②中編【キャラ紹介ストーリー】茜色の空と、白い月。【東野 深月(ひがしの みつき)&デズデモーナ】
こんばんは、「まる。」です!
更新、遅くなって申し訳ありません。🙇♂️
何度も、書き直しをしてました😅
(投稿されてたのに急に見れなくなったって方いらっしゃいましたらすみません!)
その分、とても面白いものが書けたと思うので是非、
前半と合わせて読んでください。🍀
補足:
書きたい熱い展開をこれでもかと詰め込んだ結果、
予想以上にボリューミーになってしまったので…
急遽【全3部構成】でお届けすることにしました😏
長いお付き合いになってしまい申し訳ありません……!🙇♂️
さて、深月とデズデモーナの物語も、
いよいよ中盤戦へと突入します。
最愛の相棒を失ってしまった彼女は、
ここからどうやって自らの物語を紡いでいくのか……。
どうか最後まで、その軌跡を見届けてください!📗
■前編
💡 読者の皆様へお知らせ
ここからは、いよいよ『HorizonNotes』のカードバトル展開が本格的に絡んできます!
カードゲームの知識が全くなくても「一つの熱いドラマ」として楽しんでいただけるように工夫して書いていますが、
もしよろしければ、以下の記事で事前にルールをチラ見しておいていただけると、
バトルの解像度がグッと上がってより一層楽しめるかもしれません!🔥
前回のあらすじ
日常の夢 /作(編)曲 : 音楽の卵
フリーBGM素材 音楽の卵
18歳を迎えると、相棒である星の精霊の姿が失われてしまう世界。
傷つくことを恐れ、周囲が望む「優等生」を演じ続けてきた深月は、
かつての夢を諦め、最愛の相棒『デズデモーナ』を三年間ものあいだ暗い引き出しの奥に閉じ込めていた。

しかし18歳の誕生日、幼馴染・茜の痛切な言葉をきっかけに、深月は目を背け続けてきた自分の本当の心と対峙する。

そして訪れた、タイムリミットの深夜零時。
完全に姿を消してしまう直前、デズデモーナが深月に託したのは
「どうか、素敵な作家さんになってくださいな」
という、あまりにも優しい最後の願いだった。

涙と共に別れの悲しみを乗り越え、デズデモーナとのあたたかい記憶を絶対に「最高の物語」にしてみせると誓った深月。
もう二度と逃げない。
かつての夢を取り戻し、相棒の奇跡を証明するため、
彼女は『HorizonNotes』最高峰の舞台であるWCS予選へと決意の足を踏み入れる――。
第七章 : 宙に消えた白い月

