【Log.6-01】ストーカー幽霊は転生しても諦めない
👻〈 怪奇同好会へようこそ 〉👻
~変人先輩と巻き込まれ俺の、受難な日々~
BLラブコメ×オカルト / 3話完結
怪奇同好会に新たな依頼(?)が舞い込む。悠斗が毎晩「全裸」にされる怪奇現象が発生! 犯人はまさかのイケメン幽霊で、真堂先輩の嫉妬メーターが振り切れる、波乱の幕開け回。
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第1章:そのあざ、情事につき
「結論から言おう。悠斗、お前……浮気しているな?」
放課後の旧校舎。カビと埃、そして今日も今日とて怪しげなお香の匂いが充満する「怪奇同好会」の部室で、その男――会長の真白(ましろ)先輩は、悲劇のヒロインのような顔でそう告げた。
窓から差し込む西日が、彼の整いすぎた顔立ちと、無駄に長い足、そして手にした入部届(という名の身代金請求書)をドラマチックに照らし出している。
俺、高校一年の悠斗(ゆうと)は、こめかみを抑えながら重いため息をついた。
「……あの、先輩。浮気ってなんですか。そもそも俺たち、付き合ってませんよね?」
「照れるな。俺たちの魂は前世から結ばれている(という設定だ)」
「設定って言っちゃったよ。で? いきなり言いがかりつけてきて、何なんですか」
俺は気だるげに机に突っ伏した。
ここ数日、体調がすこぶる悪い。体が鉛のように重いし、肩こりは酷いし、万年寝不足だ。今日も部活をサボって帰りたかったのだが、この変人先輩に「サボるなら家まで迎えに行く(合鍵作成済み)」と脅されて渋々やってきたのだ。
「とぼけるな。……悠斗、こっちへ来い」
「え、何すか。ちょっ……!」
先輩が長い腕を伸ばし、俺の顎を強引に上向かせた。
至近距離に迫る美形。眼鏡の奥の瞳が、俺の首筋をじっくりと観察するように舐め回す。
「……やはりだ。見ろ、この『キスマーク』を」
「はあ!?」
先輩が俺のワイシャツの襟を乱暴に寛(くつろ)げた。
スマホのインカメラで見せられた自分の首筋を見て、俺は絶句した。
そこには、赤黒い鬱血(うっけつ)したような跡が、点々と、それもかなり生々しく残っていたのだ。首筋だけじゃない。手首にも、手錠をかけられたような青あざがある。
「な、なんだこれ……!?」
「しらばっくれるな! どこの馬の骨だ! 俺という極上の男がいながら、他の男にうつつを抜かすとは!」
「いや、冤罪です! 記憶にないんですよ! いつ付いたのかも分からないし!」
「記憶にないだと? まさか泥酔させて……くっ、破廉恥な!」
先輩が勝手に脳内ストーリーを作り上げて激昂している。
だが、俺自身もパニックだった。本当に覚えがない。ただ……。
「……そういえば」
「なんだ、白状する気になったか」
「違います。ただ……最近、毎晩『金縛り』にあうんです」
そう。ここ数日、夜中に必ず目が覚める。体は動かないのに、誰かが部屋にいる気配がするのだ。
耳元で何かが囁かれているような、冷たい吐息がかかるような、そんな嫌な感触。
「……これは、何かに取り憑かれてるとしか思えませんね」
「ふむ。霊障による『あざ』か。……おい詩音、どうして黙っている」
先輩が、部室の隅で気配を消していたもう一人の部員に話を振った。
ゴスロリ服に身を包んだ一年生の霊能少女・詩音(しおん)は、読んでいたBL漫画から顔を上げ、気まずそうに視線を逸らした。
「……だって、言うと会長、うるさいし」
「隠蔽か! 一体何が見えている!」
詩音は諦めたように溜息をつき、俺の背後を指差した。
「……悠斗くんにはね、若い男の幽霊が取り憑いてるの」
「男!?」
「それも、ベッタリくっついてる。今も、後ろから悠斗くんに抱きついて、頬擦りしてるわよ」
ヒュッ、と俺の喉が鳴った。
言われた瞬間、背筋に冷たいものが走る。今、俺の頬に触れているこの冷気は、まさか……。
「な、何ぃいいいい!? 許さん! 俺の悠斗に! !気安く触るなぁあああ!!!」
先輩が爆発した。
怒髪天(どはつてん)を衝く勢いで立ち上がると、部室の掃除用具入れからモップを取り出し、俺の背後の空めがけて振り回し始めた。
「失せろ! 悪霊退散! 物理攻撃だ!」
「先輩、危ない! 埃が舞うだけですって!」
「詩音、もっと詳しく教えろ! 悠斗は他に何をされた! どこを触られた!」
詩音は淡々と、しかし爆弾発言を投下した。
「……悠斗くん、言いづらいんだけど。毎晩金縛りにあって、朝起きたらどうなってる?」
「えっ……い、いや、それは……」
「正直に言いなさい。除霊に関わるわよ」
俺は顔から火が出る思いで、蚊の鳴くような声で白状した。
「……その、パジャマが脱げてて……全裸になってるんです……」
時が止まった。
次の瞬間、真白先輩の眼鏡がキラリと光り、般若のような形相に変わった。
「な、何いぃいいいい!? このハレンチ幽霊! 叩っ斬る! いますぐ成仏させてやる!」
「ちょ、先輩! 落ち着いて!」
「俺ですら! まだ! 全裸は見ていないのに! 先を越されるなど言語道断!」
「そっちかよ! 助けてえええ!」
モップを日本刀のように構えて暴れる先輩と、逃げ回る俺。
詩音はヤレヤレと首を振り、無慈悲に告げた。
「……悠斗くん。今夜、神社の『離れ』でお泊まりよ。会長が張り切って準備するわ」
「お泊まり……? それはそれで別の貞操の危機が……」
「大丈夫。私も泊まるから」
こうして、俺の安眠を取り戻すための(そして先輩の嫉妬を鎮めるための)、カオスな夜が幕を開けた。
(続く)
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因習村の生贄に選ばれたんだが〜相手が変人先輩(男)な件〜
