【Log.6-02】ストーカー幽霊は転生しても諦めない
🪦〈 怪奇同好会へようこそ 〉🪦
~変人先輩と巻き込まれ俺の、受難な日々~
BLラブコメ×オカルト / 3話完結
悠斗の貞操を守るため、神社での「愛の(?)同衾合宿」がスタート。現れたのは新撰組を名乗るストーカー侍だった! 現代の変態・真堂 vs 幕末の純愛侍、悠斗を巡るガチバトルの行方は――。
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第2章:真剣勝負(恋のライバル的な意味で)
夜。真白先輩の実家である神社の境内にある「離れ」。
かつて俺たちが手錠で繋がれて一晩を過ごした因縁の場所に、布団が三枚敷かれていた。
「よし、悠斗。こっちへ来い。一緒に寝ようか♡」
「断固拒否します。俺は端っこで寝ます」
先輩がバフバフと布団を叩いて誘ってくるが、俺は無視した。
しかし、詩音が無表情で俺たちの間に割り込んだ。
「待って。今日は私が真ん中に寝るわ」
「はあ!? なぜだ詩音! 俺と悠斗の愛の結界を邪魔する気か!」
「違うわよ。霊的に一番狙われる悠斗くんを端にして、私がバリアになるの。……あと、会長が夜這いしないように監視するため」
「ちっ……鋭いな」
「男子二人に挟まれて女子高生が川の字とか、絵面的にアウトだろ!」
俺のツッコミも虚しく、結局、[真白]ー[詩音]ー[俺]という奇妙な並びで消灯となった。
暗闇の中、虫の声だけが響く。
……本当に、来るのだろうか。
深夜。
その時は突然訪れた。
(……動けない……っ!)
金縛りだ。全身が鉛のように重く、指一本動かせない。
来た。奴だ。
冷たい空気が足元から這い上がってくる。
『……愛しき者よ……今宵も美しい……』
耳元で、甘ったるい男の声がした。
ゾワリと全身の毛が逆立つ。
見えない手が、俺のパジャマのボタンに掛かる。ブチッ、ブチッ、とボタンが弾け飛ぶ音が静寂に響いた。
(やめろ! 変態! 何が目的だ!)
俺の前合わせが肌けた、その瞬間。
「このハレンチ悪霊めがああああああ!!」
ドガアアン! と襖(ふすま)が吹き飛ぶような声がした。
真白先輩だ。飛び起きた先輩は、すでに普段の制服ではなく、ガチめな神職の狩衣(かりぎぬ)姿に着替えていた。早着替え早すぎだろ。
詩音もすでに巫女装束を纏っている。
「術式展開! 視覚化!」
二人が印を結ぶと、俺の上にのしかかっていた「黒い影」が、ブワリと実体を結んだ。
月明かりに照らし出されたその姿に、俺たちは息を呑んだ。
髷(まげ)を結い、浅葱色(あさぎいろ)のダンダラ模様の羽織。
腰には大小二本の刀。
詩音・真白『侍!?』
幽霊は、俺の胸元から顔を上げ、ニヤリと不敵に笑った。端正な顔立ちだが、目が完全にイッている。
「フッ。某(それがし)の姿が見えると言うのか。……邪魔をするな。今、妻との睦言(むつごと)の最中ゆえ」
「誰が妻だ!」
金縛りが解けた俺は、慌てて布団の隅へ転がった。
「いかにも。拙者、京の都を守護せし治安部隊。選りすぐりの浪士組」
詩音・真白『新撰組!?!?』
「この者は拙者がいただく。運命にて結ばれし仲ゆえ」
自称・新撰組の幽霊は、堂々と宣言した。
それに噛み付いたのは、当然、現代の変態・真白先輩だ。
「待て待て待て!!! いただくとかイミフだが、そいつは渡すわけにはいかん! 悠斗は俺のものだ!」
「ほお? 剣で名を馳せた某に、木刀で挑むと言うか」
幽霊はゆらりと立ち上がり、腰の刀を抜いた。
シャラ……という金属音が、本物の殺気を孕んで響く。月光を反射したその刃は、霊体とは思えないほど鋭く、冷たい輝きを放っていた。
「面白い。恋敵(ライバル)を斬り伏せてこその略奪愛!」
「上等だ! 悪霊如きに俺の愛が負けるか!」
真白先輩の目つきが変わる。
いつものふざけた色は消え、スッと重心を落とす。両足の幅を決め、木刀を正眼(せいがん)に構えた。その姿は、背筋が凍るほど美しく、そして隙がなかった。
普段は残念なオカルトマニアだが、この男、無駄に文武両道なのだ。
「悠斗、下がっていろ。……流れ弾ならぬ、流れ霊気(エクトプラズム)が飛ぶぞ」
「ちょ、マジでやるんですか!?」
「悠斗くん、こっち!」
詩音が俺の腕を引き、部屋の隅へと退避する。
次の瞬間、空気が爆ぜた。
「キェェェェイ!」
裂帛(れっぱく)の気合いと共に、真白先輩が踏み込んだ。
速い。
床を滑るような「すり足」で一瞬にして間合いを詰め、木刀を振り下ろす。剣道の基本にして奥義、正面打ちだ。
だが、幽霊もさるもの。その一撃を紙一重でかわすと、逆袈裟に斬り上げてきた。
――ガギンッ!