茜色に燃えていた空が、ゆっくりと藍色の帳を下ろしていく。
見慣れたはずの街の輪郭が曖昧に溶け出し、
やがて静かな夜の底へと沈んでいく時間。
冷たくなり始めた風に肩を竦めながら、
私はふと足を止め、鞄の中から一冊の黄色い日記帳を取り出した。
ページをめくる指先に、不器用で、
けれど確かに熱を帯びていた過去の記憶たちが触れる。
明日は、いよいよWCSの予選大会。
実に、三年ぶりとなる公式戦の舞台だ。
それは、「大人」という境界線を越えてしまった私にとって、
あまりにも無謀で、滑稽にすら映る挑戦だった。
星の精霊たちの姿が見えなくなっただけではない。
今の私の目には、かつてあんなにも鮮やかに意味を持って輝いていたカードの文字すらも、
読み解くことのできないただの無機質なインクの染みにしか映らないのだから。
振り返っても、そこに白い髪の少女の姿はない。
子供の頃からずっと傍で微笑んでくれていたデズデモーナは、
もうどこにもいない。
それでも。
あの別れの夜、涙の痕が残る真新しいページに、
私が自らの意志で刻み込んだ言葉があった。
『ふたりでWCSに出場する』
『人々の心を揺さぶるような、感動的な物語を書く』
それは、幼い頃に無邪気に描いた夢物語ではない。
痛みを伴う現実を知り、痛切な喪失を味わい、
大人になって初めて綴った血の通った誓い。
その切実な文字の羅列は、
魔法が消え去ったこの世界でも決して色褪せることなく、 確かな熱量を持って私の背中を静かに押し続けていた。
茜色の名残を完全に飲み込んだ夜空に、ぽつりと、白い月が浮かんでいる。
「……私、頑張ってくるから」
冷たい夜の中に溶けていったその小さな呟きは、 誰の耳にも届かない。
けれど、私は真っ直ぐに前を向いた。
月の光に照らされた家路を、 私はもう迷うことなく、
自分の足で歩き始めた。
第八章 : 空白の三年と、変わらない場所
ショッキングパープル /作(編)曲 : 音楽の卵
フリーBGM素材 音楽の卵
パシフィコ館浜展示ホール、C会場。
新幹線で1時間ほどの旅を経てたどり着いた会場には、
視界を埋め尽くすほど溢れんばかりの人の波があった。
「いやー、いつ来てもやっぱ凄い熱気だね!
深月は三年ぶりだから、ビックリしたんじゃない?」
茜の言う通り、
会場は私がプレイしていた頃よりも遥かに大きな賑わいを見せていた。
私が『HorizonNotes』から目を背けていた、三年間。
その間にもこのゲームは数多くのプレイヤーたちによって進化を続け、
今や数万人を超える人々の「夢の舞台」へと成長していたのだ。
「……うん。まさか、ここまで大きくなっているとは思わなかったよ」
圧倒されそうになる私を気遣うように、茜は少しだけ声を落とした。
「一応、今の環境(※メタ)と要注意なデッキは伝えた通りだけど……。
深月、分かってると思うけど、こういう大型大会は何が起こるか分からない。
表の大会結果には出てこないような、
型にハマらない未知のカードも絶対に出てくるよ」
茜の視線が、私の瞳の奥を覗き込むように揺れた。
「……※テキストが読めなくなったあんたが、
初見の盤面相手にちゃんと戦えるかどうか。
正直、すごく心配」
不安そうに眉を下げる茜に、私はゆっくりと首を振った。
「大丈夫。心配しないで」
「でも……」
「……カードの最新情報だけは、この三年間、ずっと追いかけてたから」
その言葉を聞いた瞬間、茜は弾かれたように目を丸くした。
無理もない。私は彼女の前でずっと、
「もうカードには興味がない」という優等生の仮面を被り続けてきたのだから。
けれど、本当は暗い部屋のベッドの中で、
誰にも内緒で大会の環境を追い続け、頭の中でシミュレーションを繰り返していた。
相棒のデズデモーナと、いつかまた戦える日を夢見て。
驚きの後、茜の顔にじんわりと嬉しそうな、
そしてどこか誇らしげな笑みが広がった。
「……そっか。なんだ、そうだったんだ」
彼女は小さく息を吐き出すと、
もう心配するのをやめたように、いつもの快活な表情に戻った。
「じゃあ、私はこっちの卓だから。深月――」
茜は背を向けかけ、ふと肩越しに振り返る。
「あんたと戦えること、楽しみに待ってるよ」
そう言い残し、私の親友であり、幼馴染であり
……最大のライバルである茜は、
熱気渦巻く会場の奥へと手を振りながら駆けていった。

※メタ(環境): カードゲーム用語。現在流行している強力な戦術やデッキ、またはそれらを対策・分析する考え方のこと。
※テキスト: カードに記載されている効果やルールの説明文。
18歳を過ぎて「大人」になった深月には、文字が意味を持たないインクの染みに見えてしまっている。
第九章 : 盤面の観測者たち
ざわめきと熱気が渦巻く会場に、開会を告げるアナウンスが響き渡る。
『――それでは、第一回戦を開始いたします。
バトル、HorizonNotes!!!』
***
一方その頃。
数万人がひしめく大型大会ということもあり、
会場上部に設けられた公式配信の解説席でも、大いなる盛り上がりを見せていた。


『さぁ!!! ついに始まりました、HorizonNotes WCS予選大会!!!
本日の実況はお馴染み、わたくし「まる。」がお送りいたします!
そして、本日のスペシャルゲストとして、
あの人気Vtuberであり、
見事ランク1等星級に到達された沙弥選手にお越しいただきました!!!』

沙弥『にゃむ。
仏の顔は三度まで。
でもネコの顔はいつどの角度で見ても可愛い。
迷える信徒を導く電子の修行僧……
兼、超人気(予定)配信者『沙弥(しゃみ)』にゃむ!』
■プレイヤーデータ:沙弥(しゃみ)
大会成績:
館浜CS ベスト16 / 名古屋GP ベスト64 / 大阪CS 3位 / 東京GP ベスト8プレイヤーランク「1等星級」に位置するトッププレイヤーの一人。
3.69(みろく)年生(※実質、留年)。戦術: 無限の徳(ライフ)をリソースに変える、
不沈のライフゲイン戦術を得意とする。
回復スペルやスキルで巧みに盤面を維持し、
長期戦による精神的な駆け引き(削り合い)に持ち込む。相棒: 全天21星の一つをモチーフとした高位アルカステラ「カノープス」。

「沙弥選手は、HorizonNotesプレイヤー全体のわずか0.5%しか存在しない『ランク1等星級』の称号を持つ、
まさにトッププレイヤーの一人ですよね!」

「そうにゃむ!!!
今期に関しては、もう既に大会ポイントで結果を出してWCS本戦の出場権をゲットしてる、
最強プレイヤーの一人にゃむ!
今回は、この特等席から選手たちを高みの見物させてもらうにゃむよ!」
その時、沙弥の手元のカードから温かな光が収束し、
やがて美しい天女の姿を形作った。

