イーライリリーの稼ぎは本物か——GLP-1依存の収益構造と、決算の読み方【企業分析①】
※本稿は、世界の製薬大手を1社ずつ読み解く「海外大手シリーズ」の一本です。全体像は世界の製薬会社ランキング——トップ20で読む「業界の地図」からどうぞ。
※本稿は四半期決算ごとに数字を更新しています(最終更新:2026年7月/2026年Q1決算まで反映)。
2026年Q1、Lillyは売上198億ドル、前年同期比56%増を記録し、通期売上ガイダンスを820〜850億ドルへ引き上げた。
成長の中心は、MounjaroとZepboundに使われるtirzepatideである。両製品だけで売上の約65%を占める。
Lillyは1876年創業の老舗で、長くインスリンを中心とする糖尿病企業だった。しかし2022年のMounjaro上市以降、その姿は肥満症と関連疾患を広く狙う「代謝疾患プラットフォーム企業」へ変わり、時価総額では世界最大級の製薬会社になった。
ただ、+56%だけを見て「強い会社だ」と結論するのは早い。売上は、突き詰めれば実現価格 × 販売数量で決まる。そして慢性疾患の薬では、その数量が新規患者の急増で生まれているのか、継続患者の積み上がりで支えられているのかが、成長の持続性を分ける。
実際、Lilly自身がQ1の増収を次のように分解して開示している[^1]。
売上 +56% = 数量 +65% − 実現価格 13% + 為替 4%
いまは数量の増加が価格の低下を大きく上回っている。この関係がどこまで続くのか——本記事では、Lillyが何で稼ぎ、その稼ぎがどこまで持つのか、次の決算で何を見ればよいのかを整理する。
第1章 収益を握る、1つの分子
Mounjaroは2型糖尿病、Zepboundは肥満症を対象とするが、どちらも中身は同じtirzepatideである。
競合のNovo Nordiskも、同じ有効成分を適応症別のブランドとして展開している。成分semaglutideを、2型糖尿病向けにはOzempic(オゼンピック)、肥満症向けにはWegovy(ウゴービ)という名前で出している。**両社とも「一つの成分を、糖尿病用と肥満症用で分けて売る」**という同じ形をとっている。

名前を分けるのは、対象となる患者も、保険の適用も、価格の決まり方も違うからである。同じ薬でも、糖尿病として使うか肥満症として使うかで、支払う相手が変わる。
では、中身は何が違うのか。違いは、作用する相手の数にある。GLP-1とGIPはどちらも「インクレチン」と呼ばれる同種のホルモンで、食事をとると腸から出てインスリンの分泌をうながす。semaglutideがGLP-1受容体だけに働くのに対し、tirzepatideは両方に働く。
ただし、GIP作用が有効性や忍容性(副作用への耐えやすさ)へどう寄与しているかは、まだ完全には解明されていない。
Q1 2026の売上は次のとおりである[^1]。
Mounjaro:86.6億ドル、前年比125%増
Zepbound:41.6億ドル、前年比80%増
合計128.2億ドルで、総売上の64.8%を占める。Lillyの成長は、事実上この単一分子に支えられている。
肥満症向けどうしを直接比較したSURMOUNT-5試験では、72週時点の平均体重減少がZepbound 20.2%に対しWegovy 13.7%と、Zepboundが上回った[^9]。足元の処方数量シェアでもLillyが優位で、米国はLilly 60.1%、Novo 39.4%、米国外でも**53.2%対46.8%**と、2年前から逆転している[^1]。Novoも2026年通期は減収・減益を見込む[^6]。
ただし、この試験は現在の最高用量どうしの比較ではなく(Novoはこの点をめぐりLillyの広告を提訴している[^10])、処方数量シェアも金額シェアではない。実際の売上は、薬効だけでなく価格・供給能力・保険償還・処方医へのアクセスにも左右される。
もう一つの強みは適応拡大である。tirzepatideは2型糖尿病、肥満症、閉塞性睡眠時無呼吸で承認され、MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)、慢性腎臓病、心不全、心血管アウトカムへ開発が広がっている。適応が増えれば肥満症という単一市場への依存は下がるが、安全性の問題や製造障害が起きたときに全社が揺れるという、tirzepatideという単一分子への集中は残る。
そこで重要なのが、別分子の経口GLP-1薬Foundayoである。新しい患者層を開けば柱が1本増えるが、Zepboundからの置き換えが中心なら、分子の分散にはなっても、売上単価には下押しがかかる。発売初期には処方の80%超が「インクレチン治療未経験者」だったと会社は説明しており、事実なら市場そのものを広げていることになる[^1]。Q2決算では、FoundayoとZepboundを並べて、追加需要か社内置換かを確認したい。 ただし、分子と剤形は分散しても、インクレチン市場への依存は続く。
