【Log.3-05】七不思議の幽霊が、俺たちの恋路を応援してくるんだが
☦️〈 怪奇同好会へようこそ 〉☦️
~変人先輩と巻き込まれ俺の、受難な日々~
BLラブコメ×オカルト / 5話完結
成仏したはずの七不思議たちが、まさかの「一般参加」でお化け屋敷に来場!? 暴走する彼らを止めるため、先輩が選んだ最強の除霊方法は「愛の公開告白」だった。
▶︎[1話から読む]| ▶︎ [マガジン一覧]
第5章:祭りのあとは、手をつないで
「いらっしゃいませー。……ひぇっ!」
「キャァァァ! 出たぁぁぁ!」
文化祭当日。
1年B組の『呪いの迷宮』は、開場と同時に長蛇の列を作っていた。
薄暗く装飾された教室内。俺、悠斗は「落ち武者の幽霊役」として、岩陰からお客さんを驚かせる仕事に追われていた。
悲鳴が心地よい(少し感覚が麻痺してきた)BGMとなり、順調に客を回していた――はずだった。
「……おい、悠斗」
「わっ、先輩。脅かさないでくださいよ。サボりですか?」
舞台袖の暗がりに、突如として真白先輩が現れた。
今日は他クラスの出し物には参加せず、俺のクラスの裏方(という名のサボり)を手伝っている。
「いや、緊急事態だ。……列を見ろ」
「列?」
先輩が指差す先。入場待ちの行列の最後尾。
そこに、明らかに「生気のない」集団が並んでいた。
おかっぱ頭の少女。スケッチブックを持った芸術家集団。そして、理科室から脱走してきた人体模型(白衣着用)。
「……嘘だろ。なんで並んでるんですか」
「『一般参加』と言っただろう。彼らは律儀に入場チケット(葉っぱ)を持って並んでいるぞ」
頭を抱える俺の横に、詩音(しおん)がスッと現れた。
「悠斗くん、マズいわ。彼らの目的は『お化け屋敷を楽しむこと』じゃない」
「じゃあ何だよ」
「『推しカプの供給確認』よ。昨日の旧校舎での出来事が霊界のSNSで拡散されて、君たちを一目見ようとギャラリーが増えてるの」
見ると、花子さんが列に並びながら、ペンライト(赤と白)を振っていた。
人体模型は「パンフレットのあらすじが甘い」とブツブツ文句を言っている。
完全に「イベントに来た厄介オタク」だ。
◆◆◆
そして、ついに彼らの順番が回ってきた。
俺と先輩が待機する「最後の驚かしゾーン」に、七不思議オールスターズが雪崩れ込んでくる。
『キタ……! 生(ナマ)の悠斗クンだわ!』
『尊い……昨日の今日で、少しやつれているのがまたエモい……』
彼らは驚くどころか、俺たちを取り囲んで撮影会(心霊写真)を始めた。 ポルターガイスト現象で教室内の机がガタガタと震え、照明が赤く点滅する。
やばい。このままじゃ一般のお客さんまで巻き込まれる!
『ねえ! ただ突っ立ってるだけじゃつまんないわよ!』
花子さんが不満げに叫んだ。
『昨日の続きを見せてよ! 私たちが成仏できるくらいの、特大の「ファンサ」をちょうだい!』
『そうだ! ここはあえて「ハッピーエンド」を見せることで、物語は完結するのだ!』
人体模型が叫ぶと、芸術家幽霊たちが『キス! キス!』とコールを始めた。
教室内は異様な熱気――いや、霊気に包まれた。
物理的に気温が下がり、窓ガラスにヒビが入る。
「くっ……! 暴走してる……!」
「悠斗、下がってろ。彼らの欲求不満(リビドー)が臨界点を超えそうだ」
先輩が俺を庇うように前に出る。
だが、どうする? 除霊するか?
いや、そんなことをすれば、暴れたエネルギーで教室が吹き飛ぶかもしれない。
「……仕方ない」
先輩は覚悟を決めたように眼鏡を外した。
そして、ポケットから何かを取り出す……塩か? 数珠か?
