番外編:幼馴染の憂鬱、ときどきオッサン憑依02
怪奇同好会へようこそ ~変人先輩と巻き込まれ俺の、受難な日々~番外編
BLラブコメ×オカルト / 不定期更新 ※ 今回は真白の幼馴染視点の、ハッピーエンドだけどヒトコワ要素強め、少しビターなお話です。
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第2章 蔵の中のフォトセッション
それほど時間もかからず、悠斗は姿を現した。
神社の敷地内にある古い土蔵。その重厚な扉の前で、そっと中を覗き込むようにして真白の名を呼んでいる。
隙だらけだ。
俺は背後から忍び寄り、ドンッ! と背中を突き飛ばした。
「うわっ!」
悠斗がつんのめって蔵の中に雪崩れ込む。俺はすかさず中に入り、後ろ手に扉を閉め、閂(かんぬき)を下ろした。
「え? な、何? なんですか……?」
薄暗い蔵の中で、悠斗がおっかなびっくり振り返る。
俺は構わず悠斗の腕を取り、用意していたロープで手首を縛り上げた。
「ちょっ! 何してるんですか!?」
悠斗は驚いてのけぞったが、抵抗は弱かった。俺はふんと笑って、彼を壁に押し付ける。 そしてスマホを構え、一枚。
カシャ。
「え?」
フラッシュに目が眩んだのか、悠斗はポカンとしている。
「お、いいねそのマヌケな顔」
もう一枚。 カシャ。
「あ、あんた……翔さん? ですか」
悠斗は我に返ったように眉間に皺を寄せ、俺を見てきた。恐怖というよりは、呆れを含んだような目だ。
「そうだけど?」
「何やってるんですか。これ何の冗談? もしかして、また怪奇同好会の新しい活動ですか?」
「はあ? 違うね」
俺は構わずシャッターを切った。
「真白がお前に夢中だからさ、こういうの見たらどんな顔するのかなって」 「なっ」
ようやく悠斗がムッとした表情を見せた。
「そうそう。そういう顔だよ」
カシャ。
「あんた、何やってるのかわかってるんですか?」
悠斗が噛み付くように言う。
「先輩を困らせて何がしたいんですか! こんなことしても、先輩は怒るだけですよ!」
「え? 別に? 俺には関係ないんで。それより……」
俺は悠斗の襟元に指をかけ、グイッと強引に寛(くつろ)げた。白い鎖骨が露わになる。
「お、こっちの方がそそるな。もっといい顔しろよ」
「は? ちょ……!」
悠斗が目を伏せる。俺はその顔を覗き込み、意地悪く笑った。
「あれ? あれれ? マジか。真白が一方的に思ってるだけかと思ってたけど、意外と満更でもない感じ?」
「……先輩のセクハラ攻撃に比べたら、これくらいどうってことないだけです」
悠斗は冷めた目で俺を睨み返してきた。
「先輩はこんなことじゃ動じませんし、別に俺ら付き合ってる訳じゃないんで」
なんだこいつ。
普通、監禁されてこんな目に遭えば、もっと怯えたり泣いたりするもんじゃないのか? こいつの周りには、俺以上の変質者がいるとでも言うのか?
調子が狂う。
だが、ここで引くわけがない。
「ふーん。これじゃ足りないってわけ?」
俺は悠斗の顔の横に並び、インカメラでツーショットを撮った。
まるで恋人同士のような距離感で。
「悠斗に誘惑されちゃったって言って送ってやろうかな」
「……ッ、性格悪」
悠斗が悔しそうに口元を歪めた。
そうだ。
もっとそういう顔をしろ。
俺を軽蔑しろ。
お前たちがいつも哀れんで、高みから見下ろしていた相手に、屈辱を受ける悔しさで俺を睨みつけろ。
「かわいそう」「優しくしてあげなきゃ」
そう言って最後には、「やっぱり貧乏だから」「心まで貧しくなるのね」――。
お前らも一皮剥けば俺と同じだ。
俺は、お前らの期待に応えようとしてるだけだ。
「最高。めっちゃいい顔」
「……先輩は、あんたのこと親友だったって言ってましたよ」
悠斗が、震える声で言った。
「根はいい奴なんだって! あんたのために何かできることはないかって悩んで……落ち込んでまでいたのに!」
一雫の涙が悠斗の頬を伝って落ちた。俺の心臓を一針刺すように。
「……」
俺は白けたようにそれを見ていた。
「うるせえ」
俺は悠斗の顎を掴み、再びガンッと壁に押し付ける。
「だからなんだよ。真白がなんだってんだ。そうだろうな。ルックスも勉強もお家柄も完璧。その上こんな可愛い後輩に慕われて。さぞ気持ちいいだろうよ、人に施すのは!」
「先輩はそんなんじゃない!」
「お前に何がわかる!?」
俺は叫んだ。
純粋そうな目を覗き込む。
その奥の無垢な色が俺の傷口をえぐる。
給食費が無くなった時、真っ先に疑われた。
やってもいないイジメで謝罪させられた。
親父はへりくだって謝罪するばかりで、俺の話さえ聞いてくれなかった。
あの目だ。いかにも自分が正しいと言わんばかりの、真っ直ぐな目。
そうだよ。その通り。俺が期待に応えなきゃ。
じゃなきゃお前らが嘘つきになっちまうだろ。
「あんま俺を追い込むな。俺には守るものなど一つもないんだよ。何がどうなろうと知ったこっちゃない」
俺は卑屈な笑みを浮かべた。
「お前が俺に傷つけられたら、あいつどんな顔をするかな」
俺が上着を脱ぐ仕草をすると、悠人の顔がようやく恐怖に歪んだ。
(続く)
▼怪奇同好会シリーズ第一弾はこちら
因習村の生贄に選ばれたんだが〜相手が変人先輩(男)な件〜
