AIデモはすごい。でも、仕事はデモじゃない。
皆さんこんにちは。
現役IT執行役員のグイグイです⚡
SNSでAI関連の発信を見ていると、便利な情報はたくさん流れてきます。
「AIでスライドが一瞬で作れます」
「AIで動画が自動生成できます」
「AIで営業資料が簡単に作れます」
「このツールを使えば、誰でも爆速で仕事できます」
こういう発信を見るたびに、便利な時代になったとは思います。
ただ、同時に引っかかることがあります。
それ、本当に仕事で使っていますか。
AIで何かを作れること自体は、もう珍しくありません。
私自身も、AIでスライドを作ります。資料も作ります。コードも書かせます。調査にも使います。だから、AIでどこまでできるのかは、自分なりに見ています。
そのうえで思うのは、AIで作ったものをそのままビジネスの本番で使えるかというと、まだ難しい場面が多いということです。
特に、スライドや動画のように、見た瞬間に印象が決まるものは慎重になります。

きれいなスライドは作れる。でもそのまま出せるか
ClaudeでもNotebookLMでも、その他のAIツールでも、見た目の整ったスライドは作れるようになっています。
これは素直に便利です。
たたき台を作る速度は、人間だけで作るよりずっと速い。
でも、そのスライドをそのまま持って、お客様の前でプレゼンしようと思えるか。
私は、正直ためらいます。
理由はシンプルで、見る人が見れば「AIで作った資料だな」とわかってしまうからです。
たとえば、Claudeでデザインされたスライドをそのまま使うと、自分が作った資料と、他の誰かが同じように作った資料の雰囲気が似てしまう可能性があります。レイアウト、余白、アイコンの使い方、色の組み合わせ、全体のトーン。便利なのですが、どこかで「ああ、この感じね」と見えてしまう。
お客様に出す資料で、それは少し怖いんですよね。
資料というのは、単に情報が並んでいればいいものではありません。
その会社、その案件、その相手、その場の空気に合わせて作るものです。こちらが何を理解していて、何を提案したいのか。相手がどこで不安を感じそうで、どこまで説明すれば前に進めるのか。そういうものが資料の中ににじんでいないと、仕事の資料としては弱い。
AIのスライド生成は、最初の壁打ちや構成案づくりには使えます。
でも、顧客の前に出す資料にするなら、最後は人間が手を入れる必要があります。
ここを飛ばして「AIで資料作成が完了」と言ってしまうと、実務の感覚とはズレると思っています。

AI動画は、まだ「AIで作った感」が前に出やすい
動画生成も同じです。
最近のAI動画は、本当に進化しています。
数年前と比べたら別物です。
AIに興味がある人なら、「ここまで作れるのか」と驚くと思います。私もそこは素直にすごいと思います。
でも、ビジネスで動画を見せる相手は、AI好きな人とは限りません。
むしろ、多くの場合はAIそのものに興味があるわけではなく、商品やサービスの価値を知りたいだけです。
その相手に、AIで自動生成した動画をそのまま見せたとき、どこまで伝わるのか。
現時点では、私はまだ慎重に見ています。
「AIで頑張って作ったんですね」で終わってしまう動画も多いと感じます。
素材作りやアイデア出しには使えます。短い演出、背景、イメージカットの作成など、使いどころもあります。クリエイティブの現場で、人間が編集し、演出し、整える前提なら、実務でも使える場面は増えていくはずです。
ただ、自動生成した動画をそのままお客様に見せて、商品理解や信頼につなげるのは、まだ簡単ではありません。
見せたいのは「AIで作れます」ではありません。
伝えるべきなのは、こちらの提案の価値です。
特にB2Bでの提案や説明の場でそこを間違えると、ただのAI発表会になります。

B2Cなら使える場面はある。でもB2Bでは慎重になる
ここは、B2CとB2Bでも話が変わると思っています。
B2C向けのSNS投稿や広告、ちょっとした商品紹介であれば、AIで作ったスライドや動画がそのまま役に立つ場面は増えていると思います。
短尺コンテンツなら、多少AIっぽさがあっても、勢いやわかりやすさの方が勝つことがあります。見る側も、完璧な資料や映像作品を求めているわけではありません。テンポよく伝わること、目に留まること、気軽に見られることの方が大事な場面もあります。
ただ、B2Bの場面では話が変わります。
お客様への提案、社内稟議、プロジェクト説明、受注前のプレゼンのような場では、資料や動画そのものが信用の一部になります。
そこで「AIでそれっぽく作った感」が前に出ると、提案内容よりも資料の薄さが気になってしまう可能性があります。
見た目が整っているのに、どこか借り物っぽい。きれいだけど、その会社や案件に深く入り込んでいる感じがしない。そう見えた瞬間に、資料はむしろ足を引っ張ります。
B2Bの資料は、きれいならいいわけではありません。
相手の事情をどれだけ理解しているか。こちらの提案にどれだけ責任を持つつもりがあるか。そういうものまで、資料の端々に出ます。
だから私は、AIスライドやAI動画を否定しているのではなく、B2Bの本番資料としてそのまま使うには慎重にならざるを得ない、という感覚です。