第2章 残る35%を支える大型品にも、価格圧力がかかる
残る売上の約35%を支える主な製品は次のとおりである[^1]。

※Jardianceの売上には一時的な収益が含まれる(2026年Q1は2.5億ドル、前年同期は3.7億ドル)[^1]。製品別売上の出どころは脚注[^1]参照。
目を引くのは、tirzepatideに次ぐVerzenio、Jardiance、Trulicityが、いずれも米国の薬価交渉(IRA)の対象に選定されている点である。Jardianceは2026年から、残る2製品は2028年から交渉価格が適用される[^3]。一方、Jaypirca、Ebglyss、Kisunlaは高成長だがまだ小さい。tirzepatideの次世代を担う最有力候補は開発中のretatrutide(試験ではtirzepatideを上回る減量効果を示す)だが、承認前である。いま販売中の製品には、単独で穴を埋められる柱はない。
第3章 米国が6割——だから価格政策が重い
Q1の売上を地域で分けると、米国121億ドル、米国外77億ドルとなる[^1]。米国が約6割を占める。
この比率が、Lillyにとって米国の価格政策が他社以上に重い理由である。
ただし「価格が下がっている」の中身は、地域によってまったく違う。会社は全製品を合算した増収率を地域別にも分解して開示しており、そこを見ると構図が変わる[^1]。
米国:数量+49%、価格−7% → 売上+43%
欧州:数量+32%、価格+5%、為替+16% → 売上+53%
日本:数量+40%、価格+2% → 売上+42%
中国:売上+54%。Mounjaroが公的保険(NRDL)に収載され、価格は大きく下がり、数量は大きく増えた
その他地域:数量+172%、価格−4% → 売上+178%
冒頭で触れた全社の「価格−13%」には、中国での大幅な価格低下が大きく影響している(Mounjaroの公的保険収載による)[^2]。欧州と日本はむしろプラス、米国も−7%にとどまり、「世界中で値下げが進んでいる」わけではない。中国のNRDL収載は大きな価格の段差として表れやすい一方、米国のMFN合意やIRAは複数年にわたり対象患者とネット価格を動かす。同じ価格低下でも、時間軸が異なる。
Zepboundの値下げと給付拡大が同時に決まった——2025年11月の取引
米国でも、値下げは単純な逆風とは限らない。2025年11月のMFN合意(最恵国価格)は、Zepboundの価格を段階的に引き下げる一方、これまで減量薬を原則給付外としてきたMedicareの対象を、肥満に心血管疾患などを併存する加入者へ初めて広げた[^4]。単価を下げる代わりに、これまで給付外だった患者へアクセスを開く取引であり、価格を下げつつ数量を広げる余地が生まれる。
IRAの影響は「定価の下げ幅」で測ると過大になる
交渉価格が効くのはMedicare経由の売上だけで、民間保険には及ばない。しかも企業の手取りはリベート控除後のネット価格なので、定価からの引き下げ率だけでは影響を測れない。現に、IRA第1弾10品目は定価比38〜79%の引き下げと報じられたが、CMS試算のMedicareネット支出削減率は約22%である[^3]。実際の影響は、ネット価格との差とMedicare売上比率で決まり、製品ごとに異なる。仕組みの詳細は米国の薬価はなぜ複雑かで扱った。
Trulicityは特許切れも近く、価格圧力はIRAだけではない。なお、TrulicityとVerzenioの交渉価格は2026年11月30日までに公表され、2028年1月から適用される[^3]。価格は適用の1年以上前に判明する。
第4章 「爆発的成長」の正体——使い続ける人は、どれだけいるか
ここまでは価格と、数量全体の話だった。だが慢性疾患の薬では、その数量の質——新規患者で伸びているのか、継続患者が積み上がっているのか——が、成長の持続性を決める。カギになるのが継続率である。
Mounjaroの+125%、Zepboundの+80%という数字は、普通に読めば「需要が爆発している」と映る。だが少なくとも肥満症治療としてのGLP-1薬では、実臨床の継続率が大きな課題になってきた。
実臨床では、治験より治療の中断が多い。肥満症治療としてGLP-1薬を始めた患者のうち、1年以内に中断する割合は小さくない(ある学術系外来では12カ月で約半数)[^7]。これは肥満症患者の調査であり、糖尿病治療としてのMounjaroの継続率をそのまま示すものではない。