火花が飛び、空間が歪むような硬質な衝撃音が響く。先輩は切っ先を返し、相手の刃を側面から弾いたのだ。
「ほう、やるな現代人! 筋がいい!」
「伊達に毎朝、素振りを千回しているわけではないのでね!」
「何のための素振りだ!」
「煩悩を払うためだ! 全く効果はないがな!」
言い合いながらも、二人の剣速は上がっていく。
ヒュン、ヒュン! と風を切る音が重なり、火花のような青白い光が散る。
幽霊の剣は、実戦で磨かれた殺人剣だ。躊躇(ためら)いなく首や心臓を狙ってくる。
対する先輩は、研ぎ澄まされたスポーツ剣道と、神職としての「祓い」の太刀筋が混ざった独特の動きだ。
「そこだ!」
先輩が手首を返し、幽霊の小手(こて)を狙う。
幽霊がそれを嫌って下がった瞬間、先輩はさらに踏み込み、強烈な突きを放った。
「もらった!」
「甘い!」
幽霊はその突きを首を傾けてかわすと、がら空きになった先輩の胴へ、強烈な横薙ぎの一撃を放った。
回避不能。
誰もがそう思った瞬間、先輩は信じられないバネで真上に跳躍し、その斬撃を飛び越えた。
「なっ……!?」
「悠斗の隣にいていいのは、過去も未来も俺だけだ!! ……あと裸を見るのも俺だけだあああ!」
空中で体勢を整え、重力を乗せた上段からの一撃を叩き込む。
その執念は、まさに鬼神。
「くっ、この変態ごときがぁぁ!」
幽霊はとっさに刀を頭上で構え、防御する。
――バキィィィィィン!!
凄まじい音が炸裂し、衝撃波で畳がめくれ上がった。
俺と詩音は風圧で顔を覆う。
土煙が晴れた後。そこに立っていたのは、両者だった。
しかし。
真白先輩の手にある木刀は、半分の位置で無惨に砕け散っていた。
「……っ」
「フッ、勝負あったな」
幽霊は刀をゆっくりと鞘に納めた。その顔には、余裕の笑みと、わずかな賞賛の色があった。
「名刀『兼定(かねさだ)』の霊刀を受け止めるとは。……貴様、名は?」
「……真白だ。怪奇同好会会長、真白」
先輩は折れた木刀を放り投げ、乱れた髪をかき上げた。負けたというのに、その横顔は悔しいほど絵になっていた。
「真白か。覚えておこう。……今日はこのくらいにしておいてやる」
「待ちやがれ、まだ俺の拳が残ってるぞ」
「野暮なことは言うな。夜明けが近い」
幽霊は流し目で、部屋の隅で震える俺を見た。
「愛しの君よ。邪魔が入ったが、我らの運命は変わらぬ。……また会おう」
キザな台詞を残し、幽霊は朝霧のようにスウッと消え失せた。
「……はぁ、はぁ……」
部屋に静寂が戻る。
先輩はその場に大の字に倒れ込んだ。狩衣はボロボロで、肩で息をしている。
「……先輩、大丈夫ですか?」
俺が恐る恐る近づくと、先輩はカッと目を見開き、俺の腕をガシッと掴んだ。
「悠斗! 見たか、俺の勇姿を!」
「はいはい、見ましたよ。すごかったですね(棒)」
「木刀さえ折れなければ勝っていた! ……あと、あいつ俺よりちょっと顔が良かったのが腹立つ!」
「そこ!?」
詩音が呆れたように、折れた木刀を拾い上げた。
「……でも、あの幽霊の剣を受け止めるなんて、会長も人間辞めてるわね」 「愛の力だ」
こうして、真白先輩の敗北(木刀破損による判定負け)により、ストーカー侍との戦いは持ち越しとなったのだった。
(続く)
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因習村の生贄に選ばれたんだが〜相手が変人先輩(男)な件〜