目に見えないところでは、AIはもう実務に入っている
一方で、ソースコードのような領域では、AIはもう普通に使える段階に入っていると感じています。
何でも丸投げできるという意味ではありません。
設計に合っているか、既存コードとの整合性はあるか、テストが意味を持っているか、レビューに耐えるか。見るべきところはたくさんあります。
それでも、コードは見た目の印象で評価されるものではありません。
最終的には、要件を満たしているか、動くか、保守できるか、品質基準を満たしているかで判断できます。
だから、スライドや動画よりも実務に組み込みやすい。
私自身、実際の開発案件の現場でAIを使っています。
自分の趣味や個人開発ではありません。お客様がいて、開発案件があり、納期があり、品質責任があり、ビジネス上の価値が問われる環境です。
その中で、AIを使っています。
単にAIにコードを書かせているだけではありません。
設計、実装、テスト、レビュー、静的解析、品質管理、チーム運用、進捗管理、顧客向けの説明責任まで、現実の業務の中にAIを組み込んでいます。
だからこそ、AI活用の難しさも見えます。
AIに任せれば全部うまくいく、なんてことはありません。
むしろ、AIを使う人間側の力がはっきり出ます。
指示が曖昧なら、成果物も曖昧になります。
設計が弱ければ、それっぽいだけのコードが出てきます。
レビュー観点がなければ、間違いを見逃します。
テストの意味を理解していなければ、見た目だけのテストが増えます。
チーム運用を設計しなければ、人によって使い方に差が出ます。
AIは魔法の杖ではありません。
使う人間の思考を増幅する道具です。
強い人が使えば強くなる。
雑に使えば、雑な成果物が高速で出てくる。
ここを勘違いすると危ないです。

現場のAI活用は、もっと泥臭い
実際の現場でAIを使うと、話は一気に泥臭くなります。
AIにどう指示を出すか。
どこまで任せるか。
どこで人間が止めるか。
何をレビューするか。
どの成果物を正とするか。
チーム内で使い方をどうそろえるか。
品質基準をどう置くか。
顧客にどう説明するか。
このあたりを考えないと、AIは現場に入りません。
ツールを入れただけでは、AI活用にはなりません。
業務の流れを組み替える必要があります。品質の見方も変わります。チームの動き方も変わります。人間が判断する場所も、AIに任せる場所も、最初から設計し直す必要があります。
ここまでやって、ようやくAIは現場で価値を出します。
私は、AIインフルエンサー的な発信を見ていて、この部分が抜け落ちていると感じることがあります。
「AIでここまで作れました」
「このツールがすごいです」
「こんなに簡単にできます」
それは可能性を見せる発信としては面白いし、新しい機能を知るきっかけにもなります。
でも、現場に入れるとなると、そこから先が本番です。
AIに任せた成果物を誰が確認するのか。どこまでを正として扱うのか。レビューで何を見るのか。チームの中で使い方がバラついたときに、どうそろえるのか。お客様に説明するとき、どこまでAIを使ったと伝えるのか。
そういう面倒な話を引き受けて、初めてAIは現場の道具になります。

本番で問われるのは、責任を持てるか
実務では、うまくいった瞬間だけを切り取ることはできません。
お客様に出す資料なら、その場で説明して終わりではありません。相手の上司や別部署に回されることもありますし、後から質問が来ることもあります。開発の成果物なら、動けば終わりではありません。社内で使われ、チームで運用され、障害が起きたら対応し、説明を求められたら答える必要があります。
SNSのデモなら、うまくいったところだけを見せられます。
でも実務では、うまくいかなかった部分も引き受けることになります。
AIを使うなら、その結果にも責任を持つ必要があります。
だから私は、AI発信を見るときに、その人が本番で使っているのかを見ます。
その成果物で誰かを説得したのか。顧客に説明したのか。品質や再現性について語っているのか。失敗や限界にも触れているのか。売上、納期、品質、業務改善にどう効いたのか。
そこが見えない発信は、参考にはします。
でも、鵜呑みにはしません。
AIで作るだけなら、これからは誰でもできるようになります。
問われるのは、それを現場の成果に変えられるかどうかです。
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