では、なぜ売上はこれほど伸びているのか。売上が伸びている以上、現時点では新規導入や市場拡大による増加が、中断による減少を上回っていると考えられる。処方人口が何倍にも拡大している局面では、1年継続率が50%でも、新規が2倍以上に増えれば総処方数は増える。
一方、直近では改善も見られる。最近開始した患者では1年継続率が上がっており、供給不足の緩和、保険カバレッジ、処方医の習熟などが背景と考えられる[^7]。ただし調査ごとに対象薬や定義が異なり、単純な比較はできない。
投資家として見るべきは、売上の数量が「新規」と「継続」のどちらで構成されているかである。継続率が上がっていけば、この事業は継続患者の売上が毎年積み上がる構造に近づく。逆に継続率が低いまま新規患者の伸びが鈍化すれば、売上成長率には下押し圧力がかかる。ただし、どの時点で成長が折れるかは継続率だけでは決まらない。価格、適応拡大、海外展開、そしてFoundayoへの移行にも左右される。
第5章 稼いだ現金は、どこで使っているのか
ここまでは売上の持続性を見てきた。だが企業価値は、その売上を現金に変え、次の成長へ再投資できるかでも決まる。そこでキャッシュフロー計算書と貸借対照表から、稼いだ現金の使い方と、成長が鈍った場合の耐久力を見る[^5]。この会社の特徴は、利益率ではなくここにある。以下はいずれもQ1(3か月)の数字である。
営業キャッシュフロー:53億ドル(前年同期17億ドル)
設備投資:23億ドル/買収・開発品の取得など:16億ドル
配当:15億ドル/自社株買い:24億ドル
純有利子負債(有利子負債−現金):381億ドル
構図はこうである。四半期に稼いだ営業キャッシュフロー53億ドルに対し、投資(設備投資・買収)と株主還元(配当・自社株買い)などの支出がそれを上回った。差額は借入と手元現金の取り崩しで埋めており、その結果、純有利子負債は前期末の352億ドルから381億ドルへ、約29億ドル増えている。
つまりLillyは、「稼いだ現金の範囲で投資している会社」ではない。営業キャッシュフローに、借入と手元資金を組み合わせて、投資と株主還元を前倒ししている。
では、負債は増えすぎているのか
絶対額だけ見ると不安になる。だが、資金を生み出す力と並べると見え方は変わる。純有利子負債を営業キャッシュフローと比べると、2023年の5.3倍をピークに、2026年Q1には1.9倍まで下がった[^5]。純有利子負債の絶対額は5年で約3倍になったが、借入の増加以上に、tirzepatideが生むキャッシュが増えたためである(2023年の高さは、事業拡大に伴う運転資本の一時的な流出が主因)。
したがってLillyは、「潤沢な現金だけで投資する会社」でも「借金漬けの会社」でもない。将来需要を見込み、借入も使って投資と還元を前倒ししている会社である。ただし、営業CFの伸びが鈍る一方で投資が高止まりすれば、負債負担は再び悪化する。
この現金が向かう先は、大きく三つある。500億ドルを超える製造設備、retatrutideをはじめとする次世代のパイプライン、そして2026年に入って相次ぐ買収である。いずれも「将来の需要が来る」という前提の上に立っており、前提が崩れれば、設備と買収資産と負債が同時に重くなる。
第6章 次の決算で、どこを見るか
ここからは、四半期ごとに使える手順である。Lillyの決算資料は毎回ほぼ同じ構成なので、見る場所を決めておけば、そのつど同じ問いに答えられる。
1. 数量増加が価格低下を上回っているか
売上の「数量・価格・為替」分解を見る。価格効果がマイナスであること自体より、その幅と、数量がどれだけ上回っているかが焦点だ。地域別に、中国の保険収載による段差なのか、米国政策による継続的な圧力なのかも分ける。
2. ZepboundとFoundayoは補完か、社内置換か
FoundayoとZepboundがともに伸びれば追加需要の可能性が高まり、Foundayoが伸びる一方でZepboundが鈍化すれば、社内置換を疑う。あわせて、成長が新規患者中心か継続患者の積み上がりか——数量の内訳は表に出ないが、経営陣の発言で触れられることがある。
3. acquired IPR&Dを除いた本業の利益はどうか
acquired IPR&D(取得した開発品の一括費用)は四半期ごとの振れが大きい(Q1 2026は5.84億ドルでEPSを0.52ドル押し下げたが、前年同期は1.72ドルだった)[^1]。EPSが下がった四半期は、本業の悪化か開発品取得費用かを切り分ける。
4. 営業CFで投資と株主還元をどこまで賄えているか
営業CFと、投資(設備投資・買収)+株主還元(配当・自社株買い)の合計を比べる。差額を借入と手元現金のどちらで埋めているかまで見ると、第5章の構造が続いているかが分かる。