違った。
先輩が取り出したのは、俺の手だった。
「え?」
「悠斗。じっとしてろ。……これは『除霊』だ」
先輩は俺の手を引き寄せ、そのまま強く抱きしめた。
教室のど真ん中。幽霊たちの目の前で。
耳元で、先輩の低く甘い声が響く。
「……愛してるぞ、悠斗。……誰にも渡さない」
ドクン、と心臓が跳ねた。
甘すぎるセリフ。普段なら絶対に言わない、歯の浮くような言葉。
でも、抱きしめる腕の力強さと、伝わってくる体温は、嘘とは思えないほど熱くて。
「せ、先輩……これ、演技……ですよね?」
「…………さあな」
先輩が俺の耳に軽く唇を寄せた、その瞬間。
『ギャアアアアアアアア!!(歓喜)』
幽霊たちが一斉に絶叫した。
それは断末魔ではない。魂が浄化される、限界突破の叫びだ。
『無理……しんどい……!』
『公式が最大手……ッ!』
『もう思い残すことはないわ……ありがとう、世界……!』
カッッッ!!!
教室中がピンク色の光に包まれた。
強烈な「萌えエネルギー」が昇華し、浄化の光となって彼らを包み込む。 花子さんも、人体模型も、芸術家たちも、幸せそうな顔で涙を流しながら、天上の光へと吸い込まれていった。
「解釈……一致ィィィ……!!」
最後にその言葉を残し、七不思議たちは完全に消滅(成仏)した。
あとに残ったのは、抱き合ったまま呆然とする俺たちと、静まり返った教室だけだった。
◆◆◆
夕方。
後夜祭のキャンプファイヤーが校庭で燃え上がっていた。
俺と先輩は、喧騒から離れた屋上の手すりに寄りかかり、その炎を眺めていた。
「……酷い目に遭いましたね」
「そうか? お化け屋敷は大盛況。『謎の超常現象演出がリアルすぎる』と評判で、最優秀賞は確実だぞ」
先輩は缶コーヒーを俺に渡し、ニカっと笑った。
こいつ、メンタル強すぎるだろ。
「でも、まあ……」
俺は温かいコーヒーを握りしめ、ボソッと言った。
「先輩のおかげで助かりました。……あの、最後のやつも」
「ん?」
「あの……『除霊』。……演技にしては、迫真すぎましたけど」
俺がジト目で睨むと、先輩は夜空を見上げてとぼけた。
「何のことだ? 俺はただ、彼らの望む『真実』を見せただけだぞ」
「はあ? 真実って……」
「言っただろう。俺はお前を独り占めしたいし、誰にも渡す気はない。……幽霊相手だろうと、人間相手だろうとな」
先輩が俺の方を向き、悪戯っぽく、でも優しく微笑んだ。
その顔が、炎の照り返しで赤く染まっているのか、それとも俺の顔が赤いのか、もう分からなかった。
「……変人」
「最高の褒め言葉だ」
俺たちは自然と手を伸ばし、指を絡ませた。
そこにはもう、呪いの手錠も、赤い糸もない。
誰に強制されたわけでもない、俺たち自身の意思で繋いだ手だ。
「さあ、帰るか。詩音が打ち上げで『今日の観察日記』を発表したいと張り切っていたぞ」
「最悪だ! 早く止めてください!」
俺たちは手を繋いだまま、夜の校舎を歩き出した。
七不思議たちは成仏したが、俺たちの奇妙で騒がしい日常は、まだまだ終わりそうにない。
――文化祭の夜。
二人の影は、いつまでもぴったりと寄り添っていた。
(完)
▶︎次のシリーズは場所を移して「夏合宿編」です!
金田一もコナンも裸足で逃げ出す、「殺人フラグ」のバーゲンセール会場へようこそ!Log4・5『ミステリーは「未遂」がお好き夏合宿編:前後編』(全5話完結)1月26日(月)スタート!
彼らの活動記録はまだまだ続きます。もし「見たい」「続きが気になる」と思ったら、スキ♡やフォローを押していただけると今後の励みになります。
▶︎次回【完結】Log.3『七不思議の幽霊が、俺たちの恋路を応援してくるんだが 』全話まとめ&ボーナス色々
▼怪奇同好会シリーズ第一弾はこちら
因習村の生贄に選ばれたんだが~相手が変人先輩(男)な件~
