【番外編】幼馴染の憂鬱、ときどきオッサン憑依01
怪奇同好会へようこそ ~変人先輩と巻き込まれ俺の、受難な日々~番外編
BLラブコメ×オカルト / 不定期更新 ※ 今回は真白の幼馴染視点の、ハッピーエンドだけどヒトコワ要素強め、少しビターなお話です。
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第1章 持たざる者の憂鬱
先日、親父が死んだ。
俺の机の周りだけ重力が歪んでいるみたいに、空気が重い。
久しぶりに登校した教室は、妙に浮き足立っていた。俺の幼馴染である真白(ましろ)――生徒たちからは『真白会長』と呼ばれている男――は、何やら忙しそうで姿が見えない。だというのに、女子たちの会話には頻繁にその名が登場する。
「今日も夫婦みたいだったね」
「尊い……」
さらには、新任の指導員だか何だか分からない「レイ」とかいう超絶イケメンも加わり、校内にはピンク色のハートが飛び交っているらしい。
親父が死んで天涯孤独になった俺は、高校を卒業するまで真白の家に居候させてもらうことになった。
真白の両親は、本当によくしてくれる。だが、その温かさが俺の惨めさを増幅させた。幼い頃からずっとそうだ。
まだ小さかった頃は良かった。神社の裏山を駆け回り、日が暮れるまで一緒に虫を追いかけた。だが、家に帰ると世界は分断される。
真白の食卓には、母親の手作りの湯気が立つご飯。俺の前には、冷たいスーパーの惣菜かカップ麺。
真白は家族の笑い声に囲まれていて、俺は一人ぼっち。
真白の誕生日に呼ばれた時、俺は生まれて初めて「ホールのケーキ」というものを見た。俺の誕生日は、暗い部屋で一人、値引きシールの貼られた菓子パンを齧っていたというのに。
何もかもが違いすぎた。真白やその両親が、俺に気を遣えば遣うほど、俺の心はささくれ立ち、いつしか疎遠になっていった。
「あれ? おばさん。今日、真白は?」
学校帰り、神社にある真白の家――今日から俺の仮住まいになる場所――で、俺は真白の母親に尋ねた。
「あら翔(かける)くん。あの子なら、今日はお父さんのお手伝いで隣町に行ってるわよ。……そういえばあの子ったら、またスマホを無くしたらしいの。もし見つけたら教えてあげてくれる?」
「はい。任せてください」
俺は精一杯の愛想笑いを浮かべ、ニコッと白い歯を見せた。
その足で、俺は真白の部屋へと向かった。
ポケットから、最新機種のスマートフォンを取り出す。無くしたのは当然だ。俺が盗んだんだからな。
俺はパスコードの入力画面を睨んだ。真白の誕生日、出席番号、実家の神社の電話番号……。
「相変わらず、チョロいな」
数回試しただけでロックは解除された。俺は鼻で笑い、画面をスワイプする。
写真フォルダには、楽しそうな日常が詰まっていた。その中で、やたらと写っている男がいる。確か、クラブの後輩の「悠斗(ゆうと)」とかいう奴だ。
俺はLINEを開いた。一番上のトーク履歴をタップする。
『悠斗』
『なんですか』
『今日もかわいいな』
『特に用事はないんですね? ブロックしますよ』
俺はプッと吹き出した。なんだこれ、ジジイのセクハラメールじゃないか。
『冗談だ明日俺はいないがレイには用心しろよ』
『はいはい大丈夫ですよ』
『お前油断してたらどうなるかわからないぞ』
『相手はレイだぞ』
『あいつは隙あらばお前を連れて行こうとするからな』
『大丈夫ですって先輩こそ親父さんの手伝い失敗しないでくださいね』
悠斗からの返信は素っ気ないが、即レスだ。あいつも満更じゃないらしい。
画面の中の真白は、俺の知らない顔をしていた。過保護で、必死で、幸せそうだ。
『何か怪しい様子だったらうちの蔵(くら)に逃げ込んどけ』
『あそこは結界が張ってあるからレイは入ってこれないからな』
『分かりましたよ』
『かわいいっていうのは冗談じゃないから』
『怒りますよ?』
俺はニヤニヤしながらスクロールしていた指を止めた。
『あと翔にちょっかい出されても応じるなよ?』
(……は?)
俺は真顔でその文字列を凝視した。
そうですか。
お見通しってことですか。
俺が、惨めな嫉妬心で動いているってことを。
あいつはいつもそうだ。高みから俺を見下ろして、全て分かったような顔をする。
俺は衝動的に指を走らせた。
『悠斗用事は中止になったすぐ蔵に来てくれ』
送信ボタンを押す。すぐに既読がつき返信が来た。
『どうしたんですか? 先輩蔵で何かありました?』
『とにかく来い』
『わかりました』
俺はスマホを閉じた。
期待には応えないとな。
お前が懸念した通りの「悪い幼馴染」になってやるよ。
(続く)
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因習村の生贄に選ばれたんだが〜相手が変人先輩(男)な件〜