現時点で、Lillyの稼ぎは本物である。価格が下がるなかでも処方数量と営業キャッシュフローが大幅に増えている。
ただし、その持続性はまだ検証中だ。市場の拡大が鈍ったあとも、治療を続ける患者の売上を積み上げ、Foundayoなど別分子を育ててtirzepatideへの集中を薄められるか。ここまでできて初めて、Lillyは「一つの大型薬で急成長した会社」から「持続的に成長する代謝疾患プラットフォーム」へ変わったと評価できる。
次の決算は2026年8月5日[^8]。この「+56%」は長期成長の入口か、それとも価格と継続率の制約に近づく数字か。最初の答え合わせになる。
稼いだこの現金が、工場・パイプライン・買収へどう配分されているか——その使い道は、続編で追った。
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出典
[^1]: Lilly reports first-quarter 2026 financial results, raises full year guidance, and highlights momentum of new medicines (PR Newswire, 2026年4月30日) https://www.prnewswire.com/news-releases/lilly-reports-first-quarter-2026-financial-results-raises-full-year-guidance-and-highlights-momentum-of-new-medicines-302758113.html 。以下はいずれも一次資料による。総売上19,799百万ドル、製品別売上(Mounjaro 8,662/Zepbound 4,160/Verzenio 1,302/Jardiance 1,114/Trulicity 919/Taltz 733)、地域別売上(米国12,119/欧州3,646/中国693/日本571/その他2,771)、acquired IPR&D費用584百万ドル、Jardianceの一時的収益(2026年Q1 250百万ドル・前年同期370百万ドル)は Eli Lilly Form 10-Q(2026年3月31日締め、Note 2・Note 3・Note 4)。増収の価格/為替/数量分解、Jaypirca 165百万ドル・Ebglyss 145百万ドル・Kisunla 124百万ドル、acquired IPR&Dの1株当たり影響0.52ドル(前年同期比−70%)、米国インクレチン市場シェア(Lilly 60.1%/Novo 39.4%、IQVIA週次NPA・2026年3月27日時点)および米国外シェア(53.2%/46.8%、IQVIA MIDAS)、Foundayoの処方の80%超が新規インクレチン患者である旨は、Eli Lilly「2026 Q1 Earnings」プレゼンテーション資料(2026年4月30日)による。
[^2]: Eli Lilly Q1 2026 Earnings Transcript (The Motley Fool, 2026年4月30日) https://www.fool.com/earnings/call-transcripts/2026/04/30/eli-lilly-lly-q1-2026-earnings-transcript/
[^3]: CMS Medicare Drug Price Negotiation Program。Jardianceは第1弾(2026年1月適用)。第3弾(2028年1月適用)15品目はCMSが2026年1月27日に公表し、TrulicityとVerzenioを含む。CMS発表 https://www.cms.gov/newsroom/press-releases/cms-announces-selection-drugs-third-cycle-medicare-drug-price-negotiation-program-including-first 、選定リスト https://www.cms.gov/files/document/factsheet-medicare-negotiation-selected-drug-list-ipay-2028.pdf 。日程(2026年中に交渉、2026年11月30日までに交渉価格を公表、2028年1月1日適用)はCMS「IPAY 2028 Final Guidance」ファクトシート https://www.cms.gov/files/document/ipay-2028-final-guidance-fact-sheet.pdf およびMilliman解説 https://www.milliman.com/en/insight/key-takeaways-third-medicare-drug-price-negotiation 。