「沙弥……あまり調子に乗らない方が身のためですよ。
あ、申し遅れました。
わたくしは沙弥のパートナーを務めさせていただいております、カノープスと申します。
あ、えっと……ぶんぶん、はろー!」

「かのぷー…パクリは良くないにゃむよ。」

「えっ!? やって欲しいと言ったのは沙弥でしょう!?」

二人が定番の漫才を繰り広げ、
配信のコメント欄が「草」「かのぷーかわいい」と盛り上がる中、
実況者はコホンと一つ咳払いをして進行を戻す。

「ずばり……今大会で、
沙弥選手が注目しているプレイヤーはいらっしゃるのでしょうか?」

「そりゃあ、WCSの出場権がかかった超大型大会にゃむからね。
各会場、化け物ぞろいにゃむよ。
たとえば――」
予選大会終盤戦
WCS予選大会は、いよいよ大詰めを迎えていた。
次々と勝敗が確定し、夢に手が届く者が歓喜の声を上げる傍らで、
敗れた者たちはそれぞれの痛みを抱えて会場を後にしていく。
光と影が入り混じる熱気の中、いよいよ最後の幕が上がろうとしていた。

「各グループ、それぞれ白熱の激戦でしたね……!
沙弥選手、今日ここまで見ていて、
特に気になるプレイヤーはいましたか?」

「……あー、うん。
正直、一人だけ全く予想外の選手がいるにゃむ」

「おっ! それは誰でしょう?」

「Cグループ、『苺ハンカチ』って名前の選手にゃむ。
……この子、今期の大会実績がこの1カ月以外ほぼ白紙にゃむよ」

「…ええ。わたくしも少し気になっておりました」

「苺ハンカチ選手……ですか。
これまでの戦績を見ても……確かに目立たない方ですね。
でも、お二人がそこまで気にするということは……」

「彼女の使うデッキはスペルデッキ……それも、デズデモーナを軸にしたやつ、にゃむ。
普通、デズデモーナをWCSの舞台に持ってくるプレイヤーなんていないにゃむよ。
あの『オセローの悲劇』の強烈なデメリット効果は、
競技の場では致命傷になりすぎる」

「……それで、今のところ何勝しているんですか?」

「……5勝1敗、にゃむ」
配信のコメント欄が、一瞬ピタリと静まり返った。

「5勝……!?
デズデモーナで、この大舞台で……?」
【コメント欄】
『は? デズデモーナで勝ち越し?』
『嘘だろwww 事故デッキの代名詞じゃん』
『苺ハンカチって誰だよ、プロのサブ垢?』

「……それだけじゃないにゃむ」

「えぇ…」
沙弥は手元のモニターを食い入るように見つめ、目を細めた。
カノープスも同意するように、真剣な表情で頷く。


「……カードの処理は完璧。効果はちゃんと把握できてる。
でも、なんか……おかしいにゃむ」

「おかしい…とは?」

「目の動き方、手の動き方が違うんにゃむよ。
ドローしてカードを手にした瞬間、視線でテキストを『読む』動きじゃない。
指の腹でスリーブの擦れや紙の重さを『触れて確かめる』ような動きをしてる。
……あんなプレイングをする上位陣、沙弥は今まで見たことがないにゃむ」

「…まさか」
沙弥は、しばらくモニターに映る深月の姿を無言で見つめ、
やがて信じられないものを見るような声で呟いた。

「……あの子、もしかして……
カードのテキストが、読めてないのかもしれないにゃむ」
その一言で、配信のコメント欄が爆発したように騒がしくなった。
【コメント欄】
『テキスト読めないってどういうこと!?』
『暗記だけでデズデモーナ回してんの!? 化け物かよ!』
『苺ハンカチ、何者なんだ……!』
第十章 :緑色の目をした怪物と、譲れない誓い
回想 /作(編)曲 : 音楽の卵
フリーBGM素材 音楽の卵
様々な強者たちが、それぞれの想いと夢を懸けて激戦を繰り広げていく中。
過酷な予選大会は、いよいよ大詰めを迎えていた。
(……今のところ、戦績は5勝2敗)
カードのテキストが読めず、相棒たちの声も聞こえない。
そんな絶望的な状況で、
たった一人でここまで勝ち残れたのは奇跡に近かった。
カードゲームの競技シーンを知る人間からすれば、
この時点で十分に誇れるほどの結果だと言えるだろう。
……でも。
(次が最後の試合。
これに勝てば、ギリギリWCS本戦に届くかどうか……)

