は目的を切り替えて

とにかく
「占いの修行中なので
練習させてほしい」
そう言って
声をかけまくったらしい。

ワタルいわく
ナンパでホテルに誘うのに比べたら
占いの練習をさせてもらうのなんて
余裕、とのことだった

「だって3人組の女の子に声をかければ
一気に3人占えるじゃん
普段のナンパは基本的に1人でいる子にしか
声をかけないから、人数は楽勝だったよ」

多くは
近くのカフェや
ファーストフード店で

警戒心が強い相手だと
路上でそのまま

相手によっては
居酒屋やカラオケ店の場合もあったそうだ。

そして
あと13人で100人
というところで

以前、路上でLINE交換していた女性13人に
LINE通話をしたという。

その中の一人が
先週
私の目の前で声をかけた女性
だった

スマホを出して
通話履歴を見せてくれる

白いマフラーを
ぐるぐる巻いた
あの真面目そうなOL風の女性の顔が浮かんだ

……そういえば、あの子
「彼氏いる」って
言ってたな

場数については心配ないけれど

「100人やってみて
どうだった?」

「中にはピンときてない子もいたけど
ほとんどの人がスゴイなんでわかるの?
って言ってたよ」

たぶん、彼に教えた
簡易的な九星気学が
スゴイというより

彼の人を見る目や
相手に合わせた話し方が
スゴイのだと思った

先週の路上レッスンで
相手に合わせて
テンポよく会話をつないでいく姿を
目の当たりにしていたから。

でも、それは
あえて言わなかった

「話術さえあれば、占いは何とかなる」
そう思われるのは良くない気がした

占い師として腕を磨くには
とにかく場数が必要だけれど
彼について、その心配は
必要なさそうだった。

指を折りつつ計算ドリルをやってみる

その日のレッスンは
九星気学の「本命星」だけでなく
誕生日から導き出せる
「月命星」と「日命星」
があることを伝えた

これがわかると
鑑定の解像度がぐっと上がる。

さらに
先週はアプリを使って算出していたけれど
計算ルールさえ覚えれば
暗算でも「本命星」と「月命星」が出せる
という話もした

アプリを使っても全然良いのだけれど、
暗算で出したほうが、相手の印象だったり
「ありがたみ」が変わることがある。

練習問題を用意していた。
A4の紙に30パターンの生年月日が並んでいる

これの「本命星」と「月命星」を
計算してみるように言う

「えーと……
平成22年は
まず2と2を足して……」

両手の指を折りながら
計算している

子どもの頃の
計算ドリルの宿題を
思い出した。

最初の数問は、時間がかかったけれど
一度飲み込むと
指を使わず、頭の中だけで
計算できるようになっていった

そういえば
会社員時代は、メーカーでエンジニアをしていた
と言ってたっけ

理系で
計算に慣れていれば
そこまで難しくない。

わたしの大嫌いな言葉

「じゃあ、この誕生日から
暗算で本命星と月命星を出して
鑑定してみて」

私は
自分の誕生日を出した

「これ、ひなたの誕生日だよね」

先週、提示した誕生日を
ちゃんと覚えていた。

「えっと、ひなたの本命星は七赤金星
月命星は五黄土星だから……

自分でやりたいことを
自分のやりたいように
取り組みたいタイプだね

結果よりも
どうやってやったか
楽しめたか
その過程を大事にする

失敗も
わりと面白がれる

組織の一員になるのが苦手で
嫌いな言葉は
【長いものにまかれろ】
じゃないかな」

……おお!
と思った

七赤金星と五黄土星の
エッセンスは教えたけれど
それを彼なりに噛み砕いて
目の前の私に合わせて
言葉にしていた。

そして
私の大嫌いな言葉は
まさに
「長いものにまかれろ」
だった

そんな話
ワタルにした覚えはない。

彼に必要なのは自制という手綱

才能はある、
場数も踏める

きっと
トントン拍子で
スキルを伸ばしていくだろう。

でも、だからこそ
気をつけてほしいと願う
スキルは、悪用もできるから。

霊感商法やスピリチュアル商法を
例に出すまでもなく、

占いの力を使えば
人を不安にさせ、
お金を巻き上げることだって
できてしまう

彼に必要なのは
「倫理観」という自制の手綱だ。

それは
最終回あたりで
伝えようと思っていたけれど

彼の場合はもっと早い段階で
伝えたほうがいい
そう感じていた。


「さて、そろそろ時間だけど
次回までに、何人くらい
暗算で占いできそう?」

「じゃあ、100人で」

……そう言うと思った
もう驚かない。

「じゃあ、
百人やってみよう」

そう言って
私からのレッスンを終え
師弟を交代した
次はナンパのレッスンだ。

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