第1弾の引き下げ幅は定価比38〜79%、リベート等を含む2023年ネット費用ベースでは約22%。CMSファクトシート https://www.cms.gov/files/document/fact-sheet-negotiated-prices-initial-price-applicability-year-2026.pdf 。ジェネリック・バイオシミラー参入時の取扱い(CMSが実質的な販売・競争="bona fide marketing"と認定した場合に交渉価格の適用が終了しうること、認定時期により適用関係が変わること)はCMS「IPAY 2028 Final Guidance」https://www.cms.gov/files/document/ipay-2028-final-guidance.pdf による。
[^4]: MFN合意の内容はホワイトハウス「Fact Sheet: President Donald J. Trump Announces Major Developments in Bringing Most Favored Nation Pricing to American Patients」(2025年11月)https://www.whitehouse.gov/fact-sheets/2025/11/fact-sheet-president-donald-j-trump-announces-major-developments-in-bringing-most-favored-nation-pricing-to-american-patients/ 、報道はCNBC(2025年11月6日)https://www.cnbc.com/2025/11/06/trump-eli-lilly-novo-nordisk-deal-obesity-drug-prices.html 。具体的な価格:ZepboundのMedicare向け政府価格は月245ドル、対象加入者の自己負担は月50ドル、自費価格は当初約350ドルから2年以内に平均245ドルへ。給付拡大は肥満+一定の併存疾患を持つ加入者が対象。Foundayoの自費価格は用量別で、開始用量0.8mgが月149ドル、2.5mgが199ドル、5.5mg以上が299ドル(高用量は45日以内の再調剤が条件、条件外は349ドル)。LillyDirect https://www.lilly.com/lillydirect/foundayo (2026年7月時点)。
[^5]: Eli Lilly Form 10-Q(2026年3月31日締め)連結キャッシュフロー計算書・貸借対照表。営業CF 5,333百万ドル(前年同期1,666百万ドル)、投資活動による支出3,916百万ドル(うち設備投資2,326百万ドル、買収1,058百万ドル、仕掛研究開発の取得204百万ドル、非流動投資297百万ドル)、配当1,548百万ドル、自社株買い2,356百万ドル。キャッシュフロー計算書上の純借入は、短期借入の増加1,775百万ドルから長期債務の返済750百万ドルを差し引いた1,025百万ドル。ただし貸借対照表上の有利子負債残高は42,503百万ドルから43,370百万ドル(短期4,000+長期39,370)へ867百万ドルの増加(差はFX等の非資金要因)。現金は7,268百万ドルから5,282百万ドルへ1,986百万ドル減少。本文の純有利子負債の増加(約29億ドル)は、この有利子負債残高の増加867百万ドルと現金の減少1,986百万ドルの合計にあたる。SEC EDGAR https://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?action=getcompany&CIK=0000059478&type=10-Q 。年次の推移は各年度のForm 10-Kによる。純有利子負債は2021年130億ドル、2022年140億ドル、2023年223億ドル、2024年304億ドル、2025年352億ドル。営業キャッシュフローは2021年74億ドル、2022年76億ドル、2023年42億ドル、2024年88億ドル、2025年168億ドル。2025年通年では設備投資78億ドル・配当54億ドル・自社株買い41億ドルで、株主還元がフリーキャッシュフロー(90億ドル)を上回る構図は通年でも同じである。
[^6]: Novo Nordisk 2026年第1四半期決算(2026年5月6日)。通期見通しは調整後売上・営業利益とも前年比マイナス。CNBC https://www.cnbc.com/2026/05/06/wegovy-glp1-weight-loss-novo-nordisk-earnings-stock-nvo-ozempic.html
[^7]: 継続率・実臨床での体重減少は次による。Samuels et al., Real-world titration, persistence & weight loss of semaglutide and tirzepatide in an academic obesity clinic (Diabetes, Obesity and Metabolism, 2025) https://dom-pubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/dom.70004 ;Real-World Study Finds Over 50% Stop GLP-1s Within 1 Year (Medscape, 2025) https://www.medscape.com/viewarticle/real-world-study-finds-over-50-stop-glp-1s-within-1-year-2025a1000obm ;Prime Therapeutics の継続率調査 https://www.primetherapeutics.com/ 。※3年継続率14%は2021年にWegovyを開始した患者のコホート、1年継続率40%→63%は高力価GLP-1薬(Wegovy・Zepbound等)の保険請求データにもとづく別の集計であり、いずれもtirzepatide単剤を同一集団で追跡したものではない。対象薬・保険加入状況・中断の定義・観察期間が異なるため、数値を直接接続して比較することはできない。
[^8]: 第2四半期決算の日程は Eli Lilly「Q2 2026 Earnings Call」https://lilly.gcs-web.com/events/event-details/q2-2026-earnings-call による。
[^9]: SURMOUNT-5は非盲検の第3b相試験(751人、糖尿病のない肥満・過体重の成人が対象、72週)。Lillyは2024年12月にトップラインを発表し、結果は2025年5月にNew England Journal of Medicineに掲載された。72週時点の平均体重減少はtirzepatide −20.2%、semaglutide −13.7%。Lilly IR https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/lillys-zepboundr-tirzepatide-superior-wegovyr-semaglutide-head 、論文 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40353578/ 。※本試験は注射剤どうしの比較であり、経口薬(Foundayoと経口Wegovy)を直接比較したものではない。
[^10]: Novo Nordiskは2026年7月21日、ニュージャージー州連邦地裁でLillyを誇大広告で提訴した。SURMOUNT-5を根拠とするLillyの広告が、その後承認された高用量Wegovyを反映しておらず、両剤の最高用量どうしを比べた試験は存在しないのに現在の製品優劣を示すように見せている、と主張。広告の差し止めと訂正広告を求めている。Lillyは、SURMOUNT-5が唯一の直接比較試験(ゴールドスタンダード)だと反論。Healthcare Dive(2026年7月21日)https://www.healthcaredive.com/news/novo-lilly-lawsuit-obesity-drug-glp1-marketing/825801/ 、CNBC https://www.cnbc.com/2026/07/21/novo-nordisk-sues-eli-lilly-glp-1-ads.html 。※本件は係争中で、今後の進展により状況が変わりうる。
Hiro|製薬企業の経営企画担当。製薬業界をビジネス視点で解説。
※本稿は公開情報に基づく業界・ビジネスの解説であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は読者ご自身の責任で行ってください。本文は2026年4月30日発表のQ1決算を基準とし、価格・競合動向については2026年7月時点の公開情報で追補しています。以降の決算・臨床データ・規制・株価により、内容が陳腐化する可能性があります。