過去の三年間、『HorizonNotes』から逃げ続けていた私には、
当然ながらシード権や過去の大会ポイントといったアドバンテージは何一つない。
WCSに出場するには、
この予選大会で文句なしの成績を残すしかなかった。
そのためには、何が何でもここで勝ち越しを決めなければならない。
祈るような気持ちで、指定された最終戦のテーブルへと向かう。
しかし、そこに座っていた対戦相手の顔を見た瞬間、
私の足は縫い付けられたように止まった。
「……やっぱ、最後の相手。深月だったんだ」

茜がテーブルの対面に座り、静かに声を掛けてきた。
「まさか、あんたが本当にここまで勝ち残るとは思ってなかったよ」
茜はどこか複雑な、見たことのないような表情を浮かべながら、
手元のデッキをシャッフルし始める。
「……茜、あの」
「ねぇ、深月」
私が何かを言いかけるより早く、茜がそれを遮るように言った。
「昔、一緒に大会に出てたあんたなら分かるでしょ。
……今、この最終戦のテーブルに残ってる私たちは、
もう後がない者同士なんだ」
カードゲームの大型大会には、
現在の戦績(勝敗数)が同じ者同士がマッチングされる仕組みがある。
つまり、私の目の前に座っている茜もまた――。
「お互いにとって、これが多分、
本戦へ行けるかどうかの最後の勝負。
だから……試合が始まる前に、あんたに言いたい事を全部話すわ」
しばらく、カードを切る音だけが二人の間に横たわっていた。
周囲の喧騒が、まるで水の底にいるかのように遠い。
茜の指先が、一瞬だけ震えた。
「……私、あんたのことがずっと羨ましかった」
その言葉に、私は息を呑む。
太陽のように眩しくて、迷いがなくて、
私にはない強さを持っていたはずの彼女の口から出たのは、
あまりにも意外な告白だった。

「私よりずっと頭が良くて、大人たちからも期待されていて。
……何より、私が一番大好きなこれだって、
現役の頃のあんたの方が上手かった」
茜の瞳の奥が、暗く揺れる。
彼女もまた、自分の心に潜む怪物と必死に戦っていたのだ。
かつて私の胸の奥に巣食い、
私の心をひどく蝕んでいたのと同じ――緑色の目をした怪物と。
「あんたがカードを辞めて逃げていた三年間。
私はずっと戦い続けた。
WCSで優勝するっていう、私の唯一の夢を、これだけを叶える為に。
……でも、どれだけ頑張っても、どれだけ勝っても。
いつも、私の頭の中には『あの頃のあんた』の姿がこびりついて離れなかった」
茜は、膝の上で両手を白くなるほど強く握りしめ、呻くように言った。
「……三年間。
あんたがずっと目を背けてきた三年間。
私は、夢だけの為にずっと頑張って来た。
あんたは私には絶対勝てない。
ずっと、自分の夢から逃げ続けてきたあんたなんかに……!」
茜の真っ直ぐで、痛切な瞳。
その強い光に、思わず目を背けたくなる。
確かに、彼女の言う通りだ。
私は茜のようにはなれなかった。
大きな夢と正面から向き合い続ける強さなんて、私にはなかった。
傷つくのが怖くて、
一番大切な相棒を暗い箱に閉じ込めて逃げ出した、卑怯者だ。
……でも。
『――わたくしは、あなたのことを信じているわ。深月』
「……ごめん、茜」
私は顔を上げ、かつての戦友であり、
最大のライバルを真っ直ぐに見据え返した。
「悪いけど、それでも私は……茜に勝つよ。
たとえそれが、あなたの三年間を、
あなたの夢を壊してしまうことになっても」
私の背中には、消えゆく間際に「信じている」と微笑んでくれた、
たった一人の相棒との誓いがあるのだから。
互いの視線が、盤面の中央で火花を散らすように交錯する。
そして、会場の喧騒を切り裂くように、
無機質なマイクの声がホール全体に響き渡った。
『――それでは、最終戦を開始いたします。
バトル、HorizonNotes』
互いの夢と託された想い。
ーーー私たちの、幼少の頃からの夢を懸けた戦いが、今、始まる。

後半へつづく!
互いの夢と意地が交錯する、予選最終戦。
文字の読めないカードを握りしめた深月は、
過去の記憶と、かつて茜と笑い合った日々の思い出だけを頼りに、
親友の苛烈な猛攻へと立ち向かう。
発動するのは、デズデモーナ最大の呪いにして最強の切り札――『オセローの悲劇』。
ターンが経過するごとに段階的に襲い掛かる「7つの致命的なデメリット」を耐え抜き、
その先にある「8ターン目の奇跡」に辿り着くことはできるのか?
そして、激闘の果てに深月が見つける「最高の物語」の結末とは――。
◾️最終章
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