【連載小説】w 「あたしの道草」⑦
(七)
「リエちゃん!」
西口公園の噴水の前にあるベンチに座ってスマホを見ていたリエちゃんに、あたしは声をかけた。
「あ、マリ! ごめんねー、スズキさんのデートがなくなったから大丈夫かなーと思って連絡してみた」
リエちゃんはベンチから立ち上がって言った。
「うん、あたしもこっちに出てきてたし、暇でどうしようかなって思ってたとこ、そこの先の喫茶店で高菜ピラフを食べてた、リエちゃんはどこか行ってたの?」
「ああ、えっと、実はサカガミさんと会ってたんだよね」
「え、デート?」
「ん-デートっていうか、昨日からずっとサカガミさんのマンションにいたんだよね」
「ええ! さすがリエちゃん! やっぱりスゴイね」
「別にすごくないでしょ、普通だよ、てか、マリ、あんた、その格好で今日スズキさんに会うつもりだったの?」
え、変かな?ってあたしは答えたんだけど、やっぱりジャージの上下っておかしいかな。
「まあ、あんたは美人で可愛いから何を着ても似合うと思うけど、さすがにジャージの上下っていうのもあんまりじゃない? スズキさんと初対面でしょ?」
「そっか、初対面でジャージはマズイか、でもいつも通りだし、そのほうがリラックスして話せるかなって、、」
「うーん、まあ、いつも通りでいいとは思うけど、、でも、もう少しオシャレな服にするとか、、なんかズボラな感じに見えちゃうよ」
そう言ってリエちゃんは、あたしを見て少し呆れたような顔をした。
「まあ、いいけどね、自由だから」
「そっか、このジャージ気に入ってるんだけどね」
実は、あたしなりに色々考えていつものジャージにしたんだけど、リエちゃんからしたらやっぱり変なんだね。
「まあ、マリの場合、あんまり関係ないか、、でも今日、ちょっと残念だったね」
「うん、でも仕事じゃ仕方ないよね」
「スズキさん、かなり残念そうだったらしいよ、また改めて誘うって言ってるみたい」
リエちゃんは、スズキさんに会ったことがあるから、大体どんな人か知っているらしい。
あたしはリエちゃんに気になってたことを聞いてみた。
「リエちゃん、ちょっと気になってたんだけど、スズキさんってどんな人?」
「え? 今? 、、、あ、うん、そうだね、よく考えたらあまりそういうこと話してなかったかもね、でも、マリ、あんまりスズキさんに興味ないのかと思ってた」
「そうなんだよね、実はあんまり興味はなかったんだけど、建築系の会社で働いてるって聞いて、もしかしたら結構ゴツイのかなと思って、ちょっとドキドキしてるんだよね」
「あれ、マリ、そういう感じがタイプなんだっけ?」
「うん、なんか懐かしいっていうか、、」
「懐かしい、、?」
リエちゃんが、腑に落ちないって感じで、あたしの顔を見返してきたから、あたしはちょっと笑いそうになったんだよね。
まあいいけど、と言ってリエちゃんは、ちょっと思い出すような顔をしながら、顎に手を当てた。
「私も一回しか会ったことないからなあ、あくまでも、私の印象だけど、そんな悪い人ではなさそうな感じかな、サカガミさんとは高校時代に仲が良かったらしくて、今だに連絡とって会ったりするくらいだから、親友っていうかそんな感じみたい、サカガミさんの話だと、高校時代に一度彼女ができたらしいんだけど、すぐに振られたっていう話、、高校を卒業してしばらくはアルバイトくらいしかしていなかったみたいなんけど、2,3年前くらいに建築系?の会社に就職して今に至るって感じみたい、、あ、それから、スズキさんはそんなに身体が大きいっていうか、マッチョなタイプじゃないよ、残念ながら」
リエちゃんは、そう言ってあたしを見た。
リエちゃんは、あたしが筋肉系マッチョな人が好きだって思ったみたいだけど、あたしはただ単に海外では大きい人ばかり見てたから、そういう感じが懐かしいと思っただけなんだよね。
10才くらいの時にフランスに住んでた時に、近所にオランダ人のおじさんが住んでて、時々、道で会うと挨拶してくれたんだけど、メチャクチャ大きな人で、横に並ぶとあたしの顔がちょうどおじさんの腰のあたりで、あたしはおじさんの顔よりおじさんの腰の茶色いベルトの方が、よく覚えてるくらい。
もちろん、みんながみんなそんな大きな人ではないけど、全体的に海外の人はゴツゴツして大きい人が多いよね。
「なるほど、そっか」
あたしがそう言うと、リエちゃんは意味あり気にあたしの顔をじっと見て、
「サカガミさんの話だとスズキさん、高校を卒業してからは彼女はいなかったらしいよ」と言った。
リエちゃんは、あたしを促して西口公園の中を駅方面に歩きだした。
ふーん、とあたしは言ってリエちゃんに
「そういえば、リエちゃん、今日はショッピング? 洋服でも買うのかな?」
と聞いた。
「あたしの道草」⑧に続